朝に、ヨルダン人パイロットが殺されたと言うニュースが入った。ただ殺され方が今までと違う。火刑のようだ。しかも油をまいて火を付ける所まで写っていると言う。私はこの映像を見ていない。だから伝聞だけだが、機会があっても見ない。
許されない映像は見ない。聞く限りはこれは表現ではない。見る値も無い。
私はイスラム法に詳しい訳ではないが、火刑は聞いた事が無い。他にも公開処刑での斬首や石打、鞭打ち、手足の切断等残虐な刑がある。だが火刑は聞いた事が無い。
ただ彼らが土葬な理由は知っている。死者に地獄の業火と同じ苦しみを与えるものだと考えているからだ。罪人でも、人が与える刑と神が与える刑は違う訳で、地獄に値するかもしれないがその判断は人がするものではない、だから地獄と同じ苦しみを人が与えるのはおかしい。そう言った考えだろう。ましてや普通に暮らしたムスリムを火葬にすると言うのはもってのほかだ。
だから火刑と言うのに衝撃を受けた。なぜ生きながらに地獄を味あわせるのか。そこまでの罪があるのだろうか。
しかもスンニだと思われる中尉を火刑にしたのだ。ISISはスンニでもある。だから公開処刑でのムスリムはシーアだけだったと思う。もちろん非公開ではいっぱいいただろう。
湯川さんはイスラムに帰依していた。そして多分後藤さんも改宗していただろう。でも日本人だから殺したと言うのは解らない訳ではない。今回はアラブ人だ、そしてスンニだ。
しかしこの映像を公開する意図が良くわからない。まず健全なムスリムは相当の嫌悪感を抱くだろう。それでも跳ねっ返りは集まると踏んでいるのだろうか。それとも同じスンニでも背教者である限り地獄にたたき落とすと、この映像から読むのだろうか。
その前にヨルダンへの憎しみを感じる。初代なのかどうか交錯したISISの歴史を読んでも良くわからないのだが、ザルカーヴィーがヨルダン人だと言うのがあるかもしれない。その彼の妻と言われるリシャヴィ死刑囚を捉えているヨルダンへの恨みがあるかもしれない。だから日本人が考えている以上の極刑を施したのかも知れない。
だが私はここで更に良くわからなくなる。日本人人質を公開処刑にすると、安倍首相の中東訪問の最中に行ったのはタイミングとして良くわかるし、そこでリシャヴィ死刑囚を出して来たのも良くわかる。だが中尉が1月3日に暗殺されたとヨルダン政府は情報を得ていたようだ。だから中尉の生存の証拠にこだわった訳だ。ヨルダン政府としてみれば殺されたはずなのが生きている可能性がある、となれば情報を洗い出すだろうが、それでも確証が得られなかったのだろう。
ISISが中尉とリシャヴィ死刑囚の交換とか、後藤さんとの交換とかコロコロ変わった理由もここなのだろう。
ただ良くわからないのは中尉との交換を言い出したのは、果たして日本政府を揺さぶるためだけだったのだろうか。この中尉の死を際立たせるために出しただけなのだろうか。
とにかく良くわからなくなる。火刑の問題。そして中尉は1月3日に殺されている。そしてそれが交渉に上がっている。そしてその死に様の映像を公開したらスンニ全体を敵に回すばかりか、自分たちがシンボルとしようとしていたリシャヴィ死刑囚も切り捨てる事になるのだ。
どういった思考回路でこうなるのかが全く解らないほど、行き当たりばったりに見える。
包囲網がかなりきつくなっていると言う事なのだろう。正直な所、ヨルダン人の中尉を殺しているのは、内部での不統一を感じる訳だ。政治的に重要な人質なのに、極端な殺し方をしているのも短絡的だし、それが交渉に乗るのもおかしい。
もちろん交渉だから嘘やら何やらあると思う。しかしこのやり方がスマートに感じられるかどうか、シンパの気持ちは解らないがかなり無理があるのではないのか。大嘘つきと言う所がある。
しかも嘘をついてもリシャヴィ死刑囚を取り戻せなかったばかりに、殺してしまったのだ。これは巧妙な作戦であり、彼女は犠性なのだろうか。私は違うと思う。
現在ISISの間でかなりの動揺があるのでは無いだろうか。
もちろん日本人人質が殺されたのは過去にある。香田証生氏だが彼は傭兵だった。ある意味筋が通っていた死でもあった。そして日本はアメリカと同盟国と言う立場だ。だから事件に巻き込まれるのは当然だ。でも無理筋だと思う。確かに日本の人道支援は彼らの立場を脅かす兵站線かも知れない。ただその道理を自分たちに敵対する攻撃だと捉えるというのは可能なのだが、それにしてもギャップが大きい。
少なくとも解る事は、同じスンニを殺すなら後は誰だっていい訳だ。それが日本のような国だったりすればいいだけの話だ。
誰だっていいのだ。
ISISが火刑と言う最大の憎しみをヨルダンにぶつけた。だがこれは彼らにとってもいい事ではない。なぜそんなことが起きたのかと言えば、グローバルジハードの限界かも知れない。そして現在の指導者の中で内部分裂が起きている可能性すら伺わせている。
日本人は連合赤軍事件のあらましを覚えていますから、この流れは相当良くない。誰にとっても良くない。
ISISがこの許されない映像を今になって公開した意図すらも良くわからないのだが、一番許せないのは、私らを騙したと言う事だ。異教徒だから騙して当然なのかも知れないが、ヨルダンを巻き込んだのは更に許せない。そして中尉を火刑にしたのは最も許されない事だ。
ムアーズ・カサースベ中尉のご冥福を心からお祈りいたします。
空爆でなくなられた方のご冥福をお祈りいたします。
そしてこの宗教対立に巻き込まれた方のご冥福を心からお祈りいたします。
避難キャンプでなくなられたり、騙されて地中海に沈んだ方のご冥福をお祈りします。
どこまで祈ればいいのだろうか。無限地獄と言うのは人が織りなすものだと言うのを解らないのが、セム教系の悪い所だ。