その人気の秘密は、文章の明快さに加えて、眼の位置の低さが挙げられるだろう。他の多くのコラムミストがどこか一種の高みのようなところから発言しているのに比べると、明らかに彼はごく平均的なアメリカ人としての立場から離れようとしない。それは通俗と紙一重ではあるが、平均的なアメリカ人というものへの信仰に近い自信によって、辛うじて独自なものになり得ている。そしてまた、平均的なアメリカ人であるはずの彼の書くものが、現代の日本人にほとんど違和感なく受け入れられている大きな理由は、そこで扱われている題材が、アメリカ人だけでなく、日本人にとっても身近な者になっているからだといえるだろう。
【出典】沢木耕太郎『彼らの流儀』(新潮文庫、1996)
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