花の四日市スワマエ商店街

表参道スワマエ商店街会長のひとり愚痴

白道寮物語 エピローグ

2005年10月12日 | わたくしごと、つまり個人的なこと
平成2年10月。東京で展示会があったので出掛けた。その日はホテルで宿泊の予定になっていた。おいらは早めに用を済ませ、白道寮へ向かった。
宿から中央線で30分。夕闇迫る駅前商店街は少し近代的になったように見えたが、中華料理屋や本屋はそのままだった。帰路に着く人々があわただしく行き来している。
地を曲がると懐かしい居酒屋があった。が、すでに戸はしっかり閉められていて、かなり前に閉店したようだ。店の周りは草だらけだ。
の塀を右に見て、だらだらとした坂を下りると勝手口は立派な門に建て替えられて、戸がしっかり閉められていた。かすかにキンモクセイの匂いがする。
はどうなっているのだろうか。先を見ると、すでに白道寮はなく、荒れ果てた2階建てのアパートが4棟並んでいた。アパートは閉鎖されていて立ち入り禁止のロープが張ってある。20年以上の歳月の流れを感じる。この荒れ方からすると、オイラが寮を離れてまもなく取り壊されたに違いなかった。
辺を廻ってみたが、どこも門はしっかり閉じられていた。少し離れて境内を覗いてみる。木立の様子と山の上に建つ本堂は少しも変わりがなかった。あたりも暗くなってきたので、オイラは新宿へ戻ることにした。
イラが四日市へ戻った翌年、新宿駅で学生がゲバ棒を持って暴れた。新宿駅騒乱事件だったか。フーテンがはやったりして高度成長期のひずみみたいなものが、若者の間に出ていた時代だ。
時、新宿にアングラ劇場があった。一度見てみたかったので小池さんを誘ったが、結局、予備校の帰りに一人で行った。ビルの狭い階段を下りると、小さな部屋に舞台がある。10人ほどの人が入っていた。レースのカーテンの向こう側で、男女二人が理屈っぽいセリフをしゃべっている。まったく訳が分からなかった。
後にパンティひとつの女性が舞台に立ち、体にペンキで何か描けという。オイラは迷わず手を挙げた。女体を間近で見るのは初めてだ。震える手でへのへのもへじを書く。それが終わると、横にいたおじさんがペンキで線を加えて、蛇が体に巻き付いている絵に仕上げた。
イトが消され真っ暗になると蛇の絵が浮き上がった。蛍光塗料が入っていたのだ。音楽に合わせて裸の女性は体をくねくねと踊らせた。今思うと笑ってしまう。ばかばかしいことこの上ない。あれはいったい何だったのか。
いうところで、この物語はおしまいである。あれから十数年の月日が流れた。チャンスがあれば、また寺には訪れてみたい。