語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【佐藤優】権力は金で買える ~『武器を磨け』~

2018年01月30日 | ●佐藤優
 <認識すべきことは、「お金=権力」であるということだ。世の中の大多数の人には、この認識が決定的に抜け落ちているのである。主流派経済学、近代経済学をやっている人にはこれがわからない。
 資本家は常に資本を蓄積し続けることによって、いつの間にか「お金」という権力を手にする。お金があれば権力が買えるわけである。
 たとえば「サウジアラビアに女性の国会議員は何人?」というのも、引っかけ質問だ。そもそも国会自体が存在しないからである。諮問評議会はあるが国王による任命制であり、法律も国王の勅令による。サウジアラビアなどは極端な例だが、一部の金持ちが権力を手にすることができるのは日本も同じだ。だからこそ、政治資金規制法などで個人が政治家に献金できる額には上限が定められ、細かな記録も義務づけさせているわけである。
 『キングダム』では強大な財力で秦国の実権を握った呂不韋が政と「天下を語る上で大切なこと」について議論を交わす場面がある。天下の起源は「金」であると呂不韋は断言する。
 お金こそが人類最大の発明であり、お金をどれぐらい持っているかで人の裕福度が計れるようになってしまった。当然、そこには他者よりも多くの「お金」を得たいという欲が生まれる。もともと物々交換で生きてきた人々に、より多くのお金を得るためその影響範囲を広げたいという新たな欲も生じる。 
 かつての世界は「天」の恩恵にあずかる世界であり、「天の下」はあくまで天に支配されるものであったが、人々がお金を手にしたことで、本来「天の下」であったはずの人々が「天下」を握りたいと考えるようになったのである。
 まさか「お金」を手にしただけで人々がここまで増長するとは「天」も驚くだろうと呂不韋は語るが、まさに「お金」がこの人間の世をつくっているということなのだ。>

□佐藤優/原泰久・原作『武器を磨け 弱者の戦略教科書『キングダム』』 (SB新書、2018)の「第2章 組織を泳ぎ切る」の「知恵の力を過信するな」の「権力は金で買える」を引用
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 【参考】
【佐藤優】総合力=知恵×力の二乗 ~『武器を磨け』~
【佐藤優】「終わりの絵」を描く ~『武器を磨け』~
【佐藤優】生き抜くための目的思考 ~『武器を磨け』~
【佐藤優】中期展望を描いた者が生き残る ~『武器を磨け』~

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