語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【原発】秘密裡に銀行が進める債権保全策 ~東電と経産省~

2013年11月11日 | 震災・原発事故
 (1)10月16日、会計検査院の報告書が発表された。
 そこに、東京電力をめぐる驚くべき事実が記載されていた。

 (2)東電は、今後十数兆円の資金が必要になる。汚染水処理、損害賠償、除染、廃炉・・・・のために。
 その十数兆円を通常の事業活動で捻出するのは不可能だ。普通の企業ならば、破綻だ。
 破綻すると、東電に巨額の融資を行っている銀行が困る。
 で、銀行と癒着している自民党、経産省などは、破綻回避のため、消費者につけ回ししようと必死だ。さまざまな理由をつけて、(a)税金を投入し、(b)電力料金を値上げすることによって。
 <例>「政府が前面に出る」と称して、汚染水対策に税金を投入する。

 (3)破綻処理して銀行の債権をカットすれば、数兆円の借金返済が免除される。
 その分、(a)投入する税金や(b)電力料金値上げも、大幅に縮小できる。
 しかし、安倍総理は明確に破綻処理を否定した。

 (4)<反対理由1>被災者への賠償が行えなくなる。
 確かに、(銀行の債権とともに被災者の損害賠償権がカットされる。
 しかし、債権をカットした上で、被災者の債権だけは国費で支払うことにすれば、問題ない。
 むろん、税金投入が必要になる。①一般の税金で賄うか、②一部は電力料金に課税する形で電力使用者に転嫁するかは、国会で決めればよい。
 同じ国費(税金)投入であっても、破綻処理によりカットした数兆円分(銀行の債権)は国民の負担が減る。・・・・この点が重要だ。


 (5)<反対理由2>被災者の債権は真っ先にカットされるのに、社債(電力債)は、被災者の債権より優先されて守られる(電気事業法37条)ので、正義に反する。
 たしかに理不尽な制度だ。
 しかし、実は、銀行は東電・経産省と組んで、もっと理不尽なことをやっていた。
 極秘裏に、銀行の債権だけを少しずつ電力債に置き換えているのだ。
 普通の電力債は公募発行なので、多くの情報が開示される。しかし、今回は私募債を遣うことで、その仕組みを隠蔽した。
 この暴挙を、(1)の会計検査院が暴いたのだ。

 (6)暴挙は次のとおり。
  (a)2013年3月末までに7,264億円が、この私募債に置き換えられている。【会計検査院の報告書】
  (b)6月末までに8,000億円近くが、この私募債に置き換えられている。【エコノミスト誌】
  (c)年末にかけて行われる債権の借り換えで、2011年3月の福島第一原発事故より前にあった民間金融機関の債権の大部分は電力債に換わる。
  (d)日本制作投資銀行の債権(2013年3月末現在、6,100億円)も、別の法律で社債と動揺に優先される。
  (e)メガバンクが2011年3月末に実施した緊急融資2兆円の債権も、今後おそらく密かに社債に置き換わる(推定)。
  (f)以上の結果、被災者の債権、国が建て替えた債権だけが、一般債権として残る。

 (7)銀行は、被災者切り捨てで破綻処理に備えているのだ。
 これが人間のすることだろうか?
 東電は、自身が事実上の破綻状態にあることを認識しているから、債権者平等の原則に反する。かかる行為は、破綻処理の際に、債権者詐害行為として取り消すべきだ。

 (8)そもそも、(5)の仕組みがおかしい。
 このままでは、将来の原発事故に備えて、銀行は、他の電力会社に対する融資も社債に切り替えていくだろう。
 これを防ぐには、法改正しかない。

□古賀茂明「東電と巨大銀行の大罪 ~官々愕々第85回~」(「週刊現代」2013年11月16日号)
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