路上観察学を開拓した赤瀬川源平が、フェルメールの全作品36点の観察を集約したのが本書。たとえば、《ぶどう酒のグラス(紳士とワインを飲む女)》についてこう書く。
ちなみに、この作品は2018年のフェルメール展(8作品)の一つ。日本初公開。
---(引用開始)---
男が女にワインを勧めている。他に誰もいない静かな室内で、ワインだけが精気をもつ小さな液体として際立っている。フェルメールの意図が伝わってくるし、絵の中の男の意図もよく伝わってくる。
*
上唇と鼻と目が、大きなワイングラスの中にすっぽりと収まっている。とくにその目が、ワイングラスの光った部分の向こう側に隠れてわからず、何かしら暗示的であり、こちらの目もモーローとしてくるみたいだ。
*
■視線から読める“文学”
この絵の場合、二つの視線が結ばれるのではなく、視線が折れ曲がって進む。
まず黒い帽子の男。陶製のワインの瓶に手をかけて、じっと女を見ている。見られている方の女は、勧められたワインを飲みながら、その自分の視線は横倒しにしたワイングラスの中で渦を巻いている。
そうやって画面から手の皮膚までぽっと赤くなってきている女をじっと見ている男。何だか九分通り手中にした獲物を見つめるような視線。そういう“文学”まで緻密に描いているフェルメールは、やはり物理的だけでなく人間的にも“写真画家”である。
---(引用終了)---
□赤瀬川源平『[新装版]赤瀬川源平が読み解く全作品 フェルメールの眼』(講談社、2012)の「5 ぶどう酒のグラス」を引用
【参考】
「【フェルメール】《兵士と笑う娘》 ~赤瀬川源平『フェルメールの眼』~」
「【フェルメール】《牛乳を注ぐ女》 ~『20世紀最大の贋作事件』~」
「【フェルメール】の青はどこから来ているか? ~『フェルメール 光の王国』~」
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《ぶどう酒のグラス(紳士とワインを飲む女)》(1658- 60年頃)/ベルリン国立博物館
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本書
ちなみに、この作品は2018年のフェルメール展(8作品)の一つ。日本初公開。
---(引用開始)---
男が女にワインを勧めている。他に誰もいない静かな室内で、ワインだけが精気をもつ小さな液体として際立っている。フェルメールの意図が伝わってくるし、絵の中の男の意図もよく伝わってくる。
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上唇と鼻と目が、大きなワイングラスの中にすっぽりと収まっている。とくにその目が、ワイングラスの光った部分の向こう側に隠れてわからず、何かしら暗示的であり、こちらの目もモーローとしてくるみたいだ。
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■視線から読める“文学”
この絵の場合、二つの視線が結ばれるのではなく、視線が折れ曲がって進む。
まず黒い帽子の男。陶製のワインの瓶に手をかけて、じっと女を見ている。見られている方の女は、勧められたワインを飲みながら、その自分の視線は横倒しにしたワイングラスの中で渦を巻いている。
そうやって画面から手の皮膚までぽっと赤くなってきている女をじっと見ている男。何だか九分通り手中にした獲物を見つめるような視線。そういう“文学”まで緻密に描いているフェルメールは、やはり物理的だけでなく人間的にも“写真画家”である。
---(引用終了)---
□赤瀬川源平『[新装版]赤瀬川源平が読み解く全作品 フェルメールの眼』(講談社、2012)の「5 ぶどう酒のグラス」を引用
【参考】
「【フェルメール】《兵士と笑う娘》 ~赤瀬川源平『フェルメールの眼』~」
「【フェルメール】《牛乳を注ぐ女》 ~『20世紀最大の贋作事件』~」
「【フェルメール】の青はどこから来ているか? ~『フェルメール 光の王国』~」
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《ぶどう酒のグラス(紳士とワインを飲む女)》(1658- 60年頃)/ベルリン国立博物館
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本書