語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【佐藤優】総動員体制 ~対テロ(16)~

2018年05月01日 | ●佐藤優
 <われわれは、恐れるべきことを恐れ、恐れる必要のないことに怯えてはならないのである。最終的に、テロリストとの戦いに勝利するためには、国家だけでなく、個人もこの戦いに参加しなくてはならない。

  〈テロリズムに対する国民の回復力を向上させるには、戦いの根底にある利益の重要性に関する公衆の意識を向上させる必要がある。テロリズムに対する戦いの重責を--国家レベルと個人レベルの双方で--担う覚悟があるのは、異論のある問題と戦う必要性を確信し、戦いの正当性を信じている国民のみである。
  教育活動と並行して、政策決定者はテロ組織による心理戦を無力化する巧妙な周知キャンペーンを策定すべきである。政策決定者は、テロリストの脅威の真の重大さを提示し、テロ組織がメディアと心理戦の手段を巧みに利用していかに国民を操作しようとしているか、その方法とテロリストの戦略を説明する。さらにテロリズムに対処する国家の取り組みの一環としてのジレンマと困難を明示し、国民に対してはテロリズムとの戦いに自ら参加することの必要性を説明しなければならない。〉(本書325頁) 

 一種の国家と国民の総動員体制が、テロ対策では不可欠になるということだ。
 繰り返すが、テロ対策は、それぞれの国家と民族の文化に拘束される。日本の場合、ガノール氏が提唱するイスラエル型の処方箋をそのまま採用することはできないし、採用してはならないのである。ただし、本書からアナロジカル(類比的)にテロ対策について多くの事柄を学ぶことができる。(2018年1月4日脱稿)

□ボアズ・ガノール(佐藤優・監訳、河合洋一郎・訳)『カウンター・テロリズム・パズル 政策決定者への提言』(並木書房 2018)の冒頭、佐藤優「監訳者のことば--テロリズムに関する実用書兼実務書」の「(16)総動員体制」を引用

 【参考】
【佐藤優】「非合理な不安感」 ~対テロ(15)~
【佐藤優】マスメディアの自主規制 ~対テロ(14)~
【佐藤優】司法特別手続きと行政処分の拡大 ~対テロ(13)~
【佐藤優】尋問における「身体的圧力」 ~対テロ(12)~
【佐藤優】ゲリラ戦に関するハルカビの理論 ~対テロ(11)~
【佐藤優】壁と「鉄の屋根」というミサイル迎撃システム ~対テロ(10)~
【佐藤優】中立化(暗殺)工作 ~対テロ(9)~
【佐藤優】レッドラインを設けない ~対テロ(8)~
【佐藤優】インテリジェンスの重要性 ~対テロ(7)~
【佐藤優】テロ対策と国民感情 ~対テロ(6)~
【佐藤優】戦争犯罪とテロリズムの区別 ~対テロ(5)~
【佐藤優】テロリズムの定義 ~対テロ(4)~
【佐藤優】政治(国家)指導者の能力 ~対テロ(3)~
【佐藤優】アート(芸術)としてのインテリジェンス ~対テロ(2)~
【佐藤優】ボアズ・ガノール氏との出会い
【佐藤優】「監訳者のことば--テロリズムに関する実用書兼実務書」の目次

 


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