(1)明治初期は、複数の大きな転機を迎えた重要な時期だった。明治後期に日本は世界史を大きく変える戦争(日清戦争・日露戦争)に関わっているが、そこに至る諸問題は明治初期にすでにあらわれている。【山内】
明治と年号が改まり、翌2年に戊辰戦争が終結、版籍奉還。4年に廃藩置県の断行、日清修好条約の締結、岩倉使節団の派遣。【佐藤】
ことに岩倉使節団は、特命全権大使の岩倉具視以下、木戸孝允、大久保利通、伊藤博文といった維新政府の首脳陣が2年近くも米欧に外遊するという極めて特異なプロジェクトだった。【山内】
革命政権のトップが革命後まもなくこぞって国を空けること自体、あまり例がない。【佐藤】
それは重要な論点。ピョートル1世によるアムステルダムでの船大工修行など後進国のキャッチ・アップへの努力はあるが、岩倉使節団はまったく違う。使節団が帰国した明治6年、留守政府を仕切っていた西郷隆盛が朝鮮政策を巡って下野するという大問題もある。それが明治10年の西南戦争につながっていく。ここまで含めて岩倉使節団のインパクトを考えるべきだ。近代の形成という点で、明治14年までをひとつの区切りとする一部学界の見方に賛成したい。【山内】
この年、憲法制定論議をめぐって、立憲君主制のプロシア型を支持する伊藤博文と、議院内閣制のイギリス型を推す大隈重信が対立、大隈一派が政権から追放される(明治14年の政変)。この年は同時に、国会開設が約束され、国営企業が民営化に舵を切った年。財政面で松方デフレが始まり、金融の要となる日本銀行が開設された年でもある。【山内】
つまり、憲法、議会、中央銀行、民間経済といった近代的な国家の形がこの時期に立ち上がってくる。そこでもうひとつ重要なのは明治12の琉球処分。これは沖縄を日本の国家体制の中に取り込んだばかりでなく、その後の朝鮮、台湾、中国との関係とも深く結びついていく。【佐藤】
幕末以来の変革期から、内外政策に均衡のとれた安定期に入っていく。それが明治14年だ。【山内】
(2)岩倉使節団を論じるに、お金という切り口から入っていきたい。使節団は、使節46名、随員18名、留学生43名、総勢107名という大所帯で米国に8ヵ月、英国、仏国、独国、露国など欧州12ヵ国をまわり、インド、シンガポール、上海を通って1年10ヵ月後に帰国した。彼らはどのくらいの費用を使ったのか。当時の日本は、国家としてはまだ非常に弱い状態にあった。財政的にもとても余裕があると思えないのに、当時の資料によれば、使節団はほぼ青天井のお金を持っている印象なのだ。【佐藤】
使節団に同行した久米邦武の『特命全権大使米欧回覧実記』によると、およそ50万ドル。明治政府は明治4年に金本位制に基づく新貨条例を定め、かつての1両を1円、かつ1円=1米ドル、1ポンド=5円と定めている。米価などの推移をもとに貨幣価値を比較すると、おおざっぱにいって当時の1円は今の2万円、つまり50万ドル(当時)=50万円(当時)=100億円(現在)。当時の国家予算が3,309円だから1.5%をあてたことになる。【山内】
しかも、当時はまだ貨幣価値が浸透していないから、いまより皮膚感覚ではもっと大きなはず。岩倉使節団があれだけの仕事を残したのは、相当金をばらまいたからに違いない。いま東京に駐在する主要国のインテリジェンスオフィサーは一人あたりだいたい年間3千万円の予算枠を与えられている。基本的には3千万円を細かい決裁をとらずに個人の裁量で使っていい。特別なオペレーションの場合は、また別途与えられる。情報関係で一定の仕事をしようとすると、どうしても費用がかかってしまう。 【佐藤】
使節団がニューヨークに行ったとき、高杉晋作のいとこを名乗る南貞助の斡旋で米国人から投資話をもちかけられた。結局、金を預かっていた田中光顕が反対したので旅費の50万ドルは無事だったが、何人かは個人で投資して、資本主義の冷酷な詐欺・騙しの手口をいやというほど知らされた(笑)。久米邦武もその一人で、100ポンド(当時)=1,000万円(現在)をすってしまう。【山内】
個人レベルでもそれだけの金を用意していった、ということ。【佐藤】
使節団が留まったホテルは、ロンドンならマジェスティックホテルなど、ファーストではなくもうひとつ上のデラックス・ホテルに留まっている。【山内】
使節団に「安いホテルに泊まるとなめられるぞ」とアドバイスしてくれる人間がいたのだろう。これは外交の世界の常識だ。相手方は、泊まるホテル、使うレストラン、身なりなどで「格」を判定するから。【佐藤】
(3)使節団に進言したのは、幕末にすでに欧米でさまざまな交渉に当たった旧幕使節経験者だろう。福沢諭吉など幕末期に欧米へ3回行っている。先人たちが身にしみて経験した欧米の差別的な扱いが、岩倉使節団に生かされたのだろう。実際、書記官として派遣された田辺太一や福地源一郎(桜痴)、林薫三郎らの書記官の面々は、みな幕臣として海外を経験している。田辺は横浜鎖港を目指す文久4年の遣仏使節団の一員で、維新後も日清外交などで活躍、文久元年の遣欧使節団に参加した福地はジャーナリストとしても名を馳せ、慶応2年の英国留学組の林は後に日英同盟の立役者となる林薫(ただす)だ。幕府の分厚い人材が、明治政府を実務面でいかに支えたかをよくあらわしている。【山内】
□山内昌之×佐藤優「西郷と大久保はなぜ決裂したのか ~大日本史第2回~」(「文芸春秋SPECIAL」2016年夏号)
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【参考】
「【佐藤優】反省より不快示すロシア ~五輪ドーピング問題~」
「【佐藤優】 改憲を語るリスクと語らないリスク ~改憲問題~」
「【佐藤優】+池上彰 エリートには貧困が見えない ~貧困対策は教育~」
「【佐藤優】スコットランドの動静と沖縄の日本離れの加速」
「【佐藤優】沖縄の全基地閉鎖要求・・・・を待ち望む中央官僚の策謀」
「【佐藤優】ナチスドイツ・ロシア・中国・北朝鮮 ~世界の独裁者~ 」
「【佐藤優】急進展する日露関係 ~安倍首相が取り組むべき宿題~」
「【佐藤優】日露首脳会談をめぐる外務省内の暗闘 ~北方領土返還の可能性~」
「【佐藤優】殺しあいを生む「格差」と「貧困」 ~「殺しあう」世界の読み方~」
「【佐藤優】一時中止は沖縄側の勝利だが ~辺野古新基地建設~」
「【佐藤優】情報のプロならどうするか ~「私用メール」問題~」
「【佐藤優】テロリズムに対する統一戦線構築 ~カトリックとロシア正教~」
「【佐藤優】北方領土「出口論」を安倍首相は訪露で訴えよ」
「【佐藤優】ラブロフ露外相の真意 ~日本政府が怒った「強硬発言」~」
「【佐藤優】プーチンが彼を「殺した」のか? ~英報告書の波紋~」
「【佐藤優】北朝鮮による核実験と辺野古基地問題」
「【佐藤優】サウジとイランと「国交断絶」の引き金になった男 ~ニムル師~」
「【佐藤優】矛盾したことを平気で言う「植民地担当相」 ~島尻安伊子~」
「【佐藤優】陰険で根暗な前任、人柄が悪くて能力のある新任 ~駐露大使~」
「【佐藤優】世界史の基礎を身につける法、決断力の磨き方」
「【佐藤優】国内で育ったテロリストは潰せない ~米国の排外主義的気運~」
「【佐藤優】沖縄が敗訴したら起きること ~辺野古代執行訴訟~」
「【佐藤優】知を身につける ~行為から思考へ~」
「【佐藤優】プーチンの「外交ゲーム」に呑まれて」
「【佐藤優】世界イスラム革命の無差別攻撃 ~日本でテロ(3)~」
「【佐藤優】日本でもテロが起きる可能性 ~日本でテロ(2)~」
「【佐藤優】『日本でテロが起きる日』まえがきと目次 ~日本でテロ(1)~」
「【佐藤優】小泉劇場と「戦後保守」・北方領土、反知性主義を脱構築」
「【佐藤優】【中東】「スリーパー」はテロの指令を待っている」
「【佐藤優】東京オリンピックに係るインテリジェンス ~知の武装・抄~」
「【佐藤優】分析力の鍛錬、事例、実践例 ~知の教室・抄(3)~」
「【佐藤優】武器としての教養、闘い方、対話の技術 ~知の教室・抄(2)~」
「【佐藤優】知的技術、情報を拾う・使う、知をビジネスに ~知の教室・抄(1)~」
「【佐藤優】多忙なビジネスマンに明かす心得 ~情報収集術(2)~」
「【佐藤優】多忙なビジネスマンに明かす心得 ~情報収集術(1)~」
「【佐藤優】日本のインテリジェンス機能、必要な貯金額、副業の是非 ~知の教室~」
「【佐藤優】世の中でどう生き抜くかを考えるのが教養 ~知の教室~」
「【佐藤優】『知の教室 ~教養は最強の武器である~』目次」
「【佐藤優】『佐藤優の実践ゼミ』目次」
「『佐藤優の実践ゼミ 「地アタマ」を鍛える!』」
★『佐藤優の実践ゼミ 「地アタマ」を鍛える!』目次はこちら
「【佐藤優】サハリン・樺太史、酸素魚雷と潜水艦・伊400型、飼い猫の数」
「【佐藤優】第2次世界大戦、日ソ戦の悲惨 ~知を磨く読書~」
「【佐藤優】すべては国益のため--冷徹な「計算」 ~プーチン~」
「【佐藤優】安倍政権、沖縄へ警視庁機動隊投入 ~ソ連の手口と酷似~」
「【佐藤優】世の中でどう生き抜くかを考えるのが教養 ~知の教室~」
「【佐藤優】冷静な分析と憂国の情、ドストエフスキーの闇、最良のネコ入門書」
「【佐藤優】「クルド人」がトルコに怒る理由 ~日本でも衝突~」
「【佐藤優】異なるパラダイムが同時進行 ~激変する国際秩序~」
「【佐藤優】被虐待児の自立、ほんとうの法華経、外務官僚の反知性主義」
「【佐藤優】日本人が苦手な類比的思考 ~昭和史(10)~」
「【佐藤優】地政学の目で中国を読む ~昭和史(9)~」
「【佐藤優】これから重要なのは地政学と未来学 ~昭和史(8)~」
「【佐藤優】近代戦は個人の能力よりチーム力 ~昭和史(7)~」
「【佐藤優】戦略なき組織は敗北も自覚できない ~昭和史(6)~」
「【佐藤優】人材の枠を狭めると組織は滅ぶ ~昭和史(5)~」
「【佐藤優】企画、実行、評価を分けろ ~昭和史(4)~」
「【佐藤優】いざという時ほど基礎的学習が役に立つ ~昭和史(3)~」
「【佐藤優】現場にツケを回す上司のキーワードは「工夫しろ」 ~昭和史(2)~」
「【佐藤優】実戦なき組織は官僚化する ~昭和史(1)~」
「【佐藤優】バチカン教理省神父の告白 ~同性愛~」
「【佐藤優】進むEUの政治統合、七三一部隊、政治家のお遍路」
「【佐藤優】【米国】がこれから進むべき道 ~公約撤回~」
「【佐藤優】同志社大学神学部 私はいかに学び、考え、議論したか」「【佐藤優】プーチンのメッセージ」
「【佐藤優】ロシア人の受け止め方 ~ノーベル文学賞~」
「【佐藤優】×池上彰「新・教育論」」
「【佐藤優】沖縄・日本から分離か、安倍「改憲」を撃つ、親日派のいた英国となぜ開戦」
「【佐藤優】シリアで始まったグレート・ゲーム ~「疑わしきは殺す」~」
「【佐藤優】沖縄の自己決定権確立に大貢献 ~翁長国連演説~」
「【佐藤優】現実の問題を解決する能力 ~知を磨く読書~」
「【佐藤優】琉球独立宣言、よみがえる民族主義に備えよ、ウクライナ日記」
「【佐藤優】『知の教室 ~教養は最強の武器である~』目次」
「【佐藤優】ネット右翼の終わり、解釈改憲のからくり、ナチスの戦争」
「【佐藤優】「学力」の経済学、統計と予言、数学と戦略思考」
「【佐藤優】聖地で起きた「大事故」 ~イランが怒る理由~」
「【佐藤優】テロ対策、特高の現実 ~知を磨く読書~」
「【佐藤優】フランスにイスラム教の政権が生まれたら恐怖 ~『服従』~」
「【佐藤優】ロシアを怒らせた安倍政権の「外交スタンス」」
「【佐藤優】コネ社会ロシアに関する備忘録 ~知を磨く読書~」
「【佐藤優】ロシア、日本との約束を反故 ~対日関係悪化~」
「【佐藤優】ロシアと提携して中国を索制するカードを失った」
「【佐藤優】中国政府の「神話」に敗れた日本」
「【佐藤優】日本外交の無力さが露呈 ~ロシア首相の北方領土訪問~」
「【佐藤優】「アンテナ」が壊れた官邸と外務省 ~北方領土問題~」
「【佐藤優】基地への見解違いすぎる ~沖縄と政府の集中協議~」
「【佐藤優】慌てる政府の稚拙な手法には動じない ~翁長雄志~」
「【佐藤優】安倍外交に立ちはだかる壁 ~ロシア~」
「【佐藤優】正しいのはオバマか、ネタニヤフか ~イランの核問題~」
「【佐藤優】日中を衝突させたい米国の思惑 ~安倍“暴走”内閣(10)~」
「【佐藤優】国際法を無視する安倍政権 ~安倍“暴走”内閣(9)~」
「【佐藤優】日本に安保法制改正をやらせる米国 ~安倍“暴走”内閣(8)~」
「【佐藤優】民主主義と相性のよくない安倍政権 ~安倍“暴走”内閣(7)~」
「【佐藤優】官僚の首根っこを押さえる内閣人事局 ~安倍“暴走”内閣(6)~」
「【佐藤優】円安を喜び、ルーブル安を危惧する日本人の愚劣 ~安倍“暴走”内閣(5)~」
「【佐藤優】中小企業100万社を潰す竹中平蔵 ~安倍“暴走”内閣(4)~」
「【佐藤優】自民党を操る米国の策謀 ~安倍“暴走”内閣(3)~」
「【佐藤優】自民党の全体主義的スローガン ~安倍“暴走”内閣(2)~」
「【佐藤優】安倍“暴走”内閣で窮地に立つ日本 ~安倍“暴走”内閣(1)~」
「【佐藤優】ある外務官僚の「嘘」 ~藤崎一郎・元駐米大使~」
「【佐藤優】自民党の沖縄差別 ~安倍政権の言論弾圧~」
「【書評】佐藤優『超したたか勉強術』」
「【佐藤優】脳の記憶容量を大きく変える技術 ~超したたか勉強術(2)~」
「【佐藤優】表現力と読解力を向上させる技術 ~超したたか勉強術~」
「【佐藤優】恐ろしい本 ~元少年Aの手記『絶歌』~」
「【佐藤優】集団的自衛権にオーストラリアが出てくる理由 ~日本経済の軍事化~」
「【佐藤優】ロシアが警戒する日本とウクライナの「接近」 ~あれかこれか~」
「【佐藤優】【沖縄】知事訪米を機に変わった米国の「安保マフィア」」
「【佐藤優】ハワイ州知事の「消極的対応」は本当か? ~沖縄~」
「【佐藤優】米国をとるかロシアをとるか ~日本の「曖昧戦術」~」
「【佐藤優】エジプトで「死刑の嵐」が吹き荒れている」
「【佐藤優】エリートには貧困が見えない ~貧困対策は教育~」
「【佐藤優】バチカンの果たす「役割」 ~米国・キューバ関係~」
「【佐藤優】日米安保(2) ~改訂のない適用範囲拡大は無理筋~」
「【佐藤優】日米安保(1) ~安倍首相の米国議会演説~」
「【佐藤優】日米安保(1) ~安倍首相の米国議会演説~」
「【佐藤優】外相の認識を問う ~プーチンからの「シグナル」~」
「【佐藤優】ヒラリーとオバマの「大きな違い」」
「【佐藤優】「自殺願望」で片付けるには重すぎる ~ドイツ機墜落~」
「【佐藤優】【沖縄】キャラウェイ高等弁務官と菅官房長官 ~「自治は神話」~」
「【佐藤優】戦勝70周年で甦ったソ連の「独裁者」 ~帝国主義の復活~」
「【佐藤優】明らかになったロシアの新たな「核戦略」 ~ミハイル・ワニン~」
「【佐藤優】北方領土返還の布石となるか ~鳩山元首相のクリミア訪問~」
「【佐藤優】米軍による日本への深刻な主権侵害 ~山城議長への私人逮捕~」
「【佐藤優】米大使襲撃の背景 ~韓国の空気~」
「【佐藤優】暗殺された「反プーチン」政治家の過去 ~ボリス・ネムツォフ~」
「【佐藤優】ウクライナ問題に新たな枠組み ~独・仏・露と怒れる米国~」
「【佐藤優】守られなかった「停戦合意」 ~ウクライナ~」
「【佐藤優】【ピケティ】『21世紀の資本』が避けている論点」
「【ピケティ】本では手薄な問題(旧植民地ほか) ~佐藤優によるインタビュー~」
「【佐藤優】優先順序は「イスラム国」かウクライナか ~ドイツの判断~」
「【佐藤優】ヨルダン政府に仕掛けた情報戦 ~「イスラム国」~」
「【佐藤優】ウクライナによる「歴史の見直し」をロシアが警戒 ~戦後70年~」
「【佐藤優】国際情勢の見方や分析 ~モサドとロシア対外諜報庁(SVR)~」
「【佐藤優】「イスラム国」が世界革命に本気で着手した」
「【佐藤優】「イスラム国」の正体 ~国家の新しいあり方~」
「【佐藤優】スンニー派とシーア派 ~「イスラム国」で中東が大混乱(4)~」
「【佐藤優】サウジアラビア ~「イスラム国」で中東が大混乱(3)~」
「【佐藤優】米国とイランの接近 ~「イスラム国」で中東が大混乱(2)~」
「【佐藤優】シリア問題 ~「イスラム国」で中東が大混乱(1)~」
「【佐藤優】イスラム過激派による自爆テロをどう理解するか ~『邪宗門』~」
「【佐藤優】の実践ゼミ(抄)」
「【佐藤優】の略歴」
「【佐藤優】表面的情報に惑わされるな ~英諜報機関トップによる警告~」
「【佐藤優】世界各地のテロリストが「大規模テロ」に走る理由」
「【佐藤優】ロシアが中立国へ送った「シグナル」 ~ペーテル・フルトクビスト~」
「【佐藤優】戦争の時代としての21世紀」
「【佐藤優】「拷問」を行わない諜報機関はない ~CIA尋問官のリンチ~」
「【佐藤優】米国の「人種差別」は終わっていない ~白人至上主義~」
「【佐藤優】【原発】推進を図るロシア ~セルゲイ・キリエンコ~」
「【佐藤優】【沖縄】辺野古への新基地建設は絶対に不可能だ」
「【佐藤優】沖縄の人の間で急速に広がる「変化」の本質 ~民族問題~」
「【佐藤優】「イスラム国」という組織の本質 ~アブバクル・バグダディ~」
「【佐藤優】ウクライナ東部 選挙で選ばれた「謎の男」 ~アレクサンドル・ザハルチェンコ~」
「【佐藤優】ロシアの隣国フィンランドの「処世術」 ~冷戦時代も今も~」
「【佐藤優】さりげなくテレビに出た「対日工作担当」 ~アナートリー・コーシキン~」
「【佐藤優】外交オンチの福田元首相 ~中国政府が示した「条件」~」
「【佐藤優】この機会に「国名表記」を変えるべき理由 ~ギオルギ・マルグベラシビリ~」
「【佐藤優】安倍政権の孤立主義的外交 ~米国は中東の泥沼へ再び~」
「【佐藤優】安倍政権の消極的外交 ~プーチンの勝利~」
「【佐藤優】ロシアはウクライナで「勝った」のか ~セルゲイ・ラブロフ~」
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「【佐藤優】スコットランド「独立運動」は終わらず」
「「森訪露」で浮かび上がった路線対立」
「【佐藤優】イスラエルとパレスチナ、戦いの「発端」 ~サレフ・アル=アールーリ~」
「【佐藤優】水面下で進むアメリカvs.ドイツの「スパイ戦」」
「【佐藤優】ロシアの「報復」 ~日本が対象から外された理由~」
「【佐藤優】ウクライナ政権の「ネオナチ」と「任侠団体」 ~ビタリー・クリチコ~」
「【佐藤優】東西冷戦を終わらせた現実主義者の死 ~シェワルナゼ~」
「【佐藤優】日本は「戦争ができる」国になったのか ~閣議決定の限界~」
「【ウクライナ】内戦に米国の傭兵が関与 ~CIA~」
「【佐藤優】日本が「軍事貢献」を要求される日 ~イラクの過激派~」
「【佐藤優】イランがイラク情勢を懸念する理由 ~ハサン・ロウハニ~」
「【佐藤優】新・帝国時代の到来を端的に示すG7コミュニケ」
「【佐藤優】集団的自衛権、憲法改正 ~ウクライナから沖縄へ(4)~ 」
「【佐藤優】スコットランド、ベルギー、沖縄 ~ウクライナから沖縄へ(3)~ 」
「【佐藤優】遠隔地ナショナリズム ~ウクライナから沖縄へ(2)~」
「【佐藤優】ユニエイト教会 ~ウクライナから沖縄へ(1)~ 」
明治と年号が改まり、翌2年に戊辰戦争が終結、版籍奉還。4年に廃藩置県の断行、日清修好条約の締結、岩倉使節団の派遣。【佐藤】
ことに岩倉使節団は、特命全権大使の岩倉具視以下、木戸孝允、大久保利通、伊藤博文といった維新政府の首脳陣が2年近くも米欧に外遊するという極めて特異なプロジェクトだった。【山内】
革命政権のトップが革命後まもなくこぞって国を空けること自体、あまり例がない。【佐藤】
それは重要な論点。ピョートル1世によるアムステルダムでの船大工修行など後進国のキャッチ・アップへの努力はあるが、岩倉使節団はまったく違う。使節団が帰国した明治6年、留守政府を仕切っていた西郷隆盛が朝鮮政策を巡って下野するという大問題もある。それが明治10年の西南戦争につながっていく。ここまで含めて岩倉使節団のインパクトを考えるべきだ。近代の形成という点で、明治14年までをひとつの区切りとする一部学界の見方に賛成したい。【山内】
この年、憲法制定論議をめぐって、立憲君主制のプロシア型を支持する伊藤博文と、議院内閣制のイギリス型を推す大隈重信が対立、大隈一派が政権から追放される(明治14年の政変)。この年は同時に、国会開設が約束され、国営企業が民営化に舵を切った年。財政面で松方デフレが始まり、金融の要となる日本銀行が開設された年でもある。【山内】
つまり、憲法、議会、中央銀行、民間経済といった近代的な国家の形がこの時期に立ち上がってくる。そこでもうひとつ重要なのは明治12の琉球処分。これは沖縄を日本の国家体制の中に取り込んだばかりでなく、その後の朝鮮、台湾、中国との関係とも深く結びついていく。【佐藤】
幕末以来の変革期から、内外政策に均衡のとれた安定期に入っていく。それが明治14年だ。【山内】
(2)岩倉使節団を論じるに、お金という切り口から入っていきたい。使節団は、使節46名、随員18名、留学生43名、総勢107名という大所帯で米国に8ヵ月、英国、仏国、独国、露国など欧州12ヵ国をまわり、インド、シンガポール、上海を通って1年10ヵ月後に帰国した。彼らはどのくらいの費用を使ったのか。当時の日本は、国家としてはまだ非常に弱い状態にあった。財政的にもとても余裕があると思えないのに、当時の資料によれば、使節団はほぼ青天井のお金を持っている印象なのだ。【佐藤】
使節団に同行した久米邦武の『特命全権大使米欧回覧実記』によると、およそ50万ドル。明治政府は明治4年に金本位制に基づく新貨条例を定め、かつての1両を1円、かつ1円=1米ドル、1ポンド=5円と定めている。米価などの推移をもとに貨幣価値を比較すると、おおざっぱにいって当時の1円は今の2万円、つまり50万ドル(当時)=50万円(当時)=100億円(現在)。当時の国家予算が3,309円だから1.5%をあてたことになる。【山内】
しかも、当時はまだ貨幣価値が浸透していないから、いまより皮膚感覚ではもっと大きなはず。岩倉使節団があれだけの仕事を残したのは、相当金をばらまいたからに違いない。いま東京に駐在する主要国のインテリジェンスオフィサーは一人あたりだいたい年間3千万円の予算枠を与えられている。基本的には3千万円を細かい決裁をとらずに個人の裁量で使っていい。特別なオペレーションの場合は、また別途与えられる。情報関係で一定の仕事をしようとすると、どうしても費用がかかってしまう。 【佐藤】
使節団がニューヨークに行ったとき、高杉晋作のいとこを名乗る南貞助の斡旋で米国人から投資話をもちかけられた。結局、金を預かっていた田中光顕が反対したので旅費の50万ドルは無事だったが、何人かは個人で投資して、資本主義の冷酷な詐欺・騙しの手口をいやというほど知らされた(笑)。久米邦武もその一人で、100ポンド(当時)=1,000万円(現在)をすってしまう。【山内】
個人レベルでもそれだけの金を用意していった、ということ。【佐藤】
使節団が留まったホテルは、ロンドンならマジェスティックホテルなど、ファーストではなくもうひとつ上のデラックス・ホテルに留まっている。【山内】
使節団に「安いホテルに泊まるとなめられるぞ」とアドバイスしてくれる人間がいたのだろう。これは外交の世界の常識だ。相手方は、泊まるホテル、使うレストラン、身なりなどで「格」を判定するから。【佐藤】
(3)使節団に進言したのは、幕末にすでに欧米でさまざまな交渉に当たった旧幕使節経験者だろう。福沢諭吉など幕末期に欧米へ3回行っている。先人たちが身にしみて経験した欧米の差別的な扱いが、岩倉使節団に生かされたのだろう。実際、書記官として派遣された田辺太一や福地源一郎(桜痴)、林薫三郎らの書記官の面々は、みな幕臣として海外を経験している。田辺は横浜鎖港を目指す文久4年の遣仏使節団の一員で、維新後も日清外交などで活躍、文久元年の遣欧使節団に参加した福地はジャーナリストとしても名を馳せ、慶応2年の英国留学組の林は後に日英同盟の立役者となる林薫(ただす)だ。幕府の分厚い人材が、明治政府を実務面でいかに支えたかをよくあらわしている。【山内】
□山内昌之×佐藤優「西郷と大久保はなぜ決裂したのか ~大日本史第2回~」(「文芸春秋SPECIAL」2016年夏号)
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「【佐藤優】反省より不快示すロシア ~五輪ドーピング問題~」
「【佐藤優】 改憲を語るリスクと語らないリスク ~改憲問題~」
「【佐藤優】+池上彰 エリートには貧困が見えない ~貧困対策は教育~」
「【佐藤優】スコットランドの動静と沖縄の日本離れの加速」
「【佐藤優】沖縄の全基地閉鎖要求・・・・を待ち望む中央官僚の策謀」
「【佐藤優】ナチスドイツ・ロシア・中国・北朝鮮 ~世界の独裁者~ 」
「【佐藤優】急進展する日露関係 ~安倍首相が取り組むべき宿題~」
「【佐藤優】日露首脳会談をめぐる外務省内の暗闘 ~北方領土返還の可能性~」
「【佐藤優】殺しあいを生む「格差」と「貧困」 ~「殺しあう」世界の読み方~」
「【佐藤優】一時中止は沖縄側の勝利だが ~辺野古新基地建設~」
「【佐藤優】情報のプロならどうするか ~「私用メール」問題~」
「【佐藤優】テロリズムに対する統一戦線構築 ~カトリックとロシア正教~」
「【佐藤優】北方領土「出口論」を安倍首相は訪露で訴えよ」
「【佐藤優】ラブロフ露外相の真意 ~日本政府が怒った「強硬発言」~」
「【佐藤優】プーチンが彼を「殺した」のか? ~英報告書の波紋~」
「【佐藤優】北朝鮮による核実験と辺野古基地問題」
「【佐藤優】サウジとイランと「国交断絶」の引き金になった男 ~ニムル師~」
「【佐藤優】矛盾したことを平気で言う「植民地担当相」 ~島尻安伊子~」
「【佐藤優】陰険で根暗な前任、人柄が悪くて能力のある新任 ~駐露大使~」
「【佐藤優】世界史の基礎を身につける法、決断力の磨き方」
「【佐藤優】国内で育ったテロリストは潰せない ~米国の排外主義的気運~」
「【佐藤優】沖縄が敗訴したら起きること ~辺野古代執行訴訟~」
「【佐藤優】知を身につける ~行為から思考へ~」
「【佐藤優】プーチンの「外交ゲーム」に呑まれて」
「【佐藤優】世界イスラム革命の無差別攻撃 ~日本でテロ(3)~」
「【佐藤優】日本でもテロが起きる可能性 ~日本でテロ(2)~」
「【佐藤優】『日本でテロが起きる日』まえがきと目次 ~日本でテロ(1)~」
「【佐藤優】小泉劇場と「戦後保守」・北方領土、反知性主義を脱構築」
「【佐藤優】【中東】「スリーパー」はテロの指令を待っている」
「【佐藤優】東京オリンピックに係るインテリジェンス ~知の武装・抄~」
「【佐藤優】分析力の鍛錬、事例、実践例 ~知の教室・抄(3)~」
「【佐藤優】武器としての教養、闘い方、対話の技術 ~知の教室・抄(2)~」
「【佐藤優】知的技術、情報を拾う・使う、知をビジネスに ~知の教室・抄(1)~」
「【佐藤優】多忙なビジネスマンに明かす心得 ~情報収集術(2)~」
「【佐藤優】多忙なビジネスマンに明かす心得 ~情報収集術(1)~」
「【佐藤優】日本のインテリジェンス機能、必要な貯金額、副業の是非 ~知の教室~」
「【佐藤優】世の中でどう生き抜くかを考えるのが教養 ~知の教室~」
「【佐藤優】『知の教室 ~教養は最強の武器である~』目次」
「【佐藤優】『佐藤優の実践ゼミ』目次」
「『佐藤優の実践ゼミ 「地アタマ」を鍛える!』」
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「【佐藤優】サハリン・樺太史、酸素魚雷と潜水艦・伊400型、飼い猫の数」
「【佐藤優】第2次世界大戦、日ソ戦の悲惨 ~知を磨く読書~」
「【佐藤優】すべては国益のため--冷徹な「計算」 ~プーチン~」
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「【佐藤優】進むEUの政治統合、七三一部隊、政治家のお遍路」
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「【佐藤優】同志社大学神学部 私はいかに学び、考え、議論したか」「【佐藤優】プーチンのメッセージ」
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「【佐藤優】沖縄・日本から分離か、安倍「改憲」を撃つ、親日派のいた英国となぜ開戦」
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「【佐藤優】琉球独立宣言、よみがえる民族主義に備えよ、ウクライナ日記」
「【佐藤優】『知の教室 ~教養は最強の武器である~』目次」
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「【佐藤優】「学力」の経済学、統計と予言、数学と戦略思考」
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「【佐藤優】戦勝70周年で甦ったソ連の「独裁者」 ~帝国主義の復活~」
「【佐藤優】明らかになったロシアの新たな「核戦略」 ~ミハイル・ワニン~」
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「【佐藤優】の実践ゼミ(抄)」
「【佐藤優】の略歴」
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「【佐藤優】世界各地のテロリストが「大規模テロ」に走る理由」
「【佐藤優】ロシアが中立国へ送った「シグナル」 ~ペーテル・フルトクビスト~」
「【佐藤優】戦争の時代としての21世紀」
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「【佐藤優】【沖縄】辺野古への新基地建設は絶対に不可能だ」
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「【佐藤優】ウクライナ東部 選挙で選ばれた「謎の男」 ~アレクサンドル・ザハルチェンコ~」
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「【佐藤優】スコットランド、ベルギー、沖縄 ~ウクライナから沖縄へ(3)~ 」
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