イスラム国(IS)との戦いに、全世界が動き出した。
国内世論の高まりもあって、オバマ・米国大統領は対イスラム国空爆の範囲をイラクからシリアまで拡大する方針を示した。
英国やオーストラリアが積極的関与の方針を示している。
このほか、複数の中東諸国が空爆実施を米国に申し出ているらしい。
翻って日本政府は、米国のシリア空爆準備に支持表明は行ったが、それ以上の支援には言及していない。
集団的自衛権の行使のための法律が未整備だし、集団安全保障も認められていない現状では、当たり前のことだ。
これは、来春の統一地方選まではタカ派的政策は封印し、地方選後に一気に集団的自衛権の法整備などに突き進む・・・・という安部の「戦略」とも整合している。
では、仮に集団的自衛権の行使を可能とする法整備が終わっていたら、どうなのか。
この戦争は、どう見ても米国にとっての自衛戦争ではない。
しかし、実際には、米国人2名の公開処刑があり、イスラム国が米国人を攻撃すると表明していることをもって、米国は「これは自衛戦争だ」と言うに違いない。
安部は、集団的自衛権行使容認閣議決定の際、「海外派兵は一般に許されないという従来からの原則もまったく変わらない」と述べた。
この発言からすると、今回のケースでも自衛隊の海外派兵はありえないように見える。しかし、安部の発言には「一般に」という言葉が入っている。つまり、最初から「例外」を前提としているのだ。
<例>米国から参戦要請があれば、安部は「日本の盟友である米国からの支援要請を拒絶すれば、日米の信頼が失われ、日本の安全保障に著しい支障が生じる」から「例外的に派兵を認める」と言い出すであろう。
実は安部は、これと同趣旨のことをすでに国会で述べている。
これでは、米国に要請されたら必ずそれに付き合うことになる。例外が原則に変貌してしまう。
安部は、こうやって参戦するであろう。
その戦いは泥沼化するであろう。
その間、米国とともに戦う国は、イスラム系過激派のテロに脅かされるであろう。むろん、日本も例外ではない。テロの対象として格好なのは、福島第一原発だ。いまの無防備な状態なら簡単に破壊できるし、破壊すれば東京は死の都市となり、東日本は壊滅する。
さらに、これまでの経験からして、イスラム国との戦いに勝利しても、また数年経てば、さらに進化したスーパーモンスターと呼ばれる新たなテロ組織が出てくることは必至だ。
アフリカでも、アルシャバブ(ソマリア)、ボコハラム(ナイジェリア)などが猛威をふるっている。
8月のナイロビ(ケニア)では、都市のスラムに夢も希望もない若者(失業者)が集まっていた。その周辺にモスクが建設される。イスラム教に罪はないが、そこでは、アルシャバブ(ソマリア)が「聖戦に参加すれば生活が保障される」と言って若者をリクルートしている。
先進国では高学歴の者もいるが、アフリカでも社会に失望した若者が勧誘されている。
テロという現象は、世界規模で起きている社会の病理現象の最終形態にすぎない。
つまり、軍事的対応だけではテロを解消できない。
若者に生きがいを感じさせることこそ、解決の本筋だ。
そのためには、各個人が貧困、病気、差別、格差などから解放され、自分の能力を遺憾なく発揮できる環境を作り上げていくことが不可欠だ。これは、平和学のいわゆる「積極的平和」だ。
安部がいう「積極的平和主義」はマユツバだ。
単なる「積極的『軍事』主義」でしかない。
「日本を取り戻す」と言うなら、安部には、今までの日本の平和主義こそ取り戻してもらいたい。「テロに怯える国、日本」にならないために。
□古賀茂明「イスラム国と集団的自衛権 ~官々愕々第124回~」(「週刊現代」2014年10月4日号)
↓クリック、プリーズ。↓
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【参考】
「【古賀茂明】「地方創生」は地方衰退への近道 ~虚構のアベノミクス~」
「【古賀茂明】【原発】原子力ムラの最終兵器」
「【古賀茂明】【原発】凍らない凍土壁に税金を投入し続けたわけ」
「【古賀茂明】【原発】勝俣恒久・元東電会長らの起訴 ~検察審査会~」
「【古賀茂明】安倍政権の武器輸出 ~時代遅れの「正義の味方」~」
「【古賀茂明】またも折れそうな第三の矢 ~医薬品ネット販売解禁の大嘘~」
「【古賀茂明】「1年後の夏」に向けた布石 ~集団的自衛権~」
「【古賀茂明】法人減税で浮き彫りにされる本当の支配者 ~官僚と経団連~」
「【古賀茂明】都議会「暴言問題」の真実 ~記者クラブによる隠蔽~」
「古賀茂明】集団的自衛権とワールドカップ」
「【古賀茂明】野党再編のカギは「戦争」」
「【古賀茂明】電力会社の歪んだ「競争」 ~税金をもらって商売~」
「【原発】【古賀茂明】規制委員会人事とメディアの責任」
「【古賀茂明】医師と官僚の癒着の構造」
「【古賀茂明】電力会社「値上げ救済」の愚 ~経営難は自業自得~」
「【古賀茂明】竹富町「教科書問題」の本質 ~原発推進教科書~」
「【古賀茂明】安部総理の「11本の矢」 ~戦争国家への道~」
「【古賀茂明】理研は利権 ~文科官僚~」
「【古賀茂明】「武器・原発・外国人」が成長戦略 ~アベノミクスの今~」
「【古賀茂明】マイナンバーを政治資金の監視に ~渡辺・猪瀬問題~」
「【古賀茂明】東電を絶対に潰さずに銀行を守る ~新再建計画~」
「【古賀茂明】「避難計画」なき原発再稼働」
「【古賀茂明】「建設バブル」の本当の問題 ~公共事業中毒の悪循環経済~ 」
「【古賀茂明】安倍政権の戦争準備 ~恐怖の3点セット~」
「【原発】【古賀茂明】利権構造が完全復活 ~東日本大震災3年~」
「【古賀茂明】アベノミクスの限界 ~笑いの止まらない経産省~」
「【古賀茂明】労働者派遣法改正前にすべきこと」
「【古賀茂明】時代遅れな、あまりにも時代遅れな ~安部政権のエネルギー戦略~」
「【古賀茂明】森元首相の二枚舌 ~オリンピックの政治的利用~」
「【古賀茂明】若者を虜にする「安部の詐術」 ~脱出の道は一つ~」
国内世論の高まりもあって、オバマ・米国大統領は対イスラム国空爆の範囲をイラクからシリアまで拡大する方針を示した。
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このほか、複数の中東諸国が空爆実施を米国に申し出ているらしい。
翻って日本政府は、米国のシリア空爆準備に支持表明は行ったが、それ以上の支援には言及していない。
集団的自衛権の行使のための法律が未整備だし、集団安全保障も認められていない現状では、当たり前のことだ。
これは、来春の統一地方選まではタカ派的政策は封印し、地方選後に一気に集団的自衛権の法整備などに突き進む・・・・という安部の「戦略」とも整合している。
では、仮に集団的自衛権の行使を可能とする法整備が終わっていたら、どうなのか。
この戦争は、どう見ても米国にとっての自衛戦争ではない。
しかし、実際には、米国人2名の公開処刑があり、イスラム国が米国人を攻撃すると表明していることをもって、米国は「これは自衛戦争だ」と言うに違いない。
安部は、集団的自衛権行使容認閣議決定の際、「海外派兵は一般に許されないという従来からの原則もまったく変わらない」と述べた。
この発言からすると、今回のケースでも自衛隊の海外派兵はありえないように見える。しかし、安部の発言には「一般に」という言葉が入っている。つまり、最初から「例外」を前提としているのだ。
<例>米国から参戦要請があれば、安部は「日本の盟友である米国からの支援要請を拒絶すれば、日米の信頼が失われ、日本の安全保障に著しい支障が生じる」から「例外的に派兵を認める」と言い出すであろう。
実は安部は、これと同趣旨のことをすでに国会で述べている。
これでは、米国に要請されたら必ずそれに付き合うことになる。例外が原則に変貌してしまう。
安部は、こうやって参戦するであろう。
その戦いは泥沼化するであろう。
その間、米国とともに戦う国は、イスラム系過激派のテロに脅かされるであろう。むろん、日本も例外ではない。テロの対象として格好なのは、福島第一原発だ。いまの無防備な状態なら簡単に破壊できるし、破壊すれば東京は死の都市となり、東日本は壊滅する。
さらに、これまでの経験からして、イスラム国との戦いに勝利しても、また数年経てば、さらに進化したスーパーモンスターと呼ばれる新たなテロ組織が出てくることは必至だ。
アフリカでも、アルシャバブ(ソマリア)、ボコハラム(ナイジェリア)などが猛威をふるっている。
8月のナイロビ(ケニア)では、都市のスラムに夢も希望もない若者(失業者)が集まっていた。その周辺にモスクが建設される。イスラム教に罪はないが、そこでは、アルシャバブ(ソマリア)が「聖戦に参加すれば生活が保障される」と言って若者をリクルートしている。
先進国では高学歴の者もいるが、アフリカでも社会に失望した若者が勧誘されている。
テロという現象は、世界規模で起きている社会の病理現象の最終形態にすぎない。
つまり、軍事的対応だけではテロを解消できない。
若者に生きがいを感じさせることこそ、解決の本筋だ。
そのためには、各個人が貧困、病気、差別、格差などから解放され、自分の能力を遺憾なく発揮できる環境を作り上げていくことが不可欠だ。これは、平和学のいわゆる「積極的平和」だ。
安部がいう「積極的平和主義」はマユツバだ。
単なる「積極的『軍事』主義」でしかない。
「日本を取り戻す」と言うなら、安部には、今までの日本の平和主義こそ取り戻してもらいたい。「テロに怯える国、日本」にならないために。
□古賀茂明「イスラム国と集団的自衛権 ~官々愕々第124回~」(「週刊現代」2014年10月4日号)
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【参考】
「【古賀茂明】「地方創生」は地方衰退への近道 ~虚構のアベノミクス~」
「【古賀茂明】【原発】原子力ムラの最終兵器」
「【古賀茂明】【原発】凍らない凍土壁に税金を投入し続けたわけ」
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