(1)3月5日の自民党大会は、「安倍1強時代」を確定する一大セレモニーだった。これまで「2期6年まで」とされた自民党総裁の任期が党則変更により「3期9年」に。安倍にその意思があれば2021年9月まで総裁の座にとどまることができるようになったからだ。
長期政権を実現するには、首相自身が「渦中の人」にならないことが鉄則だ。安倍を首相候補に育てあげた小泉純一郎は、5年5ヵ月の長期政権を担ったが、金銭問題を含めてスキャンダルがなかった。それが小泉の最大の強みだった。贈り物は一切受けとらず、生ものでも必ず送り返すというエピソードは今も語り草だ。
(2)安倍も多くの閣僚が「政治とカネ」で辞任したが、本人は無傷だった。ところが、ここにきて急浮上した大阪市の学校法人「森友学園」問題をめぐって安倍自身が一躍「渦中の人」となった。
今回の問題をめぐる特異性は、安倍の夫人、昭恵が同校の名誉校長に就任していたことだった。
森友学園の系列幼稚園では教育勅語を暗唱させ、運動会の選手宣誓では「安倍首相がんばれ」を連呼させていたことが判明した。このため、安倍と籠池泰典・森友学園理事長との個人的関係が大きな焦点として浮上する。
これに対して、安倍は2月17日の衆院予算委員会でこう言い切った。
「私や妻、事務所が(問題に)関わっていれば、首相も国会議員も辞める」
国有財産を管理する財務省や、もともと売却された国有地を管理していた国土交通省大坂航空局も適正な売却だったと繰り返し述べ、佐川宣寿・財務省理財局長は「政治家の関与は一切ない」と国会で答弁した。安倍も、「他の政治家に関しては首相として答える立場にない」としていた。
(3)ところが、3月1日になって、事態は思わぬ方向に流れていく。
鴻池祥肇・衆議院議員(自民党)が突然、記者会見を行い、籠池と面会していた事実を明らかにしたのだ。その際の模様について、鴻池は「紙に入ったものを差し出された」と語っている。親分肌で伝法な物言いで知られる鴻池は、身ぶり手ぶりを交えてこう付け加えた。
「一瞬でカネだと分かったので、無礼者、政治家をカネではたくのは教育者とは違う、帰れと言った」
3月2日付け「産経新聞」によれば、籠池は持参したのはカネではなく商品券で、また「小学校の話は何もしていない」と取材に答えている。
真相はますます分からなくなってきた。安倍自身も言っているように、「ない」ことを証明するのは「悪魔の証明」だが、真相究明のための努力義務は安倍側にある。
(4)歴代の首相も自身に降りかかった問題について国会で堂々と答弁して乗り切ってきた。
森友学園問題は、国有地の売却だけでなく私学と政治家との関係も問われている。ここは安倍が率先して事実の解明を指示するところだ。それが真の「1強」につながる。
□後藤謙次「安倍1強時代を揺るがすリスク 森友学園問題で一躍「渦中の人」 ~永田町ライブ!No.330」(「週刊ダイヤモンド」2017年3月11日号)
↓クリック、プリーズ。↓
【参考】
「【後藤謙次】北朝鮮、金正男氏殺害の深層 ~日本政府内に異なる二つの見方~」
「【後藤謙次】政府与党内の二つの見方 ~北方領土交渉は頓挫?~」
「【後藤謙次】トランプの地滑り的勝利で始まった未知なる対米外交」
「【後藤謙次】築地市場の移転延期の決断が小池都知事の手足を縛るリスク」
「【後藤謙次】幹事長の入院が人事に波及、「ポスト安倍」めぐり早くも火花」
「【後藤謙次】参院選大勝も激戦12県で大敗 ~劣る「勝利の質」~」
「【後藤謙次】都知事選で与党分裂の理由 ~自民党内の反安倍勢力~」
「【後藤謙次】日本が直面する「ABCリスク」 ~英EU離脱で顕在化~」
「【後藤謙次】甘利大臣辞任をめぐる二つのなぜ ~後任人事と直後のマイナス金利~」
「【政治】不可解な時期に石破派が発足 ~その行方は内閣改造で~」
「【政治】震災後2度目の統一地方選 ~異例なほど注力する自民党本部~」
「【政治】安倍が描いた解散戦略の全内幕 ~周到な準備~」
「【政治】安部政権の危機管理能力の低さ ~土砂災害・火山噴火~」
「【政治】「地方創生」が実現する条件 ~石破-河村ラインの役割分担~」
「【政治】露骨な安倍政権へのすり寄り ~経団連が献金再開~」
「【政治】石原発言から透ける政権の慢心 ~制止役不在の危うさ~」
「【原発】政権の最優先課題 ~汚染水と廃炉作業~」
「【政治】「新党」結成目前の小沢一郎の前にたちはだかる難問」
「【政治】小沢一郎、妻からの「離縁状」の波紋 ~古い自民党の復活~」
「【政治】国会議員はヤジの質も落ちた」
長期政権を実現するには、首相自身が「渦中の人」にならないことが鉄則だ。安倍を首相候補に育てあげた小泉純一郎は、5年5ヵ月の長期政権を担ったが、金銭問題を含めてスキャンダルがなかった。それが小泉の最大の強みだった。贈り物は一切受けとらず、生ものでも必ず送り返すというエピソードは今も語り草だ。
(2)安倍も多くの閣僚が「政治とカネ」で辞任したが、本人は無傷だった。ところが、ここにきて急浮上した大阪市の学校法人「森友学園」問題をめぐって安倍自身が一躍「渦中の人」となった。
今回の問題をめぐる特異性は、安倍の夫人、昭恵が同校の名誉校長に就任していたことだった。
森友学園の系列幼稚園では教育勅語を暗唱させ、運動会の選手宣誓では「安倍首相がんばれ」を連呼させていたことが判明した。このため、安倍と籠池泰典・森友学園理事長との個人的関係が大きな焦点として浮上する。
これに対して、安倍は2月17日の衆院予算委員会でこう言い切った。
「私や妻、事務所が(問題に)関わっていれば、首相も国会議員も辞める」
国有財産を管理する財務省や、もともと売却された国有地を管理していた国土交通省大坂航空局も適正な売却だったと繰り返し述べ、佐川宣寿・財務省理財局長は「政治家の関与は一切ない」と国会で答弁した。安倍も、「他の政治家に関しては首相として答える立場にない」としていた。
(3)ところが、3月1日になって、事態は思わぬ方向に流れていく。
鴻池祥肇・衆議院議員(自民党)が突然、記者会見を行い、籠池と面会していた事実を明らかにしたのだ。その際の模様について、鴻池は「紙に入ったものを差し出された」と語っている。親分肌で伝法な物言いで知られる鴻池は、身ぶり手ぶりを交えてこう付け加えた。
「一瞬でカネだと分かったので、無礼者、政治家をカネではたくのは教育者とは違う、帰れと言った」
3月2日付け「産経新聞」によれば、籠池は持参したのはカネではなく商品券で、また「小学校の話は何もしていない」と取材に答えている。
真相はますます分からなくなってきた。安倍自身も言っているように、「ない」ことを証明するのは「悪魔の証明」だが、真相究明のための努力義務は安倍側にある。
(4)歴代の首相も自身に降りかかった問題について国会で堂々と答弁して乗り切ってきた。
森友学園問題は、国有地の売却だけでなく私学と政治家との関係も問われている。ここは安倍が率先して事実の解明を指示するところだ。それが真の「1強」につながる。
□後藤謙次「安倍1強時代を揺るがすリスク 森友学園問題で一躍「渦中の人」 ~永田町ライブ!No.330」(「週刊ダイヤモンド」2017年3月11日号)
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【参考】
「【後藤謙次】北朝鮮、金正男氏殺害の深層 ~日本政府内に異なる二つの見方~」
「【後藤謙次】政府与党内の二つの見方 ~北方領土交渉は頓挫?~」
「【後藤謙次】トランプの地滑り的勝利で始まった未知なる対米外交」
「【後藤謙次】築地市場の移転延期の決断が小池都知事の手足を縛るリスク」
「【後藤謙次】幹事長の入院が人事に波及、「ポスト安倍」めぐり早くも火花」
「【後藤謙次】参院選大勝も激戦12県で大敗 ~劣る「勝利の質」~」
「【後藤謙次】都知事選で与党分裂の理由 ~自民党内の反安倍勢力~」
「【後藤謙次】日本が直面する「ABCリスク」 ~英EU離脱で顕在化~」
「【後藤謙次】甘利大臣辞任をめぐる二つのなぜ ~後任人事と直後のマイナス金利~」
「【政治】不可解な時期に石破派が発足 ~その行方は内閣改造で~」
「【政治】震災後2度目の統一地方選 ~異例なほど注力する自民党本部~」
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