語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【古賀茂明】原発再稼働も上からの目線で「粛々と」 ~菅官房長官~

2015年04月23日 | 震災・原発事故
 (1)福井地裁は、4月14日、関西電力高浜原発3号機および4号機の運転を差し止める仮処分を決定した。これによって、仮に関電が同地裁に異議申し立てを行っても差し止めの効力が維持されるから、当分の間、高浜原発の再稼働ができなくなった。
 結論が出るまでにかなりの時間を要する、と目されている。関電が計画する11月再稼働は難しくなった。
 昨年の大飯原発の再稼働差し止め訴訟では、住民側が勝訴したものの仮処分ではなかったので、関電の控訴によって判決の効力がなくなった(再稼働は可能)。これに比べると、4月14日の仮処分決定ははるかに大きな意義を持つ。

 (2)(1)仮処分決定の内容をひと言で言えば、
    原子力規制委員会が定めた新たな規制基準が「緩やか」すぎて、
    この基準に「適合しても」「原発の安全性は確保され」ず、
    「新規制基準は合理性を欠く」ので
    その基準に「適合するか否かについて判断するまでもなく」差し止めを認めるべきだ。
 というものだ。この考え方に立てば、
    現行の規制基準で審査している限り、それに適合しても何の意味もない。
    よって、この夏の再稼働を目指している九州電力の川内原発はもちろん、すべての原発は再稼働できない。

 (3)必要なのは、まず、規制基準を根本から作り直すことだ。むろん、今よりもはるかに厳しい基準にしなければならない。
 そうなれば、それに適合するためには大きな補強工事などが必要になり、かなりの時間と多額の資金が必要になる。その結果、再稼働できない原発が続出するだろう。

 (4)(1)の決定に対して、関電は直ちに「承服できない」というコメントを出した。テレ朝「報ステ」で、古賀茂明の発言に異を唱えた古館伊知郎・キャスターが思わず口にした言葉と同じ言葉だ。
 不都合な真実を突きつけられると、使いたくなる言葉であるらしい。
 規制基準が不十分なものであることは、専門家の間では常識となっていた。
 マスコミがそれを報じないので、一時は
    「世界最高の安全基準」
という言葉が一人歩きしたが、その後、政府自身も
    「世界最高『水準』の」
と言い換えた。さらに、規制委も再稼働が近づくにつれ、
    「『安全』基準ではなく『規制』基準に過ぎない」
ということを強調し始めた。つまり、
    日本では原発の安全について誰も責任を負わない体制
なのだ。

 (5)驚くべし、菅義偉・官房長官はこの期に及んでも、なお、こう言う。福井地裁が「合理性を欠く」とした新基準につい て、
    「世界で『最も厳しい』と言われる新基準」
であると。そして、再稼働を「粛々と進めていきたい」と。「粛々と」という言葉は、沖縄の辺野古基地建設の際に使って、
    「上からの目線」
と翁長雄志・知事に批判されて封印した「話題の」言葉だ。この言葉をあえて使ったのは、
    どんな反対があっても完全無視で、原発再稼働を強行に推進していく。
 という宣言だ。
 統一選前半戦の勝利で、さらなる暴走を始める安倍政権。司法さえ踏みつぶして猪突しつつある。

□古賀茂明「原発再稼働も「粛々と」? ~官々愕々第152回~」(「週刊現代」2015年5月2日号)
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 【参考】
【古賀茂明】テレビコメンテーターの種類 ~テレ朝問題(7)~
【報道】古賀氏ら降板の裏に新事実 ~テレ朝問題(6)~
【古賀茂明】役立たずの「情報監視審査会」 ~国民は知らぬがホトケ~
【報道】ジャーナリズムの役目と現状 ~テレ朝問題(5)~
【古賀茂明】氏を視聴者の7割が支持 ~テレ朝問題(4)~
【古賀茂明】氏、何があったかを全部話す ~テレ朝「報ステ」問題(3)~
【古賀茂明】氏に係る官邸の圧力 ~テレ朝「報道ステーション」(2)~
【古賀茂明】氏に対するバッシング ~テレ朝「報道ステーション」問題~
【古賀茂明】これが「美しい国」なのか ~安倍政権がめざすカジノ大国~
【古賀茂明】原発廃炉と新増設とはセット ~「重要なベースロード電源」論~
【古賀茂明】改革逆行国会 ~安倍政権の官僚優遇~
【古賀茂明】安部総理の「大嘘」の大罪 ~汚染水~
【古賀茂明】「政治とカネ」を監視するシステム ~マイナンバーの使い方~
【古賀茂明】南アとアパルトヘイト ~曽野綾子と産経新聞~
【古賀茂明】報道自粛に抗する声明
【古賀茂明】「戦争実現国会」への動き
【古賀茂明】日本人を見捨てた安倍首相 ~二つのウソ~
【古賀茂明】盗人猛々しい安倍政権とテレビ局
【古賀茂明】安倍政権が露骨な沖縄バッシングを行っている
【古賀茂明】官僚の暴走 ~経産省と防衛省~
【古賀茂明】安倍政権が、官僚主導によって再び動き出す
【古賀茂明】自民党の圧力文書 ~表現の自由を侵害~
【古賀茂明】自民党が犯した最大の罪 ~自民党若手政治家による自己批判~
【古賀茂明】解散と安倍政権の暴走 ~傾向と対策~
【古賀茂明】解散と安倍政権の暴走
【古賀茂明】文書通信交通滞在費と維新の法案
【古賀茂明】宮沢経産相は「官僚の守護神」 ~原発再稼働~
【古賀茂明】再生エネルギー買い取り停止の裏で
【古賀茂明】女性活用に本気でない安部政権
【古賀茂明】【原発】中間貯蔵施設で官僚焼け太り
【古賀茂明】御嶽山で多数の死者が出た背景 ~政治家の都合、官僚と学者の利権~
【古賀茂明】従順な小渕大臣と暴走する官僚 ~原発再稼働~
【古賀茂明】イスラム国との戦争 ~集団的自衛権~
【古賀茂明】「地方創生」は地方衰退への近道 ~虚構のアベノミクス~
【古賀茂明】【原発】原子力ムラの最終兵器
【古賀茂明】【原発】凍らない凍土壁に税金を投入し続けたわけ
【古賀茂明】【原発】勝俣恒久・元東電会長らの起訴 ~検察審査会~
【古賀茂明】安倍政権の武器輸出 ~時代遅れの「正義の味方」~
【古賀茂明】またも折れそうな第三の矢 ~医薬品ネット販売解禁の大嘘~
【古賀茂明】「1年後の夏」に向けた布石 ~集団的自衛権~
【古賀茂明】法人減税で浮き彫りにされる本当の支配者 ~官僚と経団連~
【古賀茂明】都議会「暴言問題」の真実 ~記者クラブによる隠蔽~
古賀茂明】集団的自衛権とワールドカップ
【古賀茂明】野党再編のカギは「戦争」
【古賀茂明】電力会社の歪んだ「競争」 ~税金をもらって商売~
【原発】【古賀茂明】規制委員会人事とメディアの責任
【古賀茂明】医師と官僚の癒着の構造
【古賀茂明】電力会社「値上げ救済」の愚 ~経営難は自業自得~
【古賀茂明】竹富町「教科書問題」の本質 ~原発推進教科書~
【古賀茂明】安部総理の「11本の矢」 ~戦争国家への道~
【古賀茂明】理研は利権 ~文科官僚~
【古賀茂明】「武器・原発・外国人」が成長戦略 ~アベノミクスの今~
【古賀茂明】マイナンバーを政治資金の監視に ~渡辺・猪瀬問題~
【古賀茂明】東電を絶対に潰さずに銀行を守る ~新再建計画~
【古賀茂明】「避難計画」なき原発再稼働
【古賀茂明】「建設バブル」の本当の問題 ~公共事業中毒の悪循環経済~  
【古賀茂明】安倍政権の戦争準備 ~恐怖の3点セット~
【原発】【古賀茂明】利権構造が完全復活 ~東日本大震災3年~
【古賀茂明】アベノミクスの限界 ~笑いの止まらない経産省~
【古賀茂明】労働者派遣法改正前にすべきこと
【古賀茂明】時代遅れな、あまりにも時代遅れな ~安部政権のエネルギー戦略~
【古賀茂明】森元首相の二枚舌 ~オリンピックの政治的利用~
【古賀茂明】若者を虜にする「安部の詐術」 ~脱出の道は一つ~

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【原発】「5年目のフクシマを忘れないで」集会

2015年04月06日 | 震災・原発事故
 (1)3月28日、都内で、「フクシマを忘れない!さようなら原発大講演会」が開催された。知識人らが設立した「「さようなら原発」一千万人署名 市民の会」が主催した。参加者1,300人。福島の現状報告があり、原発再稼働反対を訴えた。

 (2)佐藤和良・いわき市議の報告。
 東京電力福島第一原発では、今も放射性物質が放出され続けている。高濃度汚染水は溜まる一方だ。
 現場では、毎日7,000人の作業員が働いているが、熟練者の減少に加え、劣悪な労働環境により事故が相次いでいる。
 「廃炉作業は40年かかる。今のままで事故収束と廃炉作業ができるのか」
 佐藤市議は、2012年に政府関係者や東電幹部を告訴・告発した「福島原発告訴団」【注】の副団長も務める。同告訴団は、2015年1月、新たな告訴・告発を行った。その参加協力の呼びかけも、この日、この会場で行われた。

 (3)今中哲夫・京都大学原子炉実験所助教の報告。
 4年経っても住民が帰れない避難対象の面積は1,000平方キロメートルにおよび、避難している人は12万人。原発事故の影響は実に大きい。

 (4)最後に参加者全員が、「原発NO」の紙を掲げ、再稼働反対、原発ゼロの決意を新たにした。
 次回は、5月3日、横浜で大規模集会が予定されている。

 【注】
【原発】福島原発告訴団の第2回総会/ふくしま集団疎開裁判の二審判決
【原発】福島原発告訴団、地検に東電本店の強制捜査を申し入れ
【原発】福島原発事故に係る集団訴訟の現在 ~2013年2月~
【原発】集団告訴団14,586人の「次の標的」 ~NHK、東大の学者~
【原発】集団告訴第二陣、ただ今7,600人 ~受付締切は10月末~
【原発】紫陽花革命が大手メディアを揺さぶる ~正しい報道ヘリの会~
【原発】「さようなら原発」17万人集会の記録
【原発】福島県民、東京電力を集団告訴 ~勝俣東電会長の逃げ切りを阻止~ 

□村上朝子(ライター)「5年目のフクシマを忘れないで!」(「週刊金曜日」2015年4月3日号)
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【古賀茂明】原発廃炉と新増設とはセット ~「重要なベースロード電源」論~

2015年03月25日 | 震災・原発事故
 (1)3月17日および18日、原発の幾つかの廃炉が正式に決まった。
  (a)関西電力美浜1、2号機(福井県)
  (b)日本原子力発電敦賀1号機(福井県)
  (c)中国電力島根1号機(島根県)
  (d)九州電力玄海1号機(佐賀県)

 (2)(1)の5原発には問題が幾つもある。
  (a)いずれも運転開始から40年前後の「老朽」原発である。
  (b)原発の運転は原則40年と定められている。運転延長のための特別基準をクリアするには、いずれの原発も数百億円規模の追加投資が必要で、とても経済的にペイしない、とされてきた。
  (c)要するに、(1)-(a)~(d)の5原発廃炉の理由は、純粋に経済的な理由からだ。「原発政策が動き出した」からでは、まったく無い。
  (d)そもそも、数百億円もの追加投資が必要になるのは、極めて危険な原発だからだ。そんなものは、本来、規制うんぬんではなく、電力会社が自己責任で廃炉にするのが当然だ。

 (3)経産省はしかし、「基準が厳しくなったのだから政府の責任だ」などと屁理屈をこねて、廃炉費用などを毎年電力料金に上乗せして消費者につけ回しする仕組みを作った。
 廃炉の決定が今日まで延びたのは、電力会社がこの会計制度変更を待っていたからだ。

 (4)同じ3月17日、関西電力は、やはり老朽化した高浜1、2号機と、美浜3号機の再稼働申請を行った。
 3基の原発の再稼働だけでは世論に叩かれる。で、美浜1、2号機の廃炉を免罪符にしたのだ。
 また、高浜1、2号機、美浜3号機は設計が古く、数千mに及び電源ケーブルの被覆材が難燃性でない、という問題がある。これらを交換すると膨大なコストがかかる。よって、難燃性の塗料を塗るだけで済ませるため、3つの原発廃炉で許してもらおう、という魂胆もある。

 (5)現在、日本の原発は1基も稼働していないので、原発依存度はすでにゼロだ。
 ところが、不思議なことに、「原発依存度をどれくらい下げるのか」という議論が行われている。
 そこには、動いていない原発48基の多くを動かすべきだ、という前提がある。

 (6)さらに、昨年4月の原発を「重要なベースロード電源」と位置づけたエネルギー基本計画。
 実は、この時点で原発の新増設は決まっていた。
 なぜなら、原発が「重要なベースロード電源」なら、原発依存度ゼロはもちろん、5%とか10%などではなく、相当な割合が必要になるからだ。

 (7)すべての原発はいずれ廃炉になるから、「重要なベースロード電源」維持のためには、いつかは原発の新増設が必要になる。
 事実、原子力小委員会(経産省)の昨年末の報告書でも、新増設を認めるべきだ、という意見が幾つも書かれている。
 新増設について、宮沢洋一・経産相は、言う。
   「現時点では想定していない」=「将来は認める」

 (8)(3)の会計基準変更は、直近の廃炉対策だけでなく、新増設する原発のためでもある。
 廃炉コストがいくらになっても、すべて消費者に転化できれば、電力会社は安心して原発を新設できるのだ。
 廃炉関係の政策も、結局はすべて原発推進のためなのだ。

□古賀茂明「原発廃炉と新増設 ~官々愕々第148回~」(「週刊現代」2015年4月4日号)
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 【参考】
【古賀茂明】改革逆行国会 ~安倍政権の官僚優遇~
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【原発】赤字拡大で経営危機 ~原発大手アレバ社~

2015年03月24日 | 震災・原発事故
 (1)仏アレバ社は、世界最大の原子力産業複合企業だ。そのアレバ社が、深刻な経営危機に直面している。
 2014年度の純損失が49億ユーロ(6,600億円)に達し、同じく赤字だった2013年度の10倍にもなるのだ。好転のきざしは見えない。

 (2)危機の大きな要因は、経営戦略の破綻だ。アレバ社が社運を賭けて開発した新型原子炉「欧州加圧水型炉(EPR)」の、実用化の目処が立たないのだ。
 EPRの1基が、フィンランドで、2005年に建設に着工したのだが、
  ・2009年の営業運転開始予定が2018年にまで延びた。
  ・しかも、完成しても当初の費用見積額30億ユーロが85億ユーロに膨張するのが確実視されている。
  ・その超過分の支払をめぐって、同社はフィンランド側と国際商業会議所で仲裁手続き中だ。もし、支払責任を負わされたら、会社の存続が危うくなる。
  ・さらに、買収したウラン鉱山(アフリカ)も、ウラン価格低迷で評価損を計上する結果となった。

 (3)(2)は社内的要因だが、社外的要因もアレバ社の経営を厳しくした。
  ・欧州で原発の需要が低迷している。<例>ドイツの「脱原発」。
  ・「3・11」福島第一原発事故を契機として、世界的に原子力政策見直しの気運がある。
  ・原油価格低下に伴って、原発発電の価格競争力が後退した。

 (4)アレバ社は、3月4日に経営再建策を発表した。
  (a)国営の「フランス電力公社(EDF)」との連携強化と共同の原子力プラント輸出会社の設立。
  (b)中国市場の開拓とアフリカのウラン鉱山部門の中国売却
 ・・・・などが列挙されていたが、打開策にはほど遠い。

 (5)アレバ社の株式を99%所有する仏政府も、この問題では精彩を欠く。
 2012年に当選したオランド大統領(社会党)は、選挙中、環境派の支持を得るため、電力の原発依存度75%を「2025年までに50%に抑える」と公約した。だが、社会党政権はちっとも公約を実行せず、当初連立を組んでいた環境政党「ヨーロッパ・エコロジー=緑の党」は、2014年4月に政権を離脱した。
 国際環境団体グリーンピースなどは、「大統領の公約破り」と批判している。

 (5)フランス国内の原子力産業従事者は、22万人(アレバ社員45,000人を含む)以上だ。彼らの雇用を考えると、オランド(社会党)政権は容易に「脱原発」に踏み切ることができない、という事情がある。
 ただ、アレバ社の危機は、オランド政権の原子力政策のみならず、戦後フランスの「核優先」策(独自核戦力保持と国内原発58基との数が象徴する)を揺るがすのは確実だ。

□成澤宗男(編集部)「原子力大手アレバ 赤字拡大で経営危機」(「週刊金曜日」2015年3月20日号)
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    緋寒桜
   

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【原発】「汚染」のいま ~東京・国分寺市の市民放射能測定所~

2015年03月16日 | 震災・原発事故
 (1)食品については、放射能の影響はかなり減ってきた。
 首都圏近辺の作物は、ほぼ1ベクレル(Bq)/kg未満不検出で、出るのはキノコ類などが数十Bq/kgとか。

 (2)食品と違って、土壌は必ず放射能が検出される。
 「こどもみらい測定所」(東京・国分寺市)は2011年12月に立ち上げた。それ以来、900検体の土を測ってきたが、必ず放射能が検出される。
 実は、食品が検出限界以下になってきた大きな理由は、日本の粘土質の土がしっかりセシウムを吸着しているからだ。逆に、土を測ると必ずセシウムが出る。セシウム134は半減期が2年なので今は4分の1程度だが、セシウム137の値はほとんど下がっていない。
 福島市内の普通の庭土を深さ5cmで掘ると、2,000Bq/kgなど出るし、国分寺の土でも50~200Bq/kgは出る。
 3・11前は、各国の核実験の影響があっても、10Bq/kgを超えることはほぼなかった。
 土の測定依頼は、生産者や家庭菜園の利用者が1割程度。残りの9割は、ほとんどお母さんで、自分の子どもが遊んでる保育園や公園の土を調べたい、という人たちだ。
 <例>東葛飾地区(柏市、流山市など千葉県北西部)【注1】では200~2,000Bq/kg程度出る。

 (3)土壌の数値が今も高いことは、あまり知られていない。
 そもそも、行政は原則的には土を測定しない。

 (4)こうした実態を知ってもらうために、市民放射能測定データサイト「みんなのデータサイト」【注2】で、「東日本土壌ベクレル測定プロジェクト」が動き始めている。
  (a)各地の市民放射能測定所26団体(2015年2月現在)が、このプロジェクトに参加して、北は青森県から南は静岡県までの17都県について、1都県で最低100か所、東日本全体で1,700か所を測定する計画だ。すべての土壌の表面から5cmの深さで測る。深さを統一すれば地域の比較ができる。文部科学省やチェルノブイリの基準とも同じなので、一定の比較もできる。
  (b)2段階で公表する。
    ①郵便番号レベルの表形式・・・・3月中をめどに、宮城県など、すでに先行して動いてきたものから200件くらいは公表していく。その後、1年くらいをかけて1,700件を集める。
    ②地図画像ベース・・・・個人の庭を特定したりしない拡大レベルの地図形式を使う。さしあたり、3月29日に東京・水道橋のYMCAアジア青少年センターで、報告イベントを行う。
  (c)データは、基本的には各地域の判断で活用する。2012年から13年にかけて先行実施した岩手県の土壌汚染マップがあるが、値が高い地域では行政に健康診断や除染基準の見直しを求めた。こうしたことを東日本全域でやれるといい。
  (d)ただし、「東日本土壌ベクレル測定プロジェクト」が行うのは、あくまでもそのプラットフォームをつくること。各地域で測定して、データを集約し、広範なベクレル測定値マップをつくるというものだ。それをもとに、行政などへのアクションにつなげたり、転居を考えている人が転居先候補の土壌汚染度を知る参考にしたりしてもらう。
  (e)土壌汚染と生産物の汚染とが必ずしも一致するわけではないことも、ちゃんと説明していく。
 
 (5)3・11では、たまたま福島第一原発が太平洋に面していたから、ほとんどの放射能が偏西風で太平洋に運ばれた。それでも、3月15日に内陸に向いた風や、3月21日の雨だけで、飯舘村など住めなくなった場所ができた。関東各地も、それぞれ汚染された。
 もし、日本海に面した敦賀や柏崎刈羽、内陸の川内や玄海などの原発で事故が起きたら、こんな汚染では済まない。
 現状の値で済んでいるのは、ひとえに風向きと地形の影響にすぎない。だのに、それがきちんと認識されずに、「のど元すぎれば」で、再稼働が進むことに危惧を覚える。
 そういう意味で、できるだけ正確に測ったデータを積み上げて、たった1日、2日の風や雨だけでも、どれだけ汚染が残るかを知ってもらいたい。
 プロジェクトを通して、新しいつながりと活力が生まれることを期待する。

 【注1】
【原発】【食】関東の食材からセシウム ~安部首相的「安全」の実態~
【原発】汚染度が深まる首都圏の水
【震災】原発>ついに始まった千葉県柏市の人口流出
【震災】原発>東電のものは東電に返せ ~関東の汚染灰~
【震災】原発>無防備都市--東京を覆う放射能

 【注2】市民放射能測定データサイト「みんなのデータサイト

□語り手:石丸偉丈(「こどもみらい測定所」代表/聞き手:山村清二(編集部)「市民放射能測定所が見た“汚染”のいま」(「週刊金曜日」2015年3月13日号)
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 【参考】
【原発】放射能汚染と除染工事 ~環境破壊~
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【原発】放射能汚染と除染工事 ~環境破壊~

2015年03月15日 | 震災・原発事故
 (1)この4年間、福島県浜通り地方では、路肩に「除染工事中」【注1】の工事標識が立ち、庭先と言わず休耕地と言わず、大きく膨らんだフレキシブルコンテナ(フレコン)バッグがズラリと並び重なる。
 過酷事故から1年8か月目(2012年11月)、双葉郡川内村の小さな寺院(阿武隈山地の中ほど、事故原発から22km)では、ひなびた山門の脇のスペースに、差し渡し1mほどの無粋な青いバッグがざっと400袋積み上げられていた(現在は撤去済み)。
 川内村は、2011年3月16日に全村強制避難が発令された。2012年1月31日に「帰村宣言」をしたが、村民の多くは避難先から戻っていない。

 (2)過酷事故から2年4月目(2013年初夏)、双葉郡楢葉街の木戸川沿い(事故原発から17km)では、周囲とは一段と高い堤防道路から、堤内(陸側)に無数の黒バッグが集積されているのを目視できた。大津波は届かなかったエリアで、放射能が降らなければ作付けが続いていたはずだ。だが、その一角が、まわりの田んぼから剥ぎ取った土の仮置き場になっていた。
 楢葉町は、震災当初から1年5か月間は警戒区域、その後は避難指示解除準備区域に組み込まれ、全町民が避難を強いられている。かたや除染作業は、この時最盛期に差しかかって、交通量はむしろ多かった。現場で作業する人はもとより、バン、ワゴン、ダンプの座席のほぼ全員がヘルメット、マスク、作業着、タイベックスーツ(不織布のつなぎ)姿で、これが除染ゾーンの日常風景と化しつつあった。

 (3)過酷事故から3年半目(2014年9月下旬)、相馬郡飯舘村の各地で(2)と同じシーンが展開されていた。阿武隈高地をはさんだ向こう側、南東40km先の事故原発が大量の放射能を空にまき散らしたあの時期、ちょうど風下にあって、特に高濃度の汚染を被った。飯舘村は、全村避難中の自治体の一つだ。
 除染工事直後の場所は更地そのものだ。非除染エリアでは、田んぼも畑も4シーズン連続の耕作中止で、すっかり草原と化している。
 雑木林は、東北地方の山里のありふれた生態系、とても良好な自然環境だ。昆虫類も豊富だし。しかし、タイベックスーツ、ラテックス製手袋、一体マスクが必須だし、スーツはガンマ線を遮断してくれない。
 何らかの覚悟なしには、ここに居続けられない。デジタル線量計によれば、1.86μSv/時だ。近くの除染地に比べてざっと3倍ほど高い。同日同時刻の北海道札幌市の60倍、東京都心の30倍、沖縄県那覇市の40倍高い。

 (4)(3)よりさらに10kmほど南東方向(事故原発の方向)に近づくと、帰還困難区域との境界線に至る。沢沿いの線量計の数字は6.6μSv/時だ。
 森林や河川は除染の対象外だ。数種類のアブラムシはいるが、赤とんぼがいない。女郎蜘蛛や野鳥もほとんどいない。
 空から降りそそいだセシウムが蓄積する表土層は、地中でもっとも豊かに生態系が発達している場所だ。
 表土層と樹上を行き来しながら世代交代をするある種のアブラムシの浜通り地方の個体群が、2011年から12年ごろにかけて、事故原発由来の放射線による選択を受けた、と見られるとする報告がある。「選択を受けた」とは、放射線に耐えられなかったメンバーが死滅し、耐性を持つメンバー(の子孫)だけがあたかも選抜されたように生き残った、という意味だ。
 修羅場をくぐり抜けた土壌生態系に、除染が追い打ちをかけている。この4年足らずで577万立米の表土を削って袋詰めにした。まだ途上で、最終的には4,400立米に達するとの試算もある。

 (5)原発由来の放射能を取り除かないかぎり、被災者は安心を取り戻せない。
 太平洋に面する南相馬市原町区では、北萱浜(事故原発から23km)を含む地区では震災発生時、海岸線から内陸100m~3kmの範囲が大津波に呑まれ、同市でもっとも多数が亡くなっている。大部分が災害危険区域に指定され、もう住宅は建てられない。ガレキは片付いたが、行政による農地の除染工事は遅れている。
 農地はおおむね草ボウボウか、草刈り後の枯れ草が敷き詰められた状態かの2パターンしかない。

 (6)人類にとって生物多様性がなぜ大切かを説明するのに、保全生物学者は「生態サービス」という用語を使う。健全な生態系は、空気や水を浄化し、物質やエネルギーを循環させて環境の安定を保つ。食料、建材、繊維、医薬原料、燃料、さらに癒やしや宗教・芸術のインスピレーションまで与えてくれる。もし、生態系の機能が失われれば、こうしたサービスはたちまち滞ってしまう。
 原発事故から4年。除染した場所も、してない場所も、生態系サービスは著しく劣化したままだ。これが原発過酷事故後の世界だ。

 【注1】除染
【原発】小出裕章、定年退職を前に語る ~福島第一原発の現在~
【原発】全体像の見えない「核汚染」の実態 ~いまも深い闇の中~
【原発】放棄される除染 ~フクシマを見捨てる政官財~
【原発】福島に不足する熟練作業員 ~ミスが続く原因~
【原発】行き場のない廃棄物 ~先送り~
【原発】「放射能ガラクタ」を民家の庭に不法投棄 ~除染の闇~
【原発】東電か、電力改革か ~除染費用の支払いを拒否する東電~
【原発】除染道路の4割が効果なし ~福島県田村市~
【原発】最悪の事態を防いだ2つの幸運 ~失われた沃野と海~

 【注2】飯舘村
【原発】被爆と甲状腺癌の因果関係は本当にないのか? ~「専門家意見交換会」~
【原発】初期被曝量は県発表の倍の数値7mSv ~福島県・飯舘村~

□平田剛士「放射能汚染と除染工事 --土壌生態系は二度蹂躙された ~環境を破壊する原発震災復興工事(上)」(「週刊金曜日」2015年3月13日号)
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【原発】小出裕章、定年退職を前に語る ~福島第一原発の現在~

2015年03月08日 | 震災・原発事故
 小出裕章・京都大学原子炉実験所助教(65歳)が、この3月、定年退職する。

 (1)もっとも懸念された福島第一原発4号機の使用済み燃料は取り出せた。
 最大の危機は乗り越えた。プールの燃料はセシウム換算で広島原爆の14,000発分あった。これが半分壊れた建屋に宙づり状態だった。崩れ落ちて冷却できなければ、東京も放棄しなければならない。それは事故当時、近藤駿介・原子力委員会委員長すら言っていた。危機の少ない場所に移さなくてはならないが、キャスク(100トンの容器を吊るクレーン)も吹き飛び、燃料交換機も壊れた。東京電力は、壊れた部分を撤去し、別の建屋を建てて交換機とクレーンを設置。1,331体の使用済み燃料は、昨年11月までに隣の共用プールに無事移せた。東電は、犯罪組織だが、プールの中に瓦礫が落ち、燃料も変形した可能性がある困難を、放射線に晒されながら、よく克服した。

 (2)第一原発の汚染水の現状は・・・・
 運転中に溶け落ち、どこにどれだけあるかもわからない1~3号機の炉心冷却でかけ続けた水が、放射性汚染水になるのは当然だ。毎日400トン。地下構造物がヒビだらけで、それ以外に毎日地下水が建屋に流れ込む。溶接は時間がかかり、被曝するのでタンクも応急。鋼板にパッキンを挟んでボルト締めだから漏れる。東電は、地下水が建屋に流れる前に海に流そうとしたが、(建屋に流れ込む)400トンが350トンに減っただけ。いずれにしても破綻する。
 そこで、東電は浄化して法律の限度以下にして海に流したいと考えた。しかし、捕捉できる放射性物質はセシウムだけ。重要なのはストロンチウム90とトリチウム(三重水素)だ。東電は、ストロンチウム90を捕まえようと多核種除去設備(ALPS)を入れたが、まともに動かない。仮にストロンチウム90を捕捉できても、トリチウムは環境中に出れば水になる。水そのものだから、トリチウムだけは取り出せないまま海に放出せざるをえない。

 (3)困難ばかりだが、妙案はあるか。
 基本的には二つだ。
  (a)炉心に水をかけることを止めて金属を使う炉心冷却はどうか。鉛、錫など融点の低い金属を炉心に届かせれば、多分、溶けて炉心と一体化する。崩壊熱は時間とともに減少するし、炉心と一体化して金属の量が増えればこれ以上は溶けないというバランスポイントになる。金属がうまく到達しなくても、崩壊熱は当初の10万kWほどが数百kWに減り、空冷できる。チェルノブイリ原発事故では元々の炉心の発熱量は低く、地下に広大なコンクリート構造物の空きがあり、空冷できた。そう持って行きたい。金属の粉を水で流すとポンプが壊れやすくなるので工夫が要るが、不可能ではない。
  (b)遮水壁。2011年5月から主張したが、東電は「1,000億円かかり、株主総会で通らない」と採用しなかった。それでも、東電は遮水壁は必要だと2年ほど前から計画した。それは地面に冷媒を流し続け、深さ30m、長さ1.4kmにわたり周囲の土を氷で固めた凍土遮水壁を作るというものだった。しかし、停電すれば壁は崩壊するし、何十年も維持できない。最初から鋼鉄とコンクリートの壁を作るべきだった。しかし、何百億円もかかる凍土壁の失敗なんて、彼らには痛くも痒くもない。国、東電が負担し、鹿島建設が請け負い、駄目なら普通の遮水壁だ。失敗するほどゼネコンが儲かるからだ。

 (4)除染、そこから出る汚染土は・・・・
 国は「除染」と言うが、実際には「移染」だ。汚染物質は移動しかできない。残念ながら日本は法治国家ではなかった。東北地方、関東地方の広大な地域が放射線管理区域にしなくてはならない汚染レベルになった。1,000万人に近い住民を国は棄てた。水も、飲んではいけないレベル(京大原子炉実験所の実験室と同じ汚染レベル)で生活する彼らが、少しでも被曝を少なくしたいと思うのは当然だ。しかし、家の周囲や校庭で剥ぎ取っても山、森林、田畑などは無理だ。
 国は県ごとに汚染土などのゴミ捨て場を提供させ、福島県の猛烈な汚染地帯に中間貯蔵市悦を作る予定だが、大反対だ。汚染物質は東電の原子炉の中にあった東電の所有物だ。人々が被曝して集めた核のゴミは、東電に返すべきだ。返すべき先は本来第一原発だが、放射能の泥沼で7,000人が闘っていて難しい。
 福島第二原発も、広大な敷地がある。東電は壊れた4基を再稼働するなどと言っているが、すべて廃炉にしてゴミ捨て場にすべきだ。足りなければ、本社ビルでも柏崎刈羽原発の敷地でもいい。
 住民に中間貯蔵を引き受けさせるなど、あってはならない。責任は、あくまで東電だ。福島の事故で電力会社が国から得たメッセージは、どんな失敗をし、住民にどんな苦難を与えても誰一人責任を取らなくていい、ということだった。だから、関西電力も九州電力も再稼働できる。「もんじゅ」も1兆円以上をドブに捨てた責任を誰も取らない。

□語り手:小出裕章/聞き手・まとめ:粟野仁雄「住民に中間貯蔵を引き受けさせてはいけない」(「週刊金曜日」2015年3月6日号)
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【震災】住民無視の巨大開発のツケ ~神戸市~

2015年01月31日 | 震災・原発事故
 (1)阪神・淡路大震災では、例えば高層の明治生命ビルが下から3分の1ぐらいの位置で折れた。ところが、たちまちシートがかけられ、解体された。
 並んだ鉄筋の繋ぎ位置の高さをずらすなど安全対策が守られないと、立派なビルも簡単に折れる。明治生命ビルがそのケースだったのかは不明だが、被災地における異常なまでに早い解体に、「手抜き工事がばれないためではないか」という疑いを残した。

 (2)犠牲者は、基本的に建築構造物による圧死が大半だった。
 対策はどうであったか。実は、震災が起きるまで、阪神間は水害対策が中心だった。集中豪雨が原因で、
   1938年には616人、
   1967年に77人
の死者を出している。
 大きい地震は、1916年の明石海峡東部地震(M6.1)以来起きていなかった。家屋は台風対策が主だった。そのため、細い柱に重い屋根は、縦揺れの激震でひとたまりもなかった。
 だが、専門家が皆同じように「大地震は来ない」と信じていたわけではない。

 (3)1974年11月、「神戸と地震」という報告書(京都大学防災研究所、大阪市立大学理学部および神戸市教育委員会の合同研究)が、調査依頼した神戸市に届けられた。
 調査チームは、ボーリングなどを重ねた。驚くべし、報告書は「神戸市周辺地域は、活断層と呼ばれる新しい断層系が複雑に走っており、これらと地震との関連が、他都市の地震対策と異なる注目点となる。(中略)活断層群の実在するこの地域(引用者注:六甲山地付近)で、将来都市直下型の大地震が発生する可能性はあり、その時には活断層付近でキ裂、変位がおこり、壊滅的な被害を受ける」と断定していたのだ。
 地震学、地質学および地勢学の研究者が断層について議論するのは世界でもはじめてだったのではないか。自治体の報告書にしては珍しく表現も断定的だった。かつて活断層が動いたために盆地や平野ができて人が集まった。だから大地震は都市直下で起きやすい。今でも十分に使える先進的な報告書だ。【尾池和夫・京都造形芸術大学長、当時京大防災研から調査に参加】
 当時は活断層の認識がなくて、よく伝わらなかった面もあるが、あれだけ活断層があるのに大地震が起きていないことが不思議だった。エネルギーが溜まっていた証拠だ。【調査に加わった別のメンバー】
 と・こ・ろ・が、神戸市はこの調査を隠した。当時は「株式会社神戸市」の異名をとった宮崎辰雄市政だった。神戸空港の誘致、ポートアイランド事業など、巨大開発が目白押しだった。神戸市が危険な地域と見られては開発行政にとって都合が悪かったのだ。
 「神戸市の震災対策」報告(1977年)にも反映させなかった。都市直下の文字すら、無かった。

 (4)後年、早川和男・神戸大学名誉教授は、「報告書があるはず」と市側に問い質した。しかし、「無い」という回答だった。「税金で調査させておいて、都合の悪い結果は知らせない。これが市の姿勢」なのであった。
 調査チームの一人、藤田和夫・大阪市立大学名誉教授(故人)は、震災の直前まで都市直下型地震の危険性を強く訴えていた。しかし、笹山幸俊・神戸市長(当時)は無視した。市の意向を受けた室崎益輝・神戸大学工学部教授(当時)/兵庫県立大学防災教育センター長(現在)は、防災会議地震対策部会で、想定震度を「5強」と誤魔化した。

 (5)1995(平成7)年1月17日5時46分52秒、ついに地震計でも測れない震度7が襲った。
 だが、神戸市は再開発の好機と見た。
 貝原俊民・兵庫県知事(故人)は、震災直後の1月26日、「禍の中に福あり。震災によって21世紀都市づくりができる」と口を滑らした。
 小川卓海・神戸市助役(故人)は、多くの人が焼死した神戸市長田区について「幸か不幸か燃えた」と失言した。

 (6)震災からわずか2か月後、神戸市は突如、新長田駅南側における西日本最大の再開発計画(総事業費2,711億円、44棟もの高層ビルを建てる)を発表した。避難所暮らしの住民には寝耳に水だった。
 大正筋商店街(国道43号から南へ延びる)は、1999年、「アスタくにづか1~6番館」として生まれ変わった。地下、1・2階が店舗、上層は分譲マンション。市は、焼け出された店主が同じ場所で商売を再開するに当たり、店舗の購入を義務づけた。
 しかし、共有面積が広く、エスカレーターなどの維持を名目に、管理会社(「新長田まちづくり(株)」)に高額な管理費を払わされた。加えて、このまちづくり会社の会計は「ブラックボックス」なのであった。
 1か月に、管理費や積立金が7万円。【谷本雅彦・洋裁店「PET」店主】
 1か月に、管理費が5万円、さらに70平米ほどの店舗に固定資産税が40万円。【横川昌和・うどん店「七福」店主】
 2011年、アスタくにづか6番館北棟の店舗部会は、管理費をめぐり、まちづくり会社に対して1,350万円の不当利得返還訴訟を起こした。その後も52人が同様の訴訟を起こすなど、現在、商店主の怒りが爆発している。
 アスタくにづかは、すべて高層建築のため、受注者はゼネコン。神戸市民の税金は東京資本に吸い上げられただけだった。

 (7)500人ほどの「震災障害者」について、マスコミはほとんど報じていない。
 マスコミは、死者や遺族にしか関心がなかった。最初に報じたのは、震災2年後の「毎日新聞」の記事だ。低地に連なる老朽木造住宅の倒壊による死者が多く、阪神・淡路大震災は異常なまでに致死率が高い災害だった。【岩崎信彦・神戸大学名誉教授】
 大地震では、通常、
   死亡者:負傷者=1:10
とされるが、阪神・淡路大震災では、およそ
   死亡者:負傷者=6:10
 東日本大震災では、負傷者は死亡者の半数以下だが、これは津波による溺死が多かったためだ。
 大震災で怪我人をゼロにすることはできない。しかし、死亡者は減らすことができる。
 死亡の最大の原因は家屋の脆弱さだ。阪神・淡路大震災における致死率の異常な高さも、人災的側面が大きかった証拠だ。

  (8)災害障害見舞金という制度はあるが、「条件が厳しすぎて受け取れたのは64人だけ」【岩崎神大名誉教授】。
 あんなにたくさん人が周囲で死んでいる中、怪我を訴えにくい。それも対策遅れの一因だ。【牧秀一・震災障害者問題に取り組む「よろず相談室」】
 医師は、出血などの応対に追われ、潜在的な危険に手が回らなかった。
 狭い車における寝泊まりで起きるエコノミー症候群が問題視されたのは、新潟県中越地震(2004年)以降だ。

 (9)「六甲山を削って海を埋め立てさせる」・・・・これが神戸市で1949年から2013年まで、4人で64年間も続いた歴代市長(原口忠次郎、宮崎辰雄、笹山幸俊、矢田立郎)の巨大開発の基本だ。その典型は、
   神戸港東部埋め立て
   「神戸ポートアイランド博覧会(ポートピア’81)」跡地のポートアイランド、六甲アイランド
   神戸空港
 神戸市は、1981年、新神戸駅近くの市民病院を、市民の反対を押し切って、ポートアイランドに移転させた。だが、震災時、連絡橋が落下して行き来できず、市民病院はまるで役に立たなかった。
 神戸市はしかし、この「行政的重過失」に頬かむり。ポートアイランドの企業誘致が不調になると、病院をさらに沖側に移転させた。さらに「先端医療都市」と銘打って、巨額予算を注ぎ込んで、豪華な箱モノを並べた。
 その一つが、理化学研究所の多細胞システム形成研究センター(CDB)だ。小保方晴子のSTAP細胞が不正実験によるものだったことが確定し、市の大きな期待にケチがついた。このスキャンダルが、神戸市の巨大開発の虚像を象徴している。

□粟野仁雄(ジャーナリスト)「住民無視の巨大開発のツケ」(「週刊金曜日」2015年1月23日号)
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 【参考】
【震災】住民の生命や生活より箱モノ造りを優先 ~神戸市~
【震災】神戸市長田区に見る「復興災害」(2)
【震災】神戸市長田区に見る「復興災害」(1)
【旅】復興を絵画で表現できるか ~平町公の試み~
【震災】二重ローン 得するのは銀行だけだ ~その対策~
【震災】復興のカギはパイプ役(住民の自主組織) ~神戸の過ち、奥尻の教訓~
書評:『神戸発 阪神大震災以後』
書評:『復興の闇・都市の非情 --阪神大震災、五年の軌跡』

  
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【震災】住民の生命や生活より箱モノ造りを優先 ~神戸市~

2015年01月17日 | 震災・原発事故
 本書【注】の著者は、都市政策を専攻する。行政マン(神戸市)の経歴も持ち、現職は神戸松蔭女子大学教授である。

 阪神・淡路大震災を千載一遇の好機とし、仮設住宅の住民そっちのけで箱モノ造りに邁進した神戸市。ゼネコンが儲かれば後は閑古鳥が鳴こうとも、お構いなしなのであった。「箱モノ造りに邁進」の典型は、再開発を目論んでいた神戸市幹部(当時)が「幸か不幸か燃えた」と本音を漏らした長田区だ。

 本書は、「火事場泥棒的再開発」の背景に歴史的伏流を見てとる。<戦前から軍港として発展した神戸は重厚長大型産業の町。言い換えれば中央(東京)に内発的発展を阻害された植民地型開発の拠点です。震災復興工事も東京中心に利益の9割が兵庫県外に吸い上げられている。>

  関東大震災と阪神・淡路大震災
  大恐慌(1929年)とリーマンショック
  昭和三陸沖地震と東日本大震災
  軍事費増加と復興公共事業補助

 ・・・・本書は、戦争へ突き進んだ時期と現在との酷似を浮き彫りにし、警鐘を鳴らす。災害のたびに自衛隊が国民の共感を獲得した風潮を鑑みれば、「一定方向」へ国民が誘導される怖さが見出される。

 本書は、<現憲法は政府に国民の生命と生活を守ることを命じているはずが空洞化している。>と指摘して、「憲法復興学」を再生への道として強調する。
 <技術的に可能なら何をやってもいいわけではない。>
 <ドイツが原発廃止を決めた背景はキリスト教精神と倫理だった。>
 倫理、人間重視の「憲法の理念」への回帰こそ、今求められる。福島後の原発政策に未来はない。

 財政難など、どこ吹く風の「アベノミクス」。
 日本の国土すべてが「万年工事現場」だ。
 豊富なデータの力作(本書)は、「美しくない日本」は戦争と自然災害を連動させた産物にほかならないことを示す。

 【注】池田清『災害資本主義と「復興災害」』(水曜社、2014)

□粟野仁雄(ジャーナリスト)「戦争と災害が連動 「美しくない日本」 ~きんようぶんか・本~」(「週刊金曜日」2015年1月9日号)
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 【参考】
【震災】神戸市長田区に見る「復興災害」(2)
【震災】神戸市長田区に見る「復興災害」(1)
【旅】復興を絵画で表現できるか ~平町公の試み~
【震災】二重ローン 得するのは銀行だけだ ~その対策~
【震災】復興のカギはパイプ役(住民の自主組織) ~神戸の過ち、奥尻の教訓~
書評:『神戸発 阪神大震災以後』
書評:『復興の闇・都市の非情 --阪神大震災、五年の軌跡』

   
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【原発】電力会社と自民党のカネまみれ ~21億円超~

2014年10月09日 | 震災・原発事故
 「一般財団法人国民政治協会」(会長:塩川正十郎)は、自民党の政治資金団体だ。
 年間収入19億8,200万円(2012年)。その大半は企業からの献金だ。自民党最大の集金マシンだ。

 原発を持つ主要電力9社による国民政治協会への献金は、過去35年間(1977年から2012年まで)で24億1,186万8,000円にも上る(③)。<例>最少でも北海道電力の1億5,499万5,000円、最多で東京電力の3億5,914万円。
 献金は、電力会社名義ではなくても、子会社・関連会社・孫会社の名義や、役員・元役員の名義で行われている。
 子会社などの献金は、計17億7,354万2,000円。・・・・①
 役員献金は、計6億3,832万6,000円(延べ5,362人、実数1,472人。ただし、1995年以降の集計)に上る。・・・・②
   ①+②=24億1,186万8,000円・・・・③
 15年間(1995年から2010年まで)だけでも、21億6,157万9,000円。
 実際にはもっと多いかもしれない。官報は5万円以下の献金を省略しているからだ。

 電力会社は、1974年に「政治献金自粛」という方針を打ち出した。
 ところが、子会社名義・役員の献金という「ステルス式」で自民党に多額の献金を行っていたわけだ。献金の原資が電気料金や工事費であることは言うまでもない。
 年ごとの献金額は、
  1977年から1994年まで・・・・毎年数百万円から一千万円ほど。
  1995年・・・・8,000万円に激増。
  1996年から2010年まで・・・・毎年1億数千万円。
 役員献金の総額は、毎年3,000万円から4,000万円と一定している(興味深い)。多い社員で年間30万円、少ない社員で3万円程度。会社の関与があった疑いは濃厚だ。経済産業省から天下った官僚も18人が計1,706万8,000円を献金している。
 一人の役員が5年以上にわたって連続献金する例は珍しくない。会長経験クラスは軒並み11年から17年間にわたり300万円超を献金している。<例>荒木浩・元東京電力会長/三井住友銀行監査役373万円(16年間)、勝俣恒久・元東京電力会長/防衛大綱有識者会議座長364万円(14年間)、南直哉・元東京電力社長/フジテレビ監査役342万円(17年間)、鎌田迪貞・元九州電力会長424万円(16年間)。

 関連会社・役員を使った「ステルス献金」は、安倍晋三・首相が代表を務める政党支部や政治団体に対しても行われている。
 <例1>「自由民主党山口県支部第四選挙区支部」(下関市、安倍晋三・支部長)・・・・2000年から2012年にかけて、関西電力最大の子会社「きんでん」から12回、計144万円の献金が行われている。「きんでん」は、過去に談合や税の申告漏れが指摘された問題企業だ。「きんでん」はまた、安部の資金管理団体「晋和会」にも1995年から1999年にかけて計48万円を献金している。
 <例2>「第四選挙区支部」に対する役員献金は、2010年と11年に中国電力の、苅田知英・社長と山下隆・取締役からそれぞれ計6万円、福田督・取締役と岩崎恭久・取締役からそれぞれ3万円、合計18万円の献金が確認できる。山口県報には5万円以下の献金が収録されていないので、2009年以前の献金は確認できないが、役員献金が行われた可能性は否定できない。
 中国電力は、上関原発と島根原発3号機の建設・稼働に躍起になっている会社だ。苅田社長らは、国民政治協会への常連献金者だ。山下取締役の296万5,000円を筆頭に、合わせて800万円を「納金」している。
 <例3>「第四選挙区支部」に対して、原発で利益を上げる企業からの献金もある。「株式会社三興」は、島根原発や浜岡原発内に子会社の事務所を構える原発企業で、2000年以降13年間、年50万円の献金を続けている。
 安部関連団体への電力系献金は、計210万円。原発企業「三興」の分を含めると860万円だ。

 これらの献金のほかに、パーティ券購入やヤミ献金の疑いもある。
 業界からカネをもらって強引に原発ビジネスを進める安部政権は、まさに「賄賂」まみれの金満中毒政権だ。  

□三宅勝久(ジャーナリスト)「電力会社と自民党のカネまみれ 過去15年間で21億円超 役員・子会社経由で多額の政治献金」(「週刊金曜日」2014年10月3日号)
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【原発】全体像の見えない「核汚染」の実態 ~いまも深い闇の中~

2014年10月02日 | 震災・原発事故
 日本漁船の放射能検査に係る旧厚生省の資料は、これまで、「無い」とされてきた。
 それが、9月19日、公表された。
 60年前、ビキニ環礁付近(北大西洋)で操業していたマグロ漁船「第五福竜丸」が、米国の核実験による死の灰を浴びた。当時、同じ海域で操業していた日本の漁船も多くが被爆していた。しかし、「第五福竜丸」以外の被爆調査はいっさい秘匿され、何も無かったことにされていたのだ。

 9月20日付け東京新聞によれば、当時、
  「国や自治体が検査を実施した延べ556隻(実数473隻)のうち、
   魚の廃棄基準だった毎分100カウント以上の放射能が
   乗組員から検出された船は延べ12隻(実数10隻)あり、
   最も高かった人は同988カウントだった」

 表面的な被曝量は「健康被害が生じるレベルを下回っている」としても、内部被曝の実態を詳しく調査していれば、おそらく大きな社会問題になっていたはずだ。

 この資料を情報公開法によって開示させたのは、山下正寿・太平洋核被災支援センター事務局長/元高校教師(高知県在住)だ。
 氏には、
  <「ビキニ事件」から見た「福島原発被災」>
という論文がある。ビキニ水爆実験の被害が、日本よりも、米国のほうで深刻だった、ということを明かしている。
 米国政府機関の報告書を引用した上で、
  日本の土地に被曝をもたらした死の灰の5倍もの量が、ハワイや西海岸など米国本土に降りそそいでいた。
という事実を発掘した。

 2013年、「ウォール・ストリート・ジャーナル」紙が、米国の被曝実態について初めて大がかりな調査を行った。「Waste Lands」(「荒地-米国の忘れられた核の遺産」)がそれだ。
 同紙は、米国原子力委員会や米国疾病予防管理センターなど、政府機関文書を収集し、独自に分析した結果、放射性物質が残存する全米の「核汚染地域マップ」をホームページに載せた。
 このマップは、除染が完了した地域や除染中の地域だけでなく、除染の可能性があるのに何の措置もされていない地域の放射線量などを、政府が定めた基準に照らし合わせて示した。地図上のマークをクリックすると、その住所、歴史的背景に加え、現在の所有者が明示され、地域住民や読者と双方向で情報を共有できる設計になっている。
 <例>ニューヨーク市マンハッタン西20丁目500番地・・・・第二次世界大戦中、マンハッタン計画で最初の核爆弾を製造するため、136トンの製品ウランを保管していた倉庫があった。その場所は今、「数十のオフィスやアートギャラリーとして利用されている。所有者の一人だとしながらも名前を明かしてくれなかったある女性は、過去の汚染については何も知らなかったと述べ、コメントを拒否した」【2013年10月31日付け日本版同紙】。

 日本でも、原子炉から出た放射性廃棄物は、青森県六ヶ所村、茨城県東海村のほか、広範に点在して保管されている。
 しかし、これらの保管情報や、その安全性については、ほとんど報じられていない。
 <例>東芝は、1960年5月、住宅地が密集する浮島地区に原子炉を建設していて、その原子炉は現在、廃止措置中とある。核燃料は搬出済みだが、「廃棄物等」はいまだ保管中なのだ。【川崎市作成の資料】

 このほかにも、民間企業や大学の研究核施設から出た「廃棄物等」の保管情報が、文科省や多くの自治体で公表されている。
 しかし、その全体を鳥瞰できる「地図」はない。
 核の保管状況は、日米ともに、まだ深い闇の中にある。
 
□岩瀬達哉「全体像の見えない「核汚染」の実態はいまも深い闇の中だ ~ジャーナリストの目 第222回~」(「週刊現代」2014年10月11日号)
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【原発】朝日叩きに走る各紙が過去に飛ばした「大誤報」

2014年09月23日 | 震災・原発事故
 自らの過ちを棚にあげるのがマスメディアの常・・・・とはいえ、このところの朝日新聞報道は異様だ。

 木村伊量・朝日新聞社長が、9月11日、ついに謝罪、引責会見に追い込まれた。元凶は
  (1)従軍慰安婦の強制連行をでっちあげた虚偽証言 → 訂正
  (2)吉田昌郎・元東電福島第一原発所長の調書曲解 → 訂正
だが、これらに池上彰・ジャーナリストの連載拒否というオマケまで付いた。

 ここぞとばかりに「誤報だ」「謝罪がない」「社長が逃げている」とライバル紙、テレビ、週刊誌から集中砲火を浴びせかけられ、白旗をあげざるをえなかった。
 朝日の対処はまずかったが、朝日バッシングに血道をあげるマスメディアは異様だ。

 折しも、木村社長の記者会見があった翌12日、福島第一原発事故後に死亡した双葉病院の患者遺族と東電とが争っていた損害賠償請求訴訟で和解が成立した。
 原発から4.5kmという至近距離にあった双葉病院グループでは、患者や施設の入居者の多くが取り残されたあげく、50人が死亡するという惨事が発生した。原発事故による死者はいない、と東電は言い張ってきたが、50人は事故がなければ死なずはに済んだ。いわば原発事故の犠牲者だ。
 この日の和解は、訴えていた遺族二人に対し、東電が1,360万円の賠償金を支払うというものだ。
 千葉地裁は、「被害の悲惨さを考えれば、東電の責任はより重く考えるべきだ」と断罪した。

 くだんの双葉病院問題には、もう一つ、別の側面がある。
 事故当時、「病院が患者を置き去りにして逃げた」かのように福島県が発表し、それを鵜呑みにした新聞・テレビがこぞって病院関係者を「患者を見殺しにした逃亡犯」扱いをした一件だ。
 2011年3月18日(震災から1週間後)付けの新聞各紙には、次のような見出しが並んだ。
 「高齢者病院放置か 避難所で14人死亡」(産経)
 「福島・双葉病院 患者だけ残される」(読売)

 産経は、<医師や看護師らの病院関係者は一人も院内にいなかった。県保健福祉総務課では「14人は取り残されたような状態だった」としている>とまで報道した。
 また、読売は<寝たきりの患者ら98人がベッドに取り残され、職員はいなかったという>と書いた。
 テレビの全国ニュースでも大々的に報じ、双葉病院はとんでもない悪徳病院だ、というレッテルを貼られた。関係者はもがき苦しんだ。

 しかし、これこそ誤報なのであった。
 双葉病院グループでは、震災の2011年3月12日以降、入院患者と施設利用者との436人中、重症患者の129人が取り残された。そこから第一原発の水素爆発が立て続けに起こり、関係者たちはオフサイトセンター(緊急事態応急対策拠点施設)から撤収してしまった。
 救援隊が来ないまま、双葉病院は完全に孤立してしまった。
 その結果、16日までに50人が命を落とすのだが、その要因は自衛隊や福島県の救出の遅れだ。さらにいえば、東電の事故による現場の混乱だ。
 最終的に双葉病院の院長たちが救出隊を迎えにいった場所を自衛隊が間違え、すれ違いが起こった。
 が、この間、院長を始めとするスタッフは、逃げ出すどころか、懸命の看護を続けたのだ。

 ところが、県の発表を鵜呑みにした新聞やテレビは、「患者置き去り事件」として大々的に報じたのだ。
 そして、今もってきちんとした訂正や謝罪を行っていない。
 ライバル紙の過ちを追求するのは間違いではない。
 半面、それは天に唾している行為でもある。

□森功「朝日叩きに走る各紙が飛ばした「大誤報」を忘れてはいけない ~ジャーナリストの目 第221回~」(「週刊現代」2014年10月4日号)
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【原発】放棄される除染 ~フクシマを見捨てる政官財~

2014年09月06日 | 震災・原発事故
 これまで国は除染の長期目標として追加被爆線量を1mmSv/年=0.23μSv/時と示し、これより線量の高い地域の除染費用を負担してきた。
 しかし、環境省は、8月1日、これまでの空間線量から個人線量を重視する新たな方針を発表。福島県内の4市で行った調査結果をもとに、空間線量が0.3~0.6μSv/時の場所の住民で1mmSv/年程度の被爆になるとし、0.23は除染目標ではない、と主張し始めた。

 被災地からは、まやかしの方針転換だ、不満が噴出している。
 「国がやろうとしているのは、除染がうまくいかなかったから基準を引き上げるということだ。なし崩し的除染を放棄するつもりではないか」【郡山市民】
 個人線量は家族全員が違う。
  <例>①近所の学校に歩いて通う子ども。②三春町から10km離れた郡山市の会社で通勤する母親。
 第一、個人線量を測るガラスバッジは子どもだけに配布され、大人は持ってない(三春町)。
 子どもにしても、首からぶら下げるのは嫌だと、常時身につけている子のほうが少ない。
 そんな状況で、年間1ミリシーベルトを下回る人が多いから除染はしない、と言われてもまったく説得力がない。

 X市の除染担当者は打ち明ける。
 空間線量で0.23μSv/時を基準にする除染方針は、いままで環境省がさんざん言ってきたこと。何を今さら。だいたいガラスバッジで住民の本当の被爆線量を出すなんて無理。**市では従来どおり0.23μSv/時を基準にやる。

 今回の方針転換のベースになった調査に参加した郡山市ですら、同様だ。
 郡山市では「ふるさと再生除染実施計画」の中で0.23μSv/時を基準にしている。この計画を変えるつもりはない。それに、0.23μSv/時という数字を出したのは環境省ではなかったか。

 ガラスバッジや積算線量計を全住民に配布している自治体はごくわずかだ。多くは子どものみに配っている。
 <例>郡山市。昨年度末で未就学児のガラスバッジ装着率は56.6%だった。小中学生は25.2%(4度目の実施時)。妊婦には電子式積算線量計を配布するが、装着率は年間7.5%にすぎない。要するに、子どもの半分以上は持ってないし、持っていても常時は身につけていない。
 ガラスバッジが信用されていないのだ。背中側の線量は測れないし、家の中の一番線量が高いところに置いておいても不検出と出たりする。子どもが登校すると教師がバッジを回収し、下校時に返すところもある。

 環境省の新方針を受け、今年度内に全住民を対象とした個人線量測定を開始するのは、福島県内59市町村のうち13にとどまる見込みだ。
 そもそも一般人の個人線量管理には無理がある。自分も四六時中身につけるなんてことはしない。被爆管理を普通の人に強制すること自体間違っている。子どもたちにそんなことができるはずがない。個人線量計では、被爆後にその量がわかるだけ。本当にやらなければならないのは、できるかぎり被爆しないことだ。【小出裕章・京都大学原子炉実験所助教】
 今回の方針転換で、国のいい加減さがはっきりした。今まで国や自治体は0.23μSv/時まで空間線量を下げるから避難する必要はない、と住民に言ってきた。しかし、それが難しいとなると、目標数値を2倍以上に上げる、という。ずさんな除染計画が露呈した。【井戸謙一・ふくしま集団疎開裁判の会/弁護士】

 被災地を切り捨てるような方針転換は、なぜ行われたか。カネの問題か。
 2011年度以降、国が行う除染には毎年数千億円、計1兆4,081億円もの税金が投じられてきた。
 これは、本来東京電力が払うべき費用を国が一時的に肩代わりしているという形で、これまで国から東電に660億円請求され、414億円が支払われている。
 安倍政権は、昨年12月、本来は国庫に戻すべき東電株の売却益を除染に充てる方針を決定。
 最終的に、除染費用は国=税金で支払うことになった。
 ただ、株売却益は2020年後半以降の予定で、それまでは国から東電に「請求書」が回され続ける。
  
 シナリオを描いているのは経産省&電力業界だ。東電をつぶさないという大方針のため、国からの請求額を少しでも軽くしようとしている。元来、除染に消極的な環境省は、官邸を牛耳る経産省の方針を追認するだけ。交替確実と言われる石原伸晃・環境相にしても、電力業界を敵に回してまで本気で除染に取り組む気はなく、確信犯的に表部隊を避けている。【古賀茂明・元経産官僚】
 除染で出るゴミの中間貯蔵施設の建設をめぐり、「最後は金目でしょ」とうそぶく舌禍事件を起こした石原環境相は在任中からレームダック化した。除染の方針転換の発表を行ったときも、井上信治・環境副大臣に丸投げして不在だった。

 大臣のやる気なさに加えて、環境省自体のフトコロ事情も影響している。
 環境省のある幹部によれば、除染にこれほどの予算をかけるのはあと2年ほどだ。立て替えた巨額の費用を東電から回収できるか疑わしくなっているし、廃炉費用なども考えると、将来、東電株を売却しても足りなくなる可能性がある。除染の規模を縮小したい、と考えたのであろう。【飯田哲也・環境エネルギー研究所長】
 7月の集団的自衛権行使容認の閣議決定直後に支持率が下がったことで、安部政権もかなり慎重になっている。目立つことはせず、今回のように基準の数値を曖昧にしつつ、なし崩し的に除染から“撤退”しようとしているのだろう。【古賀茂明】 

□桐島瞬(ジャーナリスト)+小泉耕平(本誌)「放棄される除染 政官財の非情 甲状腺B判定の青年ら怒りの告発 経産省主導で東電延命策か」(「週刊朝日」2014年9月5日号)
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【古賀茂明】【原発】凍らない凍土壁に税金を投入し続けたわけ

2014年08月27日 | 震災・原発事故
 福島第一原発の汚染水対策が暗礁に乗り上げてしまった。
 何が問題だったのか。

 2011年の事故直後、馬淵澄夫・総理補佐官(当時菅内閣)が遮水壁の設計をするよう東電に指示したのだが、これを東電が先送りすることを海江田万里・経産相(当時菅内閣)は認めてしまった。1,000億円の巨額費用負担公表が、東電の破綻につながることを心配したからだ。
 破綻処理は、経産官僚にとって、絶対に許されない選択肢だった。
 何故か。

 原発事故直後に、松永和夫・経産事務次官は、三井住友銀行(東電のメインバンク)に対して緊急融資を求め、見返りに東電は破綻させないことを確約した、とされる。東電と銀行を丸ごと守り、経産省は東電ばかりか銀行にも恩を売って、天下り先の拡大を狙った。
 これ以降、東電を破綻させないことが、経産省の事務方に課せられた至上命題となった。

 2013年春以降、汚染水問題が再びクローズアップされた。
 この時も、松永次官が作りだした制約があったため、専門家でもない経産官僚が一番安上がりで済む方法を検討し、凍土壁方式に決めた。
 決めるにあたり、安いこと以外にもう一つ必要条件があった。それは、「できるかどうかわからない」ということだ。
 鉄とコンクリートの壁だと誰でもできる。しかし、巨大な凍土壁は研究開発的要素が大きくてリスクが高く、東電にやらせるのは酷だ。だから、国の研究開発事業としてやる、という理屈をつけた。それで税金投入が可能になった。
 本末転倒の極みだ。

 2013年9月には、オリンピック(2020年)招致のために、経産省が安部総理に、福島の状況はアンダーコントロール、汚染水は完全ブロックという大嘘宣言を世界に向けて発信させた。
 そして、国際公約だから国が前面に出るべきだと言って、税金の大々的投入を実現した。
 実は、これと同じころ、民間金融機関からの東電の借金借り換えが必要になって、国費をどんどん投入するから東電は安泰だ、と銀行に示すことが必要になった、という事情もあった。

 税金投入決定で、当初の縛りだった
  (1)金をかけられないという制約
  (2)そのために研究開発に見せかけなければならないという制約
が二つともいっぺんになくなった。よって、この時点で凍土壁にこだわる必要もなくなった。
 
 しかし、凍土壁の工事は、以前から鹿島建設に落札させる前提で作業を進めてきた。
 他の方式にすると鹿島建設が困る。
 そこで、秋の臨時国会が始まる前に、慌てて短期間の入札を行って、凍土壁方式で鹿島(と東電の共同事業)に落札させてしまった。

 基本的に、この時の構造が今も続いている。
 海側の工事でうまく地面全体が凍らず、諦めるしかない状況になったが、今さら止められないので氷やドライアイスを大量に投入する・・・・という漫画的泥縄になった。
 それでもダメなので、凍らない部分にコンクリートなどを注入して壁を作る、と言い出した。
 最初からコンクリートでやればよかったのだ。
 泡と消えた費用は数百億円にもなる。

 実は、日本で最も有力な専門家たちが、茂木敏充・経産相などに、新たな廃炉方式として「空冷式」の廃炉をずっと前に提言している。 
 経産省は、新たな廃炉方式を検討する、と言いながら、その事業への補助金はたったの5,000万円。これでは世界の有力企業は見向きもしない。真剣に考えるふりをするだけだ(アリバイ事業)。

 官僚の利権温存本能と場当たり的無責任。
 そのツケは、税金と電力料金で国民に回される。
 福島の被災者たちの不安解消も遠い夢のままだ。そして、東電と官僚の無責任を司法が断罪する【注】。

 【注】「「自殺と原発事故に因果関係」東電に賠償命令

□古賀茂明「凍らない凍土壁 ~官々愕々第121回~」(「週刊現代」2014年9月6日号)
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 【参考】
【古賀茂明】【原発】勝俣恒久・元東電会長らの起訴 ~検察審査会~
【古賀茂明】安倍政権の武器輸出 ~時代遅れの「正義の味方」~
【古賀茂明】またも折れそうな第三の矢 ~医薬品ネット販売解禁の大嘘~
【古賀茂明】「1年後の夏」に向けた布石 ~集団的自衛権~
【古賀茂明】法人減税で浮き彫りにされる本当の支配者 ~官僚と経団連~
【古賀茂明】都議会「暴言問題」の真実 ~記者クラブによる隠蔽~
古賀茂明】集団的自衛権とワールドカップ
【古賀茂明】野党再編のカギは「戦争」
【古賀茂明】電力会社の歪んだ「競争」 ~税金をもらって商売~
【原発】【古賀茂明】規制委員会人事とメディアの責任
【古賀茂明】医師と官僚の癒着の構造
【古賀茂明】電力会社「値上げ救済」の愚 ~経営難は自業自得~
【古賀茂明】竹富町「教科書問題」の本質 ~原発推進教科書~
【古賀茂明】安部総理の「11本の矢」 ~戦争国家への道~
【古賀茂明】理研は利権 ~文科官僚~
【古賀茂明】「武器・原発・外国人」が成長戦略 ~アベノミクスの今~
【古賀茂明】マイナンバーを政治資金の監視に ~渡辺・猪瀬問題~
【古賀茂明】東電を絶対に潰さずに銀行を守る ~新再建計画~
【古賀茂明】「避難計画」なき原発再稼働
【古賀茂明】「建設バブル」の本当の問題 ~公共事業中毒の悪循環経済~  
【古賀茂明】安倍政権の戦争準備 ~恐怖の3点セット~
【原発】【古賀茂明】利権構造が完全復活 ~東日本大震災3年~
【古賀茂明】アベノミクスの限界 ~笑いの止まらない経産省~
【古賀茂明】労働者派遣法改正前にすべきこと
【古賀茂明】時代遅れな、あまりにも時代遅れな ~安部政権のエネルギー戦略~
【古賀茂明】森元首相の二枚舌 ~オリンピックの政治的利用~
【古賀茂明】若者を虜にする「安部の詐術」 ~脱出の道は一つ~


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【古賀茂明】【原発】勝俣恒久・元東電会長らの起訴 ~検察審査会~

2014年08月21日 | 震災・原発事故
 7月31日、勝俣恒久・元東京電力会長らの刑事責任に関して「起訴すべきだ」と、東京第5検察審査会が判断を下した。
 この議決が画期的な点は次のとおり。
  (1)福島第一原発事故が起きた、という事実を極めて重く受け止め、被災者の「思いを感じる」と述べている。今回の事故では、誰も責任を取っていない。それは極めて理不尽だ、と被災者は感じている。この議決は、被災者の目線で判断した。
  (2)その対局にあるのが検察だ。巨大組織で事故が起きたとき、現場を知らないトップは事故を予測できない、したがって責任もない、というのが「検察の常識」。今回も検察は不起訴とした。審査会はその「検察の常識」に真っ向から挑んだ。

 原発事業者の責任は、他の事業を行う者よりも格段に重い。したがって、事故の予見可能性についても通常の事故と違い、ある程度合理性のある学説や、シミュレーションなどで危険性が示されれば、それが具体的にいつごろどういう形で起きるか詳細にわからなくても対策を講じる義務がある。勝俣会長らが出席した会議で、非常に高い津波が来る可能性についての報告がなされていたことをもって、そうした危険性を認識した、したがって勝俣には責任がある、と結論づけた。
 この議決は、関西電力大飯原発3、4号機の再稼働差し止めを命じた福井地裁判決(2014年5月)と揆を一にする。その判決は、次の(a)より(b)が上位にある、とした。
  (a)経済活動の自由
  (b)国民の憲法上の最高の権利である人格権の中でも、生命を守り、生活を維持する権利
 この判決は、原発停止で電気代が上がるとか、貿易収支が悪化することよりも、生命や生活の基盤を失うかもしれないということのほうがはるかに大事だ、ということだ。事故の際の被害の甚大性などを理由に、万が一にも事故の危険性があれば原発を動かすべきではない、ということも明確に述べている。
 この判決はまた、人格権を守るのは裁判所の最高の責務であって、これを放棄することは許されない、とも述べている。司法が国民の側に立つことを高らかに宣言したものだ。

 (1)と(2)の判断が示す一連の論理を推し進めると、福島第一原発事故に係る刑事責任について、経産省関係者の刑事責任を問うことも可能になるはずだ。
 原子力安全・保安院(当時)では、それまでの予測よりはるかに高い津波が来ることを知りながら、それを握りつぶした。同時の幹部の松永和夫は、 同院次長、同院長をへて、経産事務次官にまで上り詰め、退職時に「大変申し訳ない」というようなことを言っていたが、結局は天下りして、ものすごい高給をもらい、自分だけは悠々自邸のセレブ生活を送っている。
 県外への避難者は、今も4万人以上もいる。この現状と比べて、憤る人は多いだろう。
 検察は、これまでの姿勢を改め、強制捜査を実施し、東電幹部のみならず、経産省関係者の立件にも全力をあげるべきだ。仮に不起訴となっても、次の検察審査会で起訴相当となり、強制起訴されることもあり得る。

 川内原発が秋にも再稼働が想定される。川内原発再稼働差し止め訴訟に期待できる。川内原発では、避難計画の杜撰さが極めて明白だ。普通の裁判官なら差し止めが認められる可能性は高い。
 政府は、再稼働を強行するだろうか。強行すれば、脱原発の世論が一気に盛り上がる。秋の沖縄や福島の知事選への影響を嫌って、政府は再稼働を冬に延ばす動きも見せている。
 国民は、今、政府はむろん野党にも頼れない。最後の頼みの綱が司法だ。司法への期待が大きく膨らむ。 

□古賀茂明「原発問題「司法への期待」 ~官々愕々第120回~」(「週刊現代」2014年8月30日号)
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 【参考】
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