語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【言葉】年齢と時間意識

2019年03月13日 | 心理
 齢(とし)のせいか、ボヤっとしているうちに時が過ぎていく速度が早くなってきたような気がしてならない。

□宮脇俊三『旅は自由席』(新潮社、1991/のちに新潮文庫、1995)の「大前という終着駅」から引用

【佐藤優】短期的利益にしか関心がない人

2019年03月12日 | ●佐藤優
 ①ヤニス・バルファキス(関美和・訳)『父が娘に語る美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話。』(ダイヤモンド社 1,500円)
 ②竹中平蔵『平成の教訓 改革と愚策の30年』(PHP新書 900円)
 ③黒川伊保子『ヒトは7年で脱皮する 近未来を予測する脳科学』(朝日新書 750円)

 (1)①は、ギリシャで財務大臣を務めたことがある著者が現代経済について分かりやすく解説した好著だ。
 <古代ギリシャでは、公共の利益を考えられない人、つまり自分のことしか考えられない人は「イディオテス」と呼ばれた。
 「節度のある者は詩人になり、節度のない者はイディオテスになる」という古代アテネのことわざがある。古代ギリシャの文章を研究した18世紀のイギリス人学者は、ギリシャ語「イディオテス」を「愚か者」と訳した。市場社会は人間をそのような節度のない愚か者にしてしまう>
 というバルファキス氏の見解に、評者も全面的に賛成する。人間は社会的動物なので、個人の短期的利益にしか関心がない人が増えると、社会が弱体化し、経済も国家も弱くなる。

 (2)②は、日本の国家機構が持つ宿痾を端的に示している。
 <問題の一つは、役所に真の専門家がいないことである。日銀の専門性については触れたが、金融庁の幹部にも金融マーケットで取引した経験のある人はいない。官僚や日銀マンをエリート視する傾向は依然として強いが、同じ組織に長年いるだけでは、真の専門家は生まれない。
 サイバーセキュリティの問題を議論する国際会議があるが、各国からの出席者は博士号(Ph.D)を持つ人か有名なハッカー連中など。日本からの出席者は外務省の役人だから、議論についていけないという。こういうことを、私たちは改めなければいけない>
 と竹中氏は指摘するが、その通りだ。官僚が国家を運営するために必要かつ十分なスキルを身に付けられるような仕組みをつくらなくてはならない。現在も官僚には記憶力と情報処理能力の高い人材が集まっている。若手官僚を民間企業や大学に出向させて鍛えれば、短期間で事態はかなり改善すると思う。

 (3)③では、
 <2013年以降、「夢」の代わりに使用頻度を劇的に高めたのが「使命」ということばだ。新幹線の電光掲示板に流れる企業のCIにも、「使命」が増えた。「業界に○○を提供するのが、わが社の使命」のような。
 起業家も、「○○するのがぼくの夢です」とは、もう言わなくなった。今言うのであれば「○○するのが私の使命なのです」が◎。夢を口にする起業家には投資できないが、使命に燃える起業家には投資できる、そんな時代である>
 との指摘がなされている。もっとも、ほんとうにやりたいことがある人にとって、「夢」と「使命」はほぼ重なっている。要は本気で仕事に打ち込む人材を養成することだ。 

□佐藤優「短期的利益にしか関心がない人  ~知を磨く読書 第287回~」(「週刊ダイヤモンド」2019年3月16日号)

 【参考】
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【佐藤優】×芳沢光雄:数学、生き残るビジネスパーソンの必須スキル (1)
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【佐藤優】よりましなポピュリスト、「普通の人」が豹変するストーカー、規格外のトランプ米大統領
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【佐藤優】消費者金融のインテリジェンス
【佐藤優】官僚を信用していない国民
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【佐藤優】総合的思考と英国経験論哲学(2) ~川喜田二郎『発想法』~
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【佐藤優】なぜ神父は独身で牧師は結婚できるのか? 500周年の「革命」を知る ~マルティン・ルター『キリスト者の自由』~
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【佐藤優】生きた経済の教科書、バチカンというインテリジェンス機関、正しかった「型」の教育
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【佐藤優】後醍醐天皇の力の源 「異形の輩」とは--日本の暗部を突く思考
【佐藤優】実用的な会話術、ユーラシア地域の通史、宇宙ロケットを生んだ珍妙な思想
【佐藤優】キブ・アンド・テイクが成功の秘訣、キリスト教文化圏の悪と悪魔、理系・文系の区別を捨てよ
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【佐藤優】中東複合危機、金正恩の行動を読み解く鍵、「型破り」は「型」を踏まえて
【佐藤優】後世に名を残す村上春樹新作、気象災害対策の基本書、神学の処世術的応用
【佐藤優】地学の魅力、自分の頭で徹底的に考える、高等教育と短期の利潤追求
【佐藤優】日本人の特徴的な行動 ~日本礼賛ではない『ジャパン・アズ・ナンバーワン』~
【佐藤優】知を扱う基本的技法、ソ連人はあまり読まなかった『資本論』、自由に耐えるたくましさ
【佐藤優】後知恵上手が出世する? ~ビジネスに役立つ「哲学の巨人」読解法~
【佐藤優】トランプ政権の安保政策、「生きた言葉」という虚妄、キリスト教の開祖パウロ
【佐藤優】「暴君」のような上司のホンネとは? ~メロスのビジネス心理学~
【佐藤優】物まね芸人とスパイの共通点、新版太平記の完成、対戦型AIの原理
【佐藤優】トランプ側近が考える「恐怖のシナリオ」 ~日本も敵になる?~
【佐藤優】弱まる日本社会の知力、実践的ディベート術、受けるより与えるほうが幸い
【佐藤優】トランプの「会話力」を知る ~ワシントンポスト取材班『トランプ』~
【佐藤優】「不可能の可能性」に挑む、言語の果たす役割の大きさ、NYタイムズ紙コラムニストの人生論
【佐藤優】人生は実家の収入ですべて決まる? ~「下流」を脱する方法~
【佐藤優】ソ連崩壊後の労働者福祉軽視、現代も強い力を持つ観念論、孤独死予備軍と宗教
【佐藤優】米国のキリスト教的価値観、サイバー戦争論、日本会議
【佐藤優】『失敗の本質』/日本型組織の長所と短所
【佐藤優】世界を知る「最重要書物」 ~クラウゼヴィッツ『戦争論』~
【佐藤優】現代ロシアに関する教科書、ネコ問題はヒト問題、トランプ氏の顧問が見る中国
【佐藤優】日本には「物語の復権」が必要である ~反知性主義批判~
【佐藤優】サイコパス、新訳で甦る千年前の魂、長寿化に伴うライフスタイルの変化
【佐藤優】イラクの地政学、誠実なヒューマニスト、全ての人が受益者となる社会の構築
【佐藤優】外交に決定的に重要なタイミング、他人の気持ちになって考える力、科学と職人芸が融合した食品
【佐藤優】『ゼロからわかるキリスト教』の著者インタビュー ~「神」を論じる不可能に挑む~
【佐藤優】組織の非情さが骨身に沁みる ~新田次郎『八甲田山死の彷徨』~
【佐藤優】プーチン政権の本質、2017年の論点、ロシアと欧州
【佐藤優】国際人になるための教科書、ストレスが人間を強くする、日本に易姓革命はない
【佐藤優】ロシアでも愛された知識人の必読書 ~安部公房『砂の女』~
【佐藤優】トランプ当選予言の根拠、猫の絵本の哲学、人間関係で認知症を予防
【佐藤優】モンロー主義とトランプ次期大統領、官僚は二流の社会学者、プロのスパイの手口
【佐藤優】トランプを包括的に扱う好著、現代日本外交史、独自の民間外交
【佐藤優】デモや抗議活動のサブカルチャー化、グローバル化に対する反発を日露が共有、グローバル化に対する反発が国家機能を強化
【佐藤優】国際社会で日本が生き抜く条件、ルネサンスを準備したもの、理系情報の伝え方
【佐藤優】人生を豊かにする本、猫も人もカロリー過剰、度外れなロシア的天性
【佐藤優】テロリズム思想の変遷を学ぶ ~沢木耕太郎『テロルの決算』~
【佐藤優】住所格差と人生格差、人材育成で企業復活、教科書レベルの知識が必要
【佐藤優】数学嫌いのための数学入門、西欧的思考にわかりやすい浄土思想解釈、非共産主義的なロシア帝国
【佐藤優】ウラジオストク日本人居留民、辺野古移設反対を掲げる公明党沖縄県本部、偶然歴史に登場した労働力の商品化
【佐藤優】「21世紀の優生学」の危険、闇金ウシジマくんvs.ホリエモン、仔猫の救い方
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【佐藤優】訳・解説『貧乏物語 現代語訳』の目次
【佐藤優】「イスラム国」をつくった米大統領、強制収容所文学、「空気」による支配を脱構築
【佐藤優】トランプの対外観、米国のインターネット戦略、中国流の華夷秩序
【佐藤優】元モサド長官回想録、舌禍の原因、灘高生との対話
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【佐藤優】アフリカを収奪する中国、二種類の組織者、日本的ナルシシズムの成熟
【佐藤優】キリスト教徒として読む資本論 ~宇野弘蔵『経済原論』~
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【佐藤優】+宮家邦彦 世界史の大転換/常識が通じない時代の読み方
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【佐藤優】ペリー来航で草の根レベルの交流、沖縄差別の横行、美味なソースの秘密
【佐藤優】原油暴落の謎解き、沖縄を代表する詩人、安倍晋三のリアリズム
【佐藤優】18歳からの格差論、大川周明の洞察、米国の影響力低下
【佐藤優】天皇制を作った後醍醐、天皇制と無縁な沖縄 ~網野善彦『異形の王権』~


【保健】3月15日は世界睡眠デー ~大人もゆりかごが良いらしい~

2019年03月11日 | 医療・保健・福祉・介護
 (1)毎年、春分の日の前週の金曜日は、世界睡眠会議が定めた「世界睡眠デー」だ。
 良質の睡眠が心身の健康に必要なことはもう常識。ところが、日本の一般成人の5人に1人は不眠に悩み、およそ15%が日中に過剰な眠気を感じているという(厚生労働省調査)。
 経済協力開発機構(OECD)の2014年調査でも、日本人の平均睡眠時間は7時間43分と調査対象29カ国中の28位。それでも、この結果をみて「7時間以上眠れているなら、マシじゃないか」と思う人は少なくないだろう。

 (2)実際、同じく厚生労働省の国民健康・栄養調査(15年)では、ここ数年間で平均睡眠時間が6時間未満の人が増え、5時間未満の人も1割近いことが明らかになった。
 睡眠不足の理由は、仕事や家事、育児など生活上で避けられないことや健康状態など。シフト勤務や深夜残業、あるいは「ワンオペ育児」など働き方の問題が背後に見え隠れしている。
 睡眠時間を確保できないならば、質の確保はどうだろうか。最近は睡眠の質にこだわる高機能寝具が市販されている。この際、健康コストと割り切って購入してもいい。

 (3)さて、エビデンスに基づく寝具という点で注目したいのは「ゆりかご効果」だ。
 11年にフランスの研究者から報告されたもので、被験者は大人。就寝時にベッドを0.25ヘルツで振動させると無振動時と比較して、①眠るまでの時間が短縮、②脳を休める深い「ノンレム睡眠」の増加、③最も深い睡眠がより持続的にもたらされた、という。
 今年初めの続報では前述の効果が再現されたのに加え、記憶が改善する効果が認められた。睡眠不足で記憶力の低下が著しい睡眠障害患者や、高齢者向けベッドの開発に結びつく可能性がありそうだ。手っ取り早く寝具用のハンモックを利用するのもいいかもしれない。
 ちなみに0.25ヘルツの振動とは、左に右に10.5センチメートルほどゆっくり揺さぶられている感じ。電車内で眠れる人ならうなずけるはずだ。
 日本人が睡眠を確保している「ゆりかご」が、都心の電車というのは切ないけれど。

□井出ゆきえ(医学ライター)「3月15日は世界睡眠デー/大人もゆりかごが良いらしい ~カラダご医見番・ライフスタイル編 No.438~」(「週刊ダイヤモンド」2019年3月16日号)

 【参考】
【保健】ほどほどの炭水化物で長生き!? ~置換え分は植物性の食材で~
【保健】ダイエットの根っこは抗炎症? ~食物炎症指数(DII)とは~
【保健】抗菌薬=風邪薬ではありません ~正しく知って薬剤耐性菌を防ごう~
【保健】痛風は"ぜいたく病"ではない ~遺伝子変異の影響が大~
【保健】ヒトの知能は低下しつつある? ~遺伝要素より環境要因が関係~
【保健】花粉が飛び始めた ~昨夏の猛暑で大量飛散か~
【保健】筋トレ直後・食間vs食事中 ~プロテインを摂るタイミング~
【保健】受動喫煙と高血圧の関係 ~行政の対策次第でリスク低下~
【保健】テニスで約10年の延命 ~孤独と運動不足の解消効果?~
【保健】入浴で循環器ケアを ~睡眠不足ケア~
【保健】1日30品目神話は過去の話 ~米国心臓協会が声明~
【保健】10月10日は目の愛護デー ~中高年は眼の健診を~
【保健】身長と死亡リスクとの関係 ~高身長の男性はがんに注意~
【保健】飲んでも飲まなくても? ~アルコールと認知症リスク~
【保健】フクロウ族は死亡リスク ~朝型へどう切り替える?~
【保健】アトピー性皮膚炎の最新治療 ~健康な皮膚の「常在菌」を移植~
【保健】定年までに2型糖尿病を発症 ~30歳男性の3人に1人!?~
【保健】酸味はあなたを大胆にする ~ここ一番に梅干しを!!~
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【保健】資産損失ショックは健康リスク ~無資産なみに死亡率が上昇~
【保健】薬で顎が腐る? ~骨粗しょう症の人は要注意~
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【保健】子どものエナジードリンク摂取 ~米国スポーツ医学会が警告~
【保健】高血糖で認知機能が低下 ~健康的な生活が脳を守る~
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【保健】世界各国のパンを比較 ~意外に塩分が高いと判明~
【保健】片頭痛持ちは脳・心血管に注意 ~特に診断後の数年間は節制を要す~
【保健】高い平熱は1年死亡リスクと関連? ~男性も基礎体温を測ってみよう~
【保健】急性虫垂炎の治療は手術か、薬か? ~外科医が選ぶのは~
【保健】シリコンバレーの贖罪? ~元役員らがネット依存警鐘団体~
【保健】花粉症シーズン始まる ~今年の飛散量は多いか、少ないか~
【保健】トマト2個で肺機能を守る ~「前」喫煙者にも効果~
【保健】ナッツを食べて心疾患を予防 ~1日30グラムのお手軽健康法~
【保健】ついに薬もIoT ~胃液センサーで服薬管理~
【保健】犬を飼うと長生きする ~特に、一人暮らしにお勧め~
【保健】何年禁煙したら帳消しになるか ~女性は11年、男性は~
【保健】食後の血糖値スパイク ~カーボ・ラストでまったり改善~
【保健】米砂糖業界の苦々しいお話 ~不利なデータを半世紀も隠蔽?~
【保健】対人過敏は早く老ける? ~遺伝子レベルに影響~
【保健】慢性便秘に「考える人」 ~全国1,000万人のお悩みに~
【保健】ストレスでがんリスク上昇 ~ただし、男性に限る~
【保健】死亡率が最大5倍超に ~がん代替療法の選択で~
【保健】認知症と性格の関係 ~責任感は予防的に働く~
【保健】手洗い励行の季節 ~CDC推奨の方法は~
【保健】何を食べていましたか? ~認知良好な69~71歳の場合~
【保健】SNSに投稿した写真が鬱病診断の手がかりに?
【保健】もし妻が乳がんに罹患したら ~10月はピンクリボン月間~
【保健】ダイエット法の新説は最大18時間の絶食 ~朝・昼2食でBMI低下~
【保健】秋の登山でも水分補給を ~脱水係数で消費量を把握~
【保健】歯周病と全身疾患との関係
【保健】尿のpHで糖尿病の発症予測 ~酸性度が高いとリスクが上昇~
【保健】ビタミンB群の過剰摂取にご注意 ~男性の肺癌発症リスクが上昇~
【保健】長距離タイムは血液型しだいか ~影響は普段の練習に匹敵~
【保健】活動格差が肥満を招く ~72万人に対する調査で判明~
【保健】認知症の発症を予防する/10代から意識すべき9因子
【保健】10代の望まない妊娠を防ぐ ~長期間効果がある避妊法を選択~
【保健】糖尿病網膜症リスクを軽減 ~26メッツ・時/週以上の運動~
【保健】ヒアリにどう対処する? ~アナフィラキシーに注意~
【保健】鬱に効くボルダリング ~悲観的な自動思考を解消~
【保健】主食をしっかり食べると公平な判断ができる
【保健】梅雨明け~お盆は熱中症の季節 ~危ない人、予防と対応法~
【保健】塩分過剰で空腹に ~高血圧どころかメタボに~
【保健】満腹より栄養素に目を向けて ~収入が低い世帯は主食頼み~
【保健】だるいときほど階段昇降を ~カフェインより効果的~
【保健】成人ADHDの予備診断 ~六つの質問でクリーニング~
【保健】“ベンゾ系薬剤”に注意 ~常用量でも薬物依存を形成~
【保健】ギャンブル依存症ってなに? ~最新の定義は「プロセス依存」~
【保健】グルテンフリー食の功罪 ~結局、2型糖尿病に?~
【保健】アジア系2型糖尿病でも全がん死リスクが上昇
【保健】「男の更年期」改善効果に疑問符 ~テストステロン補充療法~
【保健】狩猟・採集民族のチマネの人々に学ぶ ~現代的な生活は健康リスク~
【保健】玄米でカロリー消費! ~30分程度の運動に匹敵~
【保健】1日あたり0.5合程度が上限 ~認知症を予防する飲酒量~
【保健】電子たばこで禁煙補助? ~英米で見解の相違~
【保健】二つの睡眠時無呼吸症候群 ~閉塞性か中枢性かで違い~
【保健】不安やうつはがんの初期症状? ~結腸・直腸、膵臓などで関連~
【保健】赤身肉は魚や鶏肉に置き換えて ~大腸憩室炎の発症リスクを軽減~
【保健】学会監修の防災セットが限定発売 ~心臓を守るリストも~
【保健】前立腺癌の手術で優れているのは ~ダ・ヴィンチvs人の手~
【保健】サウナで認知症リスクが低下 ~本場フィンランドの報告~
【保健】ポケモンGOで運動量up! ~仲間でワイワイの効果~
【保健】「過剰診断」か「見落とし」か ~マンモグラフィー検診のリスク~
【保健】悪性腫瘍ばりの「足の狭心症」 ~運動・喫煙で早期に対応を~
【保健】ワクチンを接種し損ねても ~インフル予防に補中益気湯~
【保健】高齢者は健康な生活、他方、若い世代は生活習慣に課題
【保健】子供の感染性急性胃腸炎に ~家庭でできる経口補水療法を~
【保健】痛風発作の薬は低用量で/米国のガイドラインが推奨
【保健】社会文化的伝統は肥満のもと ~年末~春は危険だらけ~
【保健】サルコペニア肥満で糖尿病!? ~筋肉減でインスリン分泌低下~
【保健】子どもの砂糖摂取量は1日25g以下に ~肥満症対策のため清涼飲料より水~
【保健】偽薬効果は学習効果? ~慢性的な腰痛が軽減~
【保健】中高年の性行動と認知機能
【保健】揚げ物はレジリエンス(心の弾力・回復力)に悪影響?
【保健】カロリー制限か運動療法か、どちらか一つじゃダメか?
【保健】遺伝子検査で再発リスクを評価 ~乳癌、抗癌剤治療の回避も~
【保健】慢性疲労症候群に関係か ~腸内細菌叢~
【保健】脳トレに有酸素運動をプラス ~認知機能と記憶力が向上~
【保健】標準体重なのに2型糖尿病?/BMIが「1」増加しただけで
【保健】受動喫煙は確実に癌、脳・心疾患、乳幼児突然死症候群を生む
【保健】嫌な気分の時こそ、動く ~うつ病治療に行動活性化療法~
【保健】孤独リスクも欧米化する?/宴会文化が廃れた後は
【保健】茶カテキンによる肝障害でノルウェーがサプリメント含有量規制へ
【保健】学んで4時間後に運動すると記憶が定着 ~記憶術~
【保健】飲む抗癌剤で生存率改善へ ~膵臓癌の再発を抑制~
【保健】恐竜も腫瘍を患う ~癌は進化の宿命~
【保健】高血圧にはモーツァルト ~安静に寝ているより効果的~
【保健】塞栓症リスクが低いピルは?/エストロゲン量と黄体ホルモンで違い
【保健】悲しいと食べすぎる ~食べ放題は幸せなときに~
【保健】「夏の蚊対策国民運動」 ~ジカ熱対策~
【保健】2型糖尿病発症にも民族差/アジア系は「BMI23」でリスク
【保健】ジャガイモに高血圧リスク/ノンオイルでも要注意 
【保健】ADHDに「ゲーム療法」?/2製品が臨床試験へ
【保健】男性は運送業、女性は医療・介護 ~メタボになりやすい業種~
【保健】健康生活の王道は「食」 ~食事バランスガイドと死亡率~
【保健】眼底検査で何がわかるか ~眼疾患だけではない~
【保健】弾性ストッキングが効果的 ~エコノミークラス症候群対策~
【保健】マインドフルネスで腰痛改善 ~認知行動療法と同じ効果~
【保健】歯磨きが心血管疾患を予防 ~毎食後で発症リスクを軽減~
【保健】ガン=生存時代の就労支援 ~治療と仕事の両立に指針~
【保健】糖尿病患者の降圧目標値 ~140mmHgでよい?~
【保健】睡眠不足でスナック菓子を渇望、体重増加 ~大麻並みの快楽
【保健】コーラ1缶で薬の吸収率がアップ ~抗癌剤の薬効~
【保健】その一言で妻の2型糖尿病リスクが減少 ~「先に寝ていて」~
【保健】先進国では認知症が減少? ~予防の鍵は生活習慣の改善~
【保健】生活設計は長期戦か短期決戦か ~癌の臓器別・病期別生存率~
【保健】イチゴとオレンジはEDに効く ~米国の研究報告~
【保健】高齢者の服薬適正化にGL ~容易な多剤併用に警鐘~
【保健】朝食抜きに脳卒中リスク 阪大など調査 大規模調査で1.18倍高
【保健】下剤は脳・心血管疾患リスク> ~背景にストレスや運動不足~
【保健】高脂肪食でシナプスが消失? ~動物実験~
【保健】2型糖尿病とフライド・ポテトとの関係 ~ポテトは煮物で~
【保健】世帯の所得と健康リスクの関係 ~食習慣と飲酒習慣~
【保健】抗がん剤の価格差は最大4倍以上 ~WHOの調査~
【保健】より危険な睡眠時無呼吸 ~脳・心疾患のリスク増~
【保健】初日の出の心身的効果 ~鬱対策は光を浴びて~
【保健】日本人肥満男性の食事と運動 ~糖尿病予防~
【保健】適性な「降圧目標値」 ~120未満で関連疾患が3割低下~
【保健】自由な裁量権でスリムに ~ストレスでメタボ~
【保健】目の老化には赤と緑と橙色 ~加齢黄斑変性症の予防~
【保健】早期発見のためにエコーと併用 ~乳がん検診~
【保健】骨折予防はカルシウムのほかに・・・・
【保健】前糖尿病患者は食習慣の改善を ~全国糖尿病週間~
【保健】糖質制限より脂質制限? ~体脂肪を減らす~
【保健】受動喫煙が歯周病リスクに ~ただし男性のみ~
【保健】貧乏ゆすりが命を救う? ~マナーより健康~
【保健】「高収入の勝ち組」の健康リスク? ~50歳以上の有害な飲酒~
【保健】照明用白色LEDのブルーライトは安全か?
【保健】目の愛護デー ~緑内障による失明を予防~
【保健】長時間労働は脳卒中リスク ~週41~48時間でも上昇~
【保健】ほぼ毎日食べると、死亡リスクが14%減少 ~唐辛子~
【保健】水族館でリラックス効果 ~血圧・心拍数に好影響~

【南雲つぐみ】牛乳豆腐

2019年03月11日 | 医療・保健・福祉・介護
 500ミリリットルの牛乳から茶碗半分ほどの牛乳豆腐ができる。作り方は、まず牛乳を鍋に入れ、沸騰しないよう温める。60度ぐらいになったらごく弱火にして、かきまぜながら酢、またはレモン汁を大さじ2杯半、少しずつ回し入れる。水分と乳成分が分離して塊ができ始めたら、火を止める。ザルにあけて、よく水分をこしたらできあがり。
 わさびじょうゆで食べてもいいし、カッテージチーズとしてサラダに入れてもいい。ジャムを乗せてデザートにしてもおいしい。
 牛乳豆腐はもともと酪農家が、牛乳造りに使わない初乳(分娩後数日間に分泌される乳汁)を使って作っているものだ。初乳は子牛にとって重要な免疫物質やビタミン類などを含み、それ以降の乳とは濃度も成分も異なる。食品衛生法では、分娩後5日間以内の乳の出荷を禁じている。
 子牛がたっぷり飲んだ後の初乳を搾り、低温で湯煎すると何も入れなくてもおぼろ豆腐のように固まるという。酪農家が作る牛乳豆腐を一度食べてみたい。

□南雲つぐみ(医学ライター)「牛乳豆腐 ~歳々元気~」(「日本海新聞」 2018年11月18日)を引用


【佐藤優】司馬遼太郎作品に見る対人諜報活動の極意

2019年03月10日 | ●佐藤優
★司馬遼太郎『梟の城』(新潮社文庫、1965)

 『梟の城』は、産経新聞記者時代の司馬遼太郎が宗教専門新聞『中外日報』に1958年4月から’59年2月まで連載した小説だ。連載時は「梟のいる都城」というタイトルだったが、’59年に講談社から書籍化された際に現代のタイトルに改められた。’59年下半期の第42回直木賞を受賞した。
 織田信長による1579(天正9)年の侵攻(伊賀の乱)によって、壊滅的打撃を受けた伊賀忍者は、各大名に雇われ、諜報や攪乱工作に従事していた。伊賀の乱から10年経った1591(天正19)年、伊賀忍者の葛籠(つづら)重蔵は、師匠の下柘植(しもつげ)次郎左衛門から太閤秀吉を暗殺せよとの指令を受ける。この動きを甲賀忍者が阻止しようとする。徳川家康が伊賀忍者を、豊臣方の石田三成が甲賀忍者を運営し、代理戦争が展開される。本書はミステリー小説の要素もあるので、読者から楽しみを奪わないようにネタバレを避けて論じるので、内容が断片的になることをお許し願いたい。
 梟について、豊臣家の重臣の玄以と甲賀忍者の洞玄がこんなやりとりをする。(中略)忍者は梟のように闇の世界を生きる。また、武士のような組織人ではなく、自らの腕だけで生きていくフリーランサーだ。だから、定期的に50貫文の支払いがなされる限り、雇い主との契約を誠実に履行する。
 この作品の中で重要な役割を役割を果たすのが甲賀の女忍者・小萩だ。(中略)スパイは男女にかかわらず、極端な美男美女には不向きだ。人々の記憶に定着しやすいからだ。同じ理由で、極端に醜い人も向かない。気配を消すことができる目立たない人がいい。同時に人の心をつかむ心理学に通暁していなくてはならない。小萩と重蔵は、21世紀のインテリジェンス戦争にも耐え抜くことができる資質を持った人たちだ。
 小萩は重蔵に恋してしまう。あるとき重傷を負った重蔵が小萩の館を訪ねてくる。小萩は忍者の職業的良心と恋愛感情の板挟みになって悩む。そのときに小萩の付き人で教育係の老齢の女忍者・楠が揺さぶりをかける。
 (中略)
 普段は優しい瞳をしているが、恫喝するときは三白眼になるというインテリジェンス・オフィサー(情報部員)を評者は何人か知っている。楠のような目で、他人に影響を与える人は、インテリジェンスの世界だけでなく永田町(政界)にもときどきいる。
 小萩は、カネを使って直情径行な関東出身の武士・渡辺慧(さとる)を操る。慧に気まずい思いをさせないために、カネを小萩が直には使わない。楠を通じて渡すようにしている。カネに支配される慧の心理が見事に描かれている。(中略)カネに無垢であった人ほど、自分がカネに支配されているという現実を認識したがらない。その結果、どんどん深みにはまっていくのである。こういう手法で大国のインテリジェンス機関は現在も協力者を獲得している。

□佐藤優「司馬遼太郎作品に見る対人諜報活動(ヒューミント)の極意とは ~ビジネスパーソンの教養講座 名著、再び 第116回~」(「週刊現代」2019年3月9日号)から引用

 【参考】
【佐藤優】「影の総理」の生涯
【佐藤優】安倍長期政権を維持する鍵
【佐藤優】少しだけしか成長しない時代
【佐藤優】外交交渉にも当てはまる暗号通貨の経済学
【佐藤優】人生設計と価値観の転換
【佐藤優】中学数学に欠損があるか ~数学、生き残るビジネスパーソンの必須スキル (3)~
【佐藤優】パーセントが扱えない大学生 ~数学、生き残るビジネスパーソンの必須スキル (2)~
【佐藤優】×芳沢光雄:数学、生き残るビジネスパーソンの必須スキル (1)
【佐藤優】旧海軍将校たちが語った特攻
【佐藤優】良い情報を手に入れる早道
【佐藤優】ヨーロッパの論理を知る手引
【佐藤優】生き残るための教養主義
【佐藤優】外交でも問われるセンスと勇気
【佐藤優】少年少女期をどう振り返るか
【佐藤優】社内試験に使える究極の実用書
【佐藤優】米軍の教本に基づく意思決定
【佐藤優】転職の際にも資本主義の内在的論理を踏まえたほうがいい
【佐藤優】宗教の危険性に対する警鐘
【佐藤優】元防衛事務次官の憲兵隊構想
【佐藤優】補助科学としての数学の活用
【佐藤優】再び革命運動が起きる可能性
【佐藤優】職場にもやもやしている人
【佐藤優】フェイクニュースへの耐性
【佐藤優】プラハの憂鬱
【佐藤優】生き残るための教養主義
【佐藤優】ヨーロッパの論理を知る手引
【佐藤優】現代AI研究者の間にはびこる“物活論的AI論”の限界
【佐藤優】構造化された沖縄差別
【佐藤優】気になり始めた人生の残り時間
【佐藤優】“ロシアの皇帝”プーチンの断片が明らかになった見事な「プロパガンダ」
【佐藤優】21世紀に甦る人間機械論
【佐藤優】自由貿易に対立する関税同盟
【佐藤優】五木寛之氏の小説論が明かされた学生たちとの対話
【佐藤優】文化は操作可能な道具か
【佐藤優】孤独な作家にとっての憩い
【佐藤優】社会情勢を反映した長時間労働対応の特捜部隊「カトク」の実態
【佐藤優】野蛮な帝国への抵抗文学
【佐藤優】不確実な社会に対応する
【佐藤優】21世紀でも色あせない歴史的名著の新訳 ~『仕事としての学問/仕事としての政治』~
【佐藤優】「知の巨人」らの対談3本 ~『世界と日本と日本人』~
【佐藤優】“日本語高”に資する作品
【佐藤優】資本主義の本質が現れる定年後の再就職市場
【佐藤優】社会を覆う自己責任論が生んだ「発達障害ブーム」
【佐藤優】あのテロ事件の一級の史料
【佐藤優】幕末期思想家の影響力の源泉
【佐藤優】欧米列強 血みどろの20世紀
【佐藤優】「日中関係が好転」の理由
【佐藤優】「読書力」によって「知の天井」を形成せよ ~松岡正剛の千夜千冊~
【佐藤優】ポピュリズムに流されずに国会をウオッチする姿勢、「小さな政府」だった室町幕府、欧州諸国の外交における植民地支配の遺産
【佐藤優】内外政事情の全体像、読解術、精神科受診へのハードルを低くする努力
【佐藤優】理解し合えない家族という共同体の本質 ~細部の描写が秀逸~
【佐藤優】江戸時代の「鎖国」は反カトリシズムだった ~『「日本」論 --東西の“革命児”から考える』~
【佐藤優】「三回読み」という技法 ~『国語ゼミ AI時代を生き抜く集中講義』~
【佐藤優】外務省主流派による画策、バランスがとれた社会評論、社会変革に与える教育の重要性
【佐藤優】『日本を蝕む「極論」の正体』
【佐藤優】日本の政治エリートの本音、キリスト教の日本的変容、西部邁の思想書
【佐藤優】思考の「小島」を作る法、鬱病対策、自決・考
【佐藤優】哲学者でもある筒井康隆、福祉から排除された人が刑務所に、神学からの教育論
【佐藤優】「アイロニー」と「ユーモア」の弁証法的技法で「真の学知」を手に入れよ
【佐藤優】弱者の「疑似福祉施設」 ~『刑務所しか居場所がない人たち』~
【佐藤優】親の収入・学歴と、子どもの学力の関係 ~いま生きる「資本論」(1)~
【佐藤優】日本社会の矛盾が詰まった「団塊ジュニア」はこんな苦労を強いられている
【佐藤優】修験道の論理、教育改革、東京の問題を解決する商品
【佐藤優】「書く」鍛錬が現代社会で自由になるための方法 ~『小論文 書き方と考え方』~
【佐藤優】コラム傑作選、ロシアのことがよく分かる小説家、官僚の考現学
【佐藤優】『思考法 教養講座「歴史とは何か」』の「新書版まえがき」
【佐藤優】堕ちたエリート、小説という代理経験 ~『桜の森の満開の下』~
【佐藤優】うつ状態を克服する道、知識人の団結、医学部の現状
【佐藤優】正しいことをしていると思い込む者の暴力、組織が個人に責任をいかにかぶせるか、投獄経験を描いた自伝の傑作
【佐藤優】トランプvs.インテリジェンス・コミュニティー ~『炎と怒り』(その2)~ 
【佐藤優】日本はトランプ大統領に命運を託せるのか? ~マイケル・ウォルフ『炎と怒り』~ 
【佐藤優】収入格差と教育環境、女性の負担が却って増す懸念、生命医科学と倫理
【佐藤優】英EU離脱と北アイルランド、文科省が進める教育改革に対する批判的検討、イスラエル独自のミサイル防衛システム

【佐藤優】職場ハラスメントを生む土壌、外務官僚の機密費疑惑、キリスト教の教義と思想の基本事項
【佐藤優】われわれの思考の鋳型、沖縄をめぐる知的に富む対談、高校で全科目を学ぶと社会に出てから役立つ
【佐藤優】文語訳聖書 ~キリスト教の魅力は死生観にある~
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【佐藤優】よりましなポピュリスト、「普通の人」が豹変するストーカー、規格外のトランプ米大統領
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【佐藤優】宗教改革の物語 ~近代、民族、国家の起源~
【佐藤優】カネとの付き合い方の秘訣、野外で生きる雑種ネコの魅力、前科者に冷たい日本社会
【佐藤優】着目すべき北極海の重要性、日本の政治文化に構造的に組み込まれている「甘え」、文明論と地政学を踏まえた時局評論
【佐藤優】リーダーが知るべき文明観、資本主義後の社会構想、刑務所暮らし経験者の本音
【佐藤優】地図から浮かぶ歴史のリアル、平成不況は金融政策のミス、実証的データに基づく貧困対策
【佐藤優】ケータイによる日本語の乱れ、翻訳の技術、ロシア人の内在的論理
【佐藤優】武蔵中高の教育、ルター宗教改革の根幹、獣医師にもっと競争原理を導入
【佐藤優】社会に活力をもたらす政策、具体的生活の上に立つ民族国家、開発至上主義が破壊する永久凍土の生態系
【佐藤優】日本のフリーメイソン陰謀論、ユニークな働き方改革、自衛隊元陸将によるリーダーシップ論
【佐藤優】ハプスブルク帝国史の「もし」、最新の進化論、神童の軌跡
【佐藤優】知識を本当に身に付けるには、テロ戦争におけるドローンの重要な役割、帰宅恐怖症
【佐藤優】北朝鮮との緊張の高まりに対して必要な姿勢、時間管理と量子力学、時間がかかるのは損
【佐藤優】川喜田二郎『発想法』 ~総合的思考と英国経験論哲学~
【佐藤優】日本の思想状況の貧しさ、頑丈にできている戦闘機、東方正教会に関する概説書
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【佐藤優】手ごわいフェイクニュース、国を動かす政治エリートの意志、欧州内部における紛争
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【佐藤優】就活におけるネット社会の落とし穴、裁判官の資質、象徴天皇制と生前退位問題
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【佐藤優】財政から読みとく日本社会、ラジオの魅力、高校レベルの基礎の大切さ
【佐藤優】嫌韓本と一線を画す韓国ルポ、セカンドパートナーの実態、日本人の死生観
【佐藤優】人間にとって「影」とは何か ~シャミッソー『影をなくした男』~
【佐藤優】文部省の歴史と現状、経済実務家のロシア情勢分析、中国の対日観
【佐藤優】学習効果が上がる「入門書」、応用地政学で見る日本、権力による輿論のコントロールを脱構築
【佐藤優】大川周明『復興亜細亜の諸問題』 ~イスラーム世界のルール~
【佐藤優】女性と話すのが怖くなる本、ネット情報から真実をつかみ取る技法、ソ連とロシアに共通する民族問題
【佐藤優】ヨーロッパ宗教改革の本質、相手にわかるように説明するトレーニング、ロシア・エリートの欧米観
【佐藤優】なぜ神父は独身で牧師は結婚できるのか? 500周年の「革命」を知る ~マルティン・ルター『キリスト者の自由』~
【佐藤優】政界汚職を描いた古典 ~石川達三『金環蝕』~
【佐藤優】生きた経済の教科書、バチカンというインテリジェンス機関、正しかった「型」の教育
【佐藤優】誰かを袋だたきにしたい欲望、正統派の書評家・武田鉄矢、追い込まれつつある正社員
【佐藤優】発達障害とどう向き合うか、アドルノ哲学の知的刺激、インターネットと「情報犯罪」
【佐藤優】後醍醐天皇の力の源 「異形の輩」とは--日本の暗部を突く思考
【佐藤優】実用的な会話術、ユーラシア地域の通史、宇宙ロケットを生んだ珍妙な思想
【佐藤優】キブ・アンド・テイクが成功の秘訣、キリスト教文化圏の悪と悪魔、理系・文系の区別を捨てよ
【佐藤優】企業インテリジェンス小説 ~梶山季之『黒の試走車』~
【佐藤優】中東複合危機、金正恩の行動を読み解く鍵、「型破り」は「型」を踏まえて
【佐藤優】後世に名を残す村上春樹新作、気象災害対策の基本書、神学の処世術的応用
【佐藤優】地学の魅力、自分の頭で徹底的に考える、高等教育と短期の利潤追求
【佐藤優】日本人の特徴的な行動 ~日本礼賛ではない『ジャパン・アズ・ナンバーワン』~
【佐藤優】知を扱う基本的技法、ソ連人はあまり読まなかった『資本論』、自由に耐えるたくましさ
【佐藤優】後知恵上手が出世する? ~ビジネスに役立つ「哲学の巨人」読解法~
【佐藤優】トランプ政権の安保政策、「生きた言葉」という虚妄、キリスト教の開祖パウロ
【佐藤優】「暴君」のような上司のホンネとは? ~メロスのビジネス心理学~
【佐藤優】物まね芸人とスパイの共通点、新版太平記の完成、対戦型AIの原理
【佐藤優】トランプ側近が考える「恐怖のシナリオ」 ~日本も敵になる?~
【佐藤優】弱まる日本社会の知力、実践的ディベート術、受けるより与えるほうが幸い
【佐藤優】トランプの「会話力」を知る ~ワシントンポスト取材班『トランプ』~
【佐藤優】「不可能の可能性」に挑む、言語の果たす役割の大きさ、NYタイムズ紙コラムニストの人生論
【佐藤優】人生は実家の収入ですべて決まる? ~「下流」を脱する方法~
【佐藤優】ソ連崩壊後の労働者福祉軽視、現代も強い力を持つ観念論、孤独死予備軍と宗教
【佐藤優】米国のキリスト教的価値観、サイバー戦争論、日本会議
【佐藤優】『失敗の本質』/日本型組織の長所と短所
【佐藤優】世界を知る「最重要書物」 ~クラウゼヴィッツ『戦争論』~
【佐藤優】現代ロシアに関する教科書、ネコ問題はヒト問題、トランプ氏の顧問が見る中国
【佐藤優】日本には「物語の復権」が必要である ~反知性主義批判~
【佐藤優】サイコパス、新訳で甦る千年前の魂、長寿化に伴うライフスタイルの変化
【佐藤優】イラクの地政学、誠実なヒューマニスト、全ての人が受益者となる社会の構築
【佐藤優】外交に決定的に重要なタイミング、他人の気持ちになって考える力、科学と職人芸が融合した食品
【佐藤優】『ゼロからわかるキリスト教』の著者インタビュー ~「神」を論じる不可能に挑む~
【佐藤優】組織の非情さが骨身に沁みる ~新田次郎『八甲田山死の彷徨』~
【佐藤優】プーチン政権の本質、2017年の論点、ロシアと欧州
【佐藤優】国際人になるための教科書、ストレスが人間を強くする、日本に易姓革命はない
【佐藤優】ロシアでも愛された知識人の必読書 ~安部公房『砂の女』~
【佐藤優】トランプ当選予言の根拠、猫の絵本の哲学、人間関係で認知症を予防
【佐藤優】モンロー主義とトランプ次期大統領、官僚は二流の社会学者、プロのスパイの手口
【佐藤優】トランプを包括的に扱う好著、現代日本外交史、独自の民間外交
【佐藤優】デモや抗議活動のサブカルチャー化、グローバル化に対する反発を日露が共有、グローバル化に対する反発が国家機能を強化
【佐藤優】国際社会で日本が生き抜く条件、ルネサンスを準備したもの、理系情報の伝え方
【佐藤優】人生を豊かにする本、猫も人もカロリー過剰、度外れなロシア的天性
【佐藤優】テロリズム思想の変遷を学ぶ ~沢木耕太郎『テロルの決算』~
【佐藤優】住所格差と人生格差、人材育成で企業復活、教科書レベルの知識が必要
【佐藤優】数学嫌いのための数学入門、西欧的思考にわかりやすい浄土思想解釈、非共産主義的なロシア帝国
【佐藤優】ウラジオストク日本人居留民、辺野古移設反対を掲げる公明党沖縄県本部、偶然歴史に登場した労働力の商品化
【佐藤優】「21世紀の優生学」の危険、闇金ウシジマくんvs.ホリエモン、仔猫の救い方
【佐藤優】大学にも外務省にもいる「サンカク人間」 ~『文学部唯野教授』~
【佐藤優】訳・解説『貧乏物語 現代語訳』の目次
【佐藤優】「イスラム国」をつくった米大統領、強制収容所文学、「空気」による支配を脱構築
【佐藤優】トランプの対外観、米国のインターネット戦略、中国流の華夷秩序
【佐藤優】元モサド長官回想録、舌禍の原因、灘高生との対話
【佐藤優】孤立主義の米国外交、少子化対策における産まない自由、健康食品のウソ・ホント
【佐藤優】アフリカを収奪する中国、二種類の組織者、日本的ナルシシズムの成熟
【佐藤優】キリスト教徒として読む資本論 ~宇野弘蔵『経済原論』~
【佐藤優】未来の選択肢二つ、優れた文章作法の指南書、人間が変化させた生態系
【佐藤優】+宮家邦彦 世界史の大転換/常識が通じない時代の読み方
【佐藤優】人びとの認識を操作する法 ~ゴルバチョフに会いに行く~
【佐藤優】ハイブリッド外交官の仕事術、トランプ現象は大衆の反逆、戦争を選んだ日本人
【佐藤優】ペリー来航で草の根レベルの交流、沖縄差別の横行、美味なソースの秘密
【佐藤優】原油暴落の謎解き、沖縄を代表する詩人、安倍晋三のリアリズム
【佐藤優】18歳からの格差論、大川周明の洞察、米国の影響力低下
【佐藤優】天皇制を作った後醍醐、天皇制と無縁な沖縄 ~網野善彦『異形の王権』~


【佐藤優】「劣位」の元キャリアの特徴  ~官僚の掟(8)~

2019年03月09日 | ●佐藤優
 総合職の場合、国家公務員試験の成績結果は、府省に入るときには大きな意味を持ちますが、いったん入れば、その成績が直接的に出世に影響することはありません。こうした「ハンモックナンバー」(海軍兵学校の卒業年次)を使う役所はまずないと思います。だれの部下になったかという「上司のライン」が出世の決め手になるから、その意味において、日本の官僚組織は、陸軍の伝統を引いていると言えます。海軍の卒業成績は一生ついてくるけれど、陸軍の場合は関係ありません。
 「キャリア」「ノンキャリア」の身分差を強調する「元官僚」を売りにしている書籍をときどき見かけますが、私から言わせると、仕事のできない「劣位」なキャリアが自分を大きくみせようとして言っているか、あるいは、よほど組織に恨みをもって辞めたノンキャリアが言っていると見て間違いありません。ふつうに霞が関で仕事をする場合、「棲み分けの論理」が働いているので、それぞれの人が満足できる態勢ができあがっていると言えます。ですから、まともな官僚であったならば、自分がどんな仕事をしてきたのか、それを成し遂げたことで国の役に立つことができたのか、当初の志はなぜ折れたのか、そうしたことが論理的に説得力をもって書けるはずです。国益を判断の軸として仕事をしてきたつもりの私からすると、そうした中身のない空疎な「官僚論」など読むだけ時間の無駄になります。

□佐藤優『官僚の掟 競争なき「特権階級」の実態』 (朝日新書、2018)の「第1章 こんなに統治しやすい国はない」の「「劣位」の元キャリアの特徴」を引用

 【参考】
【佐藤優】どの上司に評価されたか  ~官僚の掟(7)~
【佐藤優】官僚は年次がすべて  ~官僚の掟(6)~
【佐藤優】官僚に「落選」はない  ~官僚の掟(5)~
【佐藤優】ソ連官僚の鉄のモラル   ~官僚の掟(4)~
【佐藤優】競争の土俵に上がらない  ~官僚の掟(3)~
【佐藤優】自殺の大蔵、汚職の通産、不倫の外務 ~官僚の掟(2)~
【佐藤優】『官僚の掟』の目次



【佐藤優】どの上司に評価されたか  ~官僚の掟(7)~

2019年03月08日 | ●佐藤優
 とはいえ、同じ年次に入省した人同士の競い合いはあります。でもそれが起きるのは、10年から15年後ぐらいのことです。最初の10年、15年ぐらいは、横並びで差がつきません。課長補佐ぐらいまではほぼ横並びです。しかも、その競い合いに参加できるのは、年次の中でもさらに少数にしぼられた一部の人に限定されます。
 要するに、役所の外側に対しては団結して、ある時期までは年次とともに「みんな一緒」の穏やかな世界。それがある時期から激しい競争が始まります。
 そこでの勝ち負けについては、同期が一歩先に行ったらみんな喜んで退く、という文化があります。その「細い道」を通れた人、つまり、晴れて課長になった人は、さらなる上に昇っていくための熾烈な本格レースが始まります。なぜなら、課長になってようやく政治家との関係が出てくるからです。そこから急に「よーい、ドン」というレースが始まるのです。
 ここで頭一つ抜けるコツは何か。もちろん、そつなく仕事をこなし、政治家との関係をうまく築き、省に有利に政策を進めることであるのは言うまでもありません。しかし有能ぞろいの官僚です。結局、そこで差がつくのは「上司からの評価」です。そこで認められた人だけがより上に行けるわけですが、そのポイントは「誰に認められるか」にある。要するに、「どの上司に評価されたか」ということに尽きます。身も蓋もないような話ですが、「芽のある上司のライン」に乗ることができれば、上に行けるのです。
 課長までなら部下も含めた評価になります。けれども霞が関の官僚は、課長職より上になると個室を持ちます。裏返して言うと、日常的に見ている部下という「実働部隊」がいなくなります。
 この点、財務省の力の構造は、他の省とだいぶ違って、課長より一段下の主査が、他の省の課長クラスを相手にします。実質的に予算の査定をするため圧倒的な力を持っているので、財務省の場合、昔の憲兵に似ていると言えるかもしれません。憲兵は自分より一階級上まで取り調べることができました。憲兵の兵長であっても、伍長を取り調べることができたのと同じです。
 もう一つ、特殊な省庁が、警察庁と防衛省です。この二つに入れば、最初から「超幹部」扱いです。というのは、両方とも25万~30万人ずつ抱える、中央省庁の中では大所帯ですから(警察は地方公務員と国家公務員で構成される)、20代のころから、警察庁では数百人、防衛省だと千人以上を束ねることになる。このとき重要な資質は何かといったら、責任が取れる人物かどうかでしょう。両組織とも、国家の中において正当に武器を使うことが許された役所です。ということは、必ず一定のリスクがあります。どうしたって事故が起きるものですから、そのときの責任の取り方が問われるのです。部下がとんでもない事件、事故を起こした場合は、どんなに能力があっても直属の上司は責任を取らされるので上には行けなくなる。だからある程度、「人事は運だ」という感覚が若いころからつくのだと思います。

□佐藤優『官僚の掟 競争なき「特権階級」の実態』 (朝日新書、2018)の「第1章 こんなに統治しやすい国はない」の「どの上司に評価されたか」を引用

 【参考】
【佐藤優】官僚は年次がすべて  ~官僚の掟(6)~
【佐藤優】官僚に「落選」はない  ~官僚の掟(5)~
【佐藤優】ソ連官僚の鉄のモラル   ~官僚の掟(4)~
【佐藤優】競争の土俵に上がらない  ~官僚の掟(3)~
【佐藤優】自殺の大蔵、汚職の通産、不倫の外務 ~官僚の掟(2)~
【佐藤優】『官僚の掟』の目次



【佐藤優】「影の総理」の生涯

2019年03月07日 | ●佐藤優
★菊池正史『「影の総理」と呼ばれた男 野中広務 権力闘争の論理』(講談社現代新書、2018)

 小淵恵三政権で内閣官房長官、森喜朗政権で自民党幹事長をつとめ、政界に強い影響力をもった野中広務氏(1925~2018年)に関する優れた評伝だ。野中氏は保守政治家であるが、本気で平和を希求した人物だった。
 (中略)
 日本が戦争に巻き込まれることがあってはならないという信念から、野中氏は北方領土問題に関しても、四島一括返還にこだわるべきでなく、柔軟に対処したほうがいいと考えていた。野中氏が官房長官、自民党幹事長をつとめていた時期に、評者は2~3ヵ月に1回、非公式に会見していた。当時、野中氏は高輪の衆議院議員宿舎に住んでいた。宿舎に戻り「今日はもう部屋から出ない」と言って、SP(警護官)を帰した後、高輪プリンスホテルのレストランにやってきて、個室で評者と意見交換をした。北方領土交渉やロシア内政について、さまざまな質問をされた。野中氏と親しい鈴木宗男氏が、北方領土問題に熱心に取り組んでいたからだ。野中氏は鈴木氏から得た情報を、評者を通じてダブルチェックしていたのだ。その点では、最側近である鈴木氏のことも完全には信じない猜疑心の強い政治家だった。
 菊池正史氏は、野中氏の政治的最大の功績は、自民党と公明党の連立を成功させたことにあると評価する。
 (中略)
 評者も同じ見方だ。もっとも自公連立をめぐっては、鈴木氏が野中氏以上に水面下の根回しを行った。鈴木氏の下支えがなければ、野中氏による自公連携は成立しなかったと思う。
 小淵政権下で、野中氏は事実上、首相と同程度の政治力を持つに至っていた。2000年4月2日に小淵氏が脳梗塞で倒れ、再起不能になったときも、後継が森喜朗氏になる流れを作る上でも野中氏が重要な役割を果たした。森首相の下で、北方領土交渉が前進した背後にも野中氏の支援があった。
 2001年3月に森氏が辞意を固めた後、野中首班の可能性があった。
 (中略)
 野中氏が急速に権力を握ったことに抵抗感を強く示したのが、橋本龍太郎元首相だった。当時、鈴木氏が「橋本さんは、あれだけ野中先生にお世話になっていながら、どうして野中政権が誕生するのを邪魔するのか」と述べていたことが評者の記憶に残っている。(中略)
 あのとき野中広務政権が成立していたら、鈴木氏は外務大臣か官房長官に就任したであろう。森氏がロシアのプーチン大統領に対して行った秘密提案の延長線上で、歯舞群島と色丹島は2~3年で日本に返還されていた。かなりの確率で、国後島と択捉島もそれから5~10年くらいで日本に返還されていたと思う。野中政権が幻に終わったことは、北方領土問題解決の観点からも残念だった。
 反野中の小泉純一郎氏が首相となり、鈴木氏を敵視する田中真紀子氏が外務大臣になった。そのため、鈴木氏に近い外務官僚とみなされた評者も政争に巻き込まれることになった。野中政権が成立していたならば、評者が東京地検特捜部に逮捕されることもなかったであろう。もっとも、そうなれば作家・佐藤優も誕生しなかった。

□佐藤優「平和を希求し権力闘争に生きた「影の総理」の生涯 ~ビジネスパーソンの教養講座 名著、再び 第117回~」(「週刊現代」2019年3月16日号)から引用

 【参考】
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【佐藤優】×芳沢光雄:数学、生き残るビジネスパーソンの必須スキル (1)
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【佐藤優】訳・解説『貧乏物語 現代語訳』の目次
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【佐藤優】アフリカを収奪する中国、二種類の組織者、日本的ナルシシズムの成熟
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【佐藤優】未来の選択肢二つ、優れた文章作法の指南書、人間が変化させた生態系
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【佐藤優】官僚は年次がすべて  ~官僚の掟(6)~

2019年03月06日 | ●佐藤優
 なぜ、官僚の世界はそれほどまでに「競争なき世界」なのでしょうか。
 答えを先に言ってしまうと、官僚にとっては年次がすべてになるからです。
 とくにキャリアは入省が一年違えば、天国と地獄と言われます。体育会の先輩後輩どころの差ではなく、まさに軍隊における将校と兵隊ほどの階級差にも匹敵します。それはノンキャリにも当てはまることで、若いころは先輩から仕事を教わることばかりで、その結びつきはきわめて強い。
 年次がすべてという理由は、エリート集団の中で激しい競争でもされたりしたら、人材の潰し合いになって、組織としての機能不全を起こしかねないからです。府省への入り口で難関試験を突破した後に指標となるのは、まさに年次のみです。
 それは進学校の中における「棲み分けの論理」と似ているように思います。たとえば、灘とか私立武蔵とか県立浦和では基本的に、教師たちは学校の中で受験や成績や校内順位の話はあからさまにはしません。ましてや「お前はこの大学を受けろ」という進路指導などはないのです。そんなことをしたら、学校の中や生徒同士の関係が、ぎくしゃくして雰囲気が悪くなり、どうしようもなくなるからです。だから、期末試験結果の順位も出さない。
 私は今、出身校の県立浦和高校で教える機会があるのですが、誰が何位にいるのかという成績が分からなくなっていることに驚きました。細かく科目を分けて、個人ごとに選択科目の組み合わせが違うから、文系理系の別に加えて、たとえば「文系で世界史選択」とか「理系で物理選択」とか、選択科目が一人ひとり異なり、単純加算で順位が出せないような形にしている。ただし、駿台全国模試を受けた場合などの校内順位はわかります。そのあたりは、学校側も相当気を遣っていますが、まさに棲み分けの論理が働いていると言えます。
 官僚も同様に、ごく少数の閉鎖的な集団の中において、「競争はしない」という建て前のもと、年次ですべてが動く世界なのです。

□佐藤優『官僚の掟 競争なき「特権階級」の実態』 (朝日新書、2018)の「第1章 こんなに統治しやすい国はない」の「官僚は年次がすべて」を引用

 【参考】
【佐藤優】官僚に「落選」はない  ~官僚の掟(5)~
【佐藤優】ソ連官僚の鉄のモラル   ~官僚の掟(4)~
【佐藤優】競争の土俵に上がらない  ~官僚の掟(3)~
【佐藤優】自殺の大蔵、汚職の通産、不倫の外務 ~官僚の掟(2)~
【佐藤優】『官僚の掟』の目次



【佐藤優】官僚に「落選」はない  ~官僚の掟(5)~

2019年03月05日 | ●佐藤優
 さて、2017年度の日本の一般職の国家公務員は、約28.5万人です。30万人にも満たない極めて狭い世界です。このほか国家公務員法が適用されない特別職が約29.9万人、その中では自衛官が24.7万人ぐらいいます。一方、地方公務員は約273.9万人。窓口業務などで直接、市民や社会と接する機会が圧倒的に多いからこのボリュームです。それと比べても、国家公務員はひとにぎりの特殊な世界の住民です。
 さらに医師と比べてみると、その少なさは一目瞭然です。医師国家試験は約1万人が受験し、約9千人が合格しているから合格率は9割です(2018年3月)。するとこの9千人が、職業として医師を50年ぐらい務めるとすれば、ざっと40数万人の医師がいると考えられます。それに対して、外交官なら毎年約70人が試験に合格して、35年勤務するとして、在外公館でだいたい3,500人、国内の外務省本省で約2,500人いますから合わせて6千人ぐらい。ケタ違いに少ない職能集団です。財務省だって本省でのキャリア、ノンキャリアだけなら年間50人ぐらいしかいない。
 しかも、官僚の仕事は、政治家なしには一日たりとも動きません。日常的にいちばん多く政治家に接する特異な職業でもあります。とくに外務省は政治家との接触が多い役所だったので分かるのですが、誰の目にも明らかなほどエキセントリックで非常識な人は、長く政治家で居続けることはできません。そんな人は選挙で選ばれず、淘汰されるからです。「このハゲ~っ!」などの暴言を吐く人もいましたけれど(あの議員も官僚出身でした)、少なくとも、次の選挙では落とされます。しかし、官僚に「落選」はありません。エキセントリックであろうと倫理観が欠如していようと、法令に違反しない限りクビにはならず、年功序列でそれなりに出世もできます。

□佐藤優『官僚の掟 競争なき「特権階級」の実態』 (朝日新書、2018)の「第1章 こんなに統治しやすい国はない」の「官僚に「落選」はない」を引用

 【参考】
【佐藤優】ソ連官僚の鉄のモラル   ~官僚の掟(4)~
【佐藤優】競争の土俵に上がらない  ~官僚の掟(3)~
【佐藤優】自殺の大蔵、汚職の通産、不倫の外務 ~官僚の掟(2)~
【佐藤優】『官僚の掟』の目次



【佐藤優】安倍長期政権を維持する鍵

2019年03月04日 | ●佐藤優
 ①瀧澤弘和『現代経済学 ゲーム理論・行動経済学・制度論』(中公新書 880円)
 ②池田浩士『ドイツ革命 帝国の崩壊からヒトラーの登場まで』(現代書館 3,000円)
 ③田中秀明『官僚たちの冬 霞が関復活の処方箋』(小学館新書 800円)

 (1)①は、現下の経済学の潮流を分かりやすく解説した好著だ。
 <現在では、科学研究の本質は法則探求にあるのではなく、むしろメカニズムの解明にあると考える哲学者が登場してきている。実際、本書でこれまで述べてきたことからも明らかなように、経済学においても、普遍的法則と明確に呼べるものはほとんどないことがわかるだろう>
 と瀧澤氏は指摘する。経済学は、人間を対象とする社会科学の一分野だ。従って、法則を定立するよりも、個性を記述することの方が重要になる。このアプローチは、19世紀末から20世紀初頭にかけてアカデミズムで影響が強かった新カント派の方法に近い。

 (2)②は、民主主義について深く考え直すための材料を提供してくれる。4年の大量破壊と大量殺りくに疲弊し、ドイツは第1次世界大戦に敗北した。帝政は崩壊し、一時、共産主義革命が起きた。その後、政権を社会民主党が担う。当時の社会民主党は非共産党系マルクス主義者も無視できない勢力となっていた。
 <ドイツ革命のなかで、自由と自治と共生の夢を現実のものとする機会を逸し、思考と意志と行動とを共に模索し実行する場を見失った主権者は、選挙権を行使するという議会制民主主義の主権だけを享受した。日常の現実が絶望的になればなるほど、決断力と実行力を誇示し売り物にする強い政治家にすべてを委ね、みずからが共に思考し意志し行動することからますます遠ざかったのである>
 と池田氏は指摘する。形骸化した民主主義が、ヒトラーの独裁への露払いとなったという歴史の教訓から学ぶべきことが少なからずある。

 (3)③において、
 <日本の公務員制度の建前は英国型だが、実態は独仏に近いとも言われる。独仏では、幹部公務員は政治家のパートナーであり、政治と一体化している。幹部は政治任用だが、それでも、両国では、米国とは異なり、官僚の自律性と威信が高い。日本も、昔はそうだったかもしれないが、官僚バッシングと誤った政治主導の結果、自律性はかなり低下した>
 との指摘がなされている。安倍政権下では、中途半端な政治任用がなされている。すなわち、国家公務員試験に合格し、身分保障がなされ、政治的に中立とされている官僚の中から、政権中枢によって評価された者が、首相官邸と内閣府に集められて「第二官僚群」を形成している。今井尚哉・首相秘書官に代表される「第二官僚群」は、士気、能力共に高く、人間性も魅力的だ。この「第二官僚群」を中核に据えたことが、安倍晋三首相が長期政権を維持する鍵になっている。

□佐藤優「安倍長期政権を維持する鍵  ~知を磨く読書 第286回~」(「週刊ダイヤモンド」2019年3月9日号)

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【佐藤優】ソ連官僚の鉄のモラル   ~官僚の掟(4)~

2019年03月03日 | ●佐藤優
 官僚社会では、身分保障がしっかりしています。ぬるま湯で、コップの中の嵐はしょっちゅうあるけれど、総じて守られている世界です。あのソ連が1991年に崩壊するまで持ちこたえられたのもまさに官僚制によって支えられていたからです。どういうことかというと、ソ連の官僚はモラルが高くて、あの共産主義体制を実現することが、人生の目的だと本気で考えている人が多かったのです。それだから、給与はぜんぜん上がらなくても、出世できなくても、「エリートというものは人民や社会のために働かないといけない」と鉄のようなモラルがあり、それが強かったのです。その意味においては、聖書の中の「使徒言行録」20章35節にある「受けるより与える方が幸いである」というイエスの言葉をまさに地で行く人たちが多かった。言い方を変えれば、共産主義というのは、世俗化された形でのキリスト教だったのです。
 遠藤周作が『沈黙』で描いてみせたように、江戸時代の鎖国という状況の中でも殉教を恐れずやって来たカトリック教会の宣教師たちと同じだけのモラルがあったと言えます。私がつきあったソ連の官僚も、とくに選び抜かれたエリートたちは、滅私奉公型の人たちが多かったと思います。深夜の1時、2時まで仕事をするのは普通のことだと考えていたし、それでも文句一つ言わずに働いていました。
 だからこそ、ソビエトという体制が破綻してボロボロになっても、崩壊する寸前まで、あの国はもっていたのです。「この体制の中で何とかしないといけない」と必死に考えながら、しかし、エリート官僚たちにも「大局」は見えなかったわけです。この体制にはもう発展可能性がない、ということが見えずに、なんとかこの中で生き残ろうという弥縫策をいろいろ考えていたのです。

□佐藤優『官僚の掟 競争なき「特権階級」の実態』 (朝日新書、2018)の「第1章 こんなに統治しやすい国はない」の「ソ連官僚の鉄のモラル」から引用

 【参考】
【佐藤優】競争の土俵に上がらない  ~官僚の掟(3)~
【佐藤優】自殺の大蔵、汚職の通産、不倫の外務 ~官僚の掟(2)~
【佐藤優】『官僚の掟』の目次


【佐藤優】競争の土俵に上がらない  ~官僚の掟(3)~

2019年03月02日 | ●佐藤優
 小泉改革以来、新自由主義の浸透した我々の社会には、成果主義と競争原理が持ちこまれ、富裕層と貧困層の格差が広がり、能力主義による実力の差が可視化されるようになりました。東日本大震災以来、「絆」や「人とのつながり」ということが強調されるのは、そう言わなければならないほどに、人間関係のギスギスした社会が出来してしまったからと見ることができるかもしれません。
 ところがそんな社会の中に、ほんの一部だけに張られた。ある種の「結界」のような聖域が残されている。それが官僚の世界なのではないか、とひとまず考えてみます。その中にいれば、絶対に脅かされることのない安全な場所、競争にさらされることもなく、ひとたびそこに入ってしまえば自分を守ってくれる「あたたかい世界」であること。
 第三者的に見れば、官僚というのは、常にモラルも金銭感覚も、国民の目によって監視される息苦しい職業だ、それなりに地位のある役職につけば国会で答弁しなければならないし、勉強不足や適性の欠けた大臣の背後で、分厚い資料のファイルの束を抱えながら「回答」を耳打ちする黒衣だ。いざとなれば佐川・前国税庁長官のように総理をかばった挙げ句に国会で吊るし上げられ、事実上、更迭される。それのどこが「あたたかい世界なんだ?」そう思う人がいるかもしれません。
 たしかに、上司の小間使いをして、下働きもイヤと言うほどして、組織防衛に汲々としているように見えるかもしれませんが、それは競争のない世界と「表裏の関係」にあるふるまい方です。これは私の実感として言えることですが、中央官庁というのは「競争の土俵に上がらない」「自分を追求して個性を発揮できなくても生きていける」まさに保証された安全地帯でもあるのです。
 官僚は組織の中にいるからこそ、新自由主義の荒波を受けずに済んでいる。なぜなら彼らは競争から免れているからです。官僚社会は、一般社会のような勝ち負けがない、まったくの別社会です。官僚である限り、「対外試合」に出かけて無様な目に遭うことはない。官僚は「公」の中にすべて自分を埋没させることができて初めて「競争なき、あたたかい世界」をまっとうできるのです。そのためなら、バカバカしいように見えることでもひたすら滅私の精神で奉仕できる。

□佐藤優『官僚の掟 競争なき「特権階級」の実態』 (朝日新書、2018)の「第1章 こんなに統治しやすい国はない 」の「競争の土俵に上がらない」を引用

 【参考】
【佐藤優】自殺の大蔵、汚職の通産、不倫の外務 ~官僚の掟(2)~
【佐藤優】『官僚の掟』の目次


【佐藤優】自殺の大蔵、汚職の通産、不倫の外務 ~官僚の掟(2)~

2019年03月01日 | ●佐藤優
 キャリア、ノンキャリア(一般職、専門職)ともに、いったん採用されると、重大な刑事事件でも起こさない限り、安泰な役人生活を送ることができます。役所は居心地の良い場所なのです。その意味についてはすぐ後で説明します。いずれにしても、必然的に役所内の流動性は低くなります。
 流動性が低くなると、そこにいる人たちの共通の価値観を反映したローカル・ルールが生まれます。そうしたルールを土台にして、長い年月を経て「官僚独自の文化」ができあがっていきます。明治時代から続く官僚階級には、すでに独自の文化が形成されていると言えます。
 たとえば「自殺の大蔵(財務省)、汚職の通産(経産省)、不倫の外務」という言い方があります。この慣用句からは、この三省がそれぞれ、どこに神経をとがらせているかが分かります。
 大蔵省はメンタルが弱いことに関しては寛容だが(→裏返せば自殺者が多かった)、汚職や女性問題やセクハラには厳しいという意味です。通産省は企業や業界団体とのつき合いがあるから金品のやり取りには寛容な面もあるが(→汚職が多かった)、メンタルが弱い人や女性問題でトラブルを起こす人物はダメ。外務省は、省内のアルバイトの女性を愛人にするなど女性問題には甘く、ルーズなところはありますが(→不倫が多かった)、金銭トラブルを起こす人やメンタルが弱い人物には厳しい、ということです。
 いずれも、こうしたタブーに触れれば「こいつは使い物にならない」との判を押されかねません。つまり、それぞれの組織の中で長年かけて共有されてきた文化のようなもので、言い換えれば鉄の掟と言えます。
 過去と現在で似たような不祥事が時間をおいて繰り返されるのは、それが文化になってしまっているから「ここまでならやっても大丈夫」という暗黙の了解がある、とあの人たちは思い込んでいるのでしょう。

□佐藤優『官僚の掟 競争なき「特権階級」の実態』 (朝日新書、2018)の「第1章 こんなに統治しやすい国はない」の「自殺の大蔵、汚職の通産、不倫の外務」から引用

 【参考】
【佐藤優】『官僚の掟』の目次

 
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