(1)“モノ言う知事”の突然の撤退表明の経緯
今回、新潟日報が報じている県出資会社の子会社によるフェリー購入問題の核心は、現場レベルが騙されたものと受け止めています。それでボロ船を掴まされて、出資金がその目的を果たさなくなる可能性がある。私は最終的な責任者です。責任はあります。ただ、だいぶ前から事実に反した記事が出ており、記者会見までやって記事の訂正を求め、八つも九つも訂正要請文書を出した。窓欄(新潟日報の投稿欄)の投書の回答も書いたので載せてくれといくら頼んでも載らない。会見で抗議しても効果がない状態になっています。
今回の知事選では、森民夫・長岡市長が県庁内で立候補表明をしましたが、庁舎の管理責任がある県広報担当職員が、会見を主催する県政記者クラブの代表幹事社である新潟日報社から立ち会いを拒否され、録音も禁じられたそうです(新潟日報は否定)。県庁の中ですよ? 一方で、会見後、対立候補の表明があったとしてコメントは求めてくる。表明の中身がわからないとコメントなどできませんよね。このような環境の中、選挙戦で県民の皆さんに訴えをきちんと届けるのは難しいと判断しました。私の言葉が県民に伝わるのであれば、立候補の撤回はなかったかもしれません。
(2)原発再稼働は「福島原発事故の検証と総括なしに議論できない」
県内には柏崎刈羽原発がありますが、ヨウ素剤の配布や地震・原発事故の複合災害時の避難などで不備は明らかです。現状の原子力災害対策指針で対処できない事態がいっぱいある。この問題を会見で訴えたり、政府も今春から対処を始めたところでした。
ところが、今回のフェリー購入問題が報道されて以来、原発に関する議論はかき消され、フェリー問題だけが議論の対象となってしまった。私が立候補したままでは県民の生命、安全、健康をどうするかを語る選挙にならない。2月に立候補表明したときは、これほどひどい環境ではありませんでしたが、知事選が近づくほど、そして私が勝つ可能性が高まるほど、状況が悪化しました。今後も何があるかわからない。
(3)別のメディアを通した訴えは
地元メディアは記者クラブ制度の中での調和を優先されるのか、概しておとなしくされています。県のホームページで見解を出しても、ほとんど県民に伝わらない。アクセス数はあっても3千ぐらい。やはり毎日約45万部を超える部数を持つ県紙、新潟日報の力は大きい。
皮肉なことに、今回「撤退する」と表明してから急に全国区のメディアから注目され、追いかけられ、ようやく問題も報じていただけるようになった。ローカルテレビの生放送にも出られました。「撤退を撤回して」との声もどんどん来ています。「頼むから戦ってくれ」と。ただこのまま選挙戦に突入したとしても、毎日、船の問題に関する記事が出るだけになってしまいませんか? 訴えが届かない中で、県職員も疲弊している。未明まで懸命に準備し、答弁しても、翌日には「県が虚偽答弁か」などと報道される状況です。私が知事であることで、周囲に余分な負荷もかかっている。
(4)原発の安全性などの問題
周囲に迷惑をかけてしまうので私はやらないほうがいいでしょう。まだ罠があるかもしれない。あれだけ原子力防災を一生懸命言っている知事のところで、ヨウ素剤の備蓄がされていなかった等、本来はあり得ない事態も起きているぐらいです。新潟日報は県では法で定められた福祉計画が上層部の意向も影響して作られていないと指摘しました。私は福祉サービスがこのままだと足りないので、検討しましょうよ、と確かに言いました。でもそれっきり上がってこなかった。仮に知事が「作るな」と指示したならば、ふつう職員は責任解除するために起案を回しますよ。今回はこういうことになったので作らないことにしますと、起案を回してハンコをとりますよ。それもやっていない。こういうことが次々起きる。そのたびに職員に負荷がかかり、本来議論すべきところも議論できない。一人だったら闘ったと思いますが、もう限界。周りの人を巻き込むのは避けたいと思う。
□「独白 泉田裕彦 立候補撤回の真相 新潟ホワイトアウト?」(「週刊朝日」 2016年9月16日)
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【参考】
記事「「原子力防災、選挙の争点に」 泉田・新潟知事、出馬撤回の理由語る」(朝日新聞デジタル 2016年9月8日)
今回、新潟日報が報じている県出資会社の子会社によるフェリー購入問題の核心は、現場レベルが騙されたものと受け止めています。それでボロ船を掴まされて、出資金がその目的を果たさなくなる可能性がある。私は最終的な責任者です。責任はあります。ただ、だいぶ前から事実に反した記事が出ており、記者会見までやって記事の訂正を求め、八つも九つも訂正要請文書を出した。窓欄(新潟日報の投稿欄)の投書の回答も書いたので載せてくれといくら頼んでも載らない。会見で抗議しても効果がない状態になっています。
今回の知事選では、森民夫・長岡市長が県庁内で立候補表明をしましたが、庁舎の管理責任がある県広報担当職員が、会見を主催する県政記者クラブの代表幹事社である新潟日報社から立ち会いを拒否され、録音も禁じられたそうです(新潟日報は否定)。県庁の中ですよ? 一方で、会見後、対立候補の表明があったとしてコメントは求めてくる。表明の中身がわからないとコメントなどできませんよね。このような環境の中、選挙戦で県民の皆さんに訴えをきちんと届けるのは難しいと判断しました。私の言葉が県民に伝わるのであれば、立候補の撤回はなかったかもしれません。
(2)原発再稼働は「福島原発事故の検証と総括なしに議論できない」
県内には柏崎刈羽原発がありますが、ヨウ素剤の配布や地震・原発事故の複合災害時の避難などで不備は明らかです。現状の原子力災害対策指針で対処できない事態がいっぱいある。この問題を会見で訴えたり、政府も今春から対処を始めたところでした。
ところが、今回のフェリー購入問題が報道されて以来、原発に関する議論はかき消され、フェリー問題だけが議論の対象となってしまった。私が立候補したままでは県民の生命、安全、健康をどうするかを語る選挙にならない。2月に立候補表明したときは、これほどひどい環境ではありませんでしたが、知事選が近づくほど、そして私が勝つ可能性が高まるほど、状況が悪化しました。今後も何があるかわからない。
(3)別のメディアを通した訴えは
地元メディアは記者クラブ制度の中での調和を優先されるのか、概しておとなしくされています。県のホームページで見解を出しても、ほとんど県民に伝わらない。アクセス数はあっても3千ぐらい。やはり毎日約45万部を超える部数を持つ県紙、新潟日報の力は大きい。
皮肉なことに、今回「撤退する」と表明してから急に全国区のメディアから注目され、追いかけられ、ようやく問題も報じていただけるようになった。ローカルテレビの生放送にも出られました。「撤退を撤回して」との声もどんどん来ています。「頼むから戦ってくれ」と。ただこのまま選挙戦に突入したとしても、毎日、船の問題に関する記事が出るだけになってしまいませんか? 訴えが届かない中で、県職員も疲弊している。未明まで懸命に準備し、答弁しても、翌日には「県が虚偽答弁か」などと報道される状況です。私が知事であることで、周囲に余分な負荷もかかっている。
(4)原発の安全性などの問題
周囲に迷惑をかけてしまうので私はやらないほうがいいでしょう。まだ罠があるかもしれない。あれだけ原子力防災を一生懸命言っている知事のところで、ヨウ素剤の備蓄がされていなかった等、本来はあり得ない事態も起きているぐらいです。新潟日報は県では法で定められた福祉計画が上層部の意向も影響して作られていないと指摘しました。私は福祉サービスがこのままだと足りないので、検討しましょうよ、と確かに言いました。でもそれっきり上がってこなかった。仮に知事が「作るな」と指示したならば、ふつう職員は責任解除するために起案を回しますよ。今回はこういうことになったので作らないことにしますと、起案を回してハンコをとりますよ。それもやっていない。こういうことが次々起きる。そのたびに職員に負荷がかかり、本来議論すべきところも議論できない。一人だったら闘ったと思いますが、もう限界。周りの人を巻き込むのは避けたいと思う。
□「独白 泉田裕彦 立候補撤回の真相 新潟ホワイトアウト?」(「週刊朝日」 2016年9月16日)
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【参考】
記事「「原子力防災、選挙の争点に」 泉田・新潟知事、出馬撤回の理由語る」(朝日新聞デジタル 2016年9月8日)