鶴岡地区医師会だより

三原一郎目線で鶴岡地区医師会の活動を配信しています。

No.177 (地域連携パスセミナー in 鶴岡)

2013-09-18 11:59:20 | 日記


9月15日、連休の中日、しかも大風が近づいている最中でしたが、さがみはら精
神科地域医療連携協議会の皆さま10数名が来鶴し、「うつ病と心筋梗塞」をテー
マとしたセミナーを開催しました。また、当地区や秋田などからも、さまざまな
職種の皆さんに集まって頂き、大変有意義なセミナーでした。

なお、相模原市、相模原医師会、北里大学医学部精神科とは、昨年も鶴岡でパス
関連セミナーを開催した経緯があり、お互いに情報交換しながら、とくに精神科
領域の地域連携~パスについて学んでいるところです。

<セミナーでのポイント>

・認知症ケアの目的はいきいきと生活できることを援助すること

・日本海病院では、心筋硬塞患者の院内~回復期心臓リハビリテーションパスを
 多職種協働で運用している

・心筋硬塞後のうつ病合併は予後に関与するが、抗うつ療法を急ぐ前に、基本的
 な療養指導、悩みや苦痛に共感する社会的援助を心がける必要がある

以下、プログラムに沿って報告します。

■紹介
 相模原市の認知症地域連携パス
  北里大学医学部 精神科学 大石 智先生

認知症援助の目的
 認知症をもちながらも いきいきと生活できる
 「症状」を何とかすることではない 「生活」を見落としてはいけない
 症状の注目は、薬物療法の偏重をもたらす
 認知機能、実行機能の低下がもたらすもの
  活動量の低下
  役割の喪失
  生きがいの喪失
  不安の増大
 機能維持を支える、
  部分的にでも回復させるそれは薬ではなく「生活」しかない
 大切なのは「生活」を知ること 
 ・・しかし
  医師は「生活」を把握しにくい
  地域から医師に伝えにくい
  本来の「目的」を達成しにく

さがみはら認知症地域連携研究会では、支え手帳を作成し、
情報、援助の目標を多職種で共有するしくみづくりに取り組んでいる。
一方、援助の質を高めるには、援助の質を評価する必要がある
それには、地域連携パス活動を通してPDCAサイクルを回すことが必要
支え手帳 運用数:11例
  各職種が他職種に伝えたいことを書く
  2点を評価項目としている
   介護負担感
   BPSDの出現程度

まとめ
 認知症ケアには生活の視点が重要
 地域連携パスは、情報共有・目的統一に寄与する
 運用には運用フローの整備が必要
 運用には連携実務者によるサポートが必要
 フロー整備、改定を重ね、発行機関を広げる

■基調講演 
 心筋梗塞の病態と患者家族教育
  日本海総合病院 循環器内科 部長 菅原 重生先生

1)心筋梗塞の病態と治療、二次予防ガイドライン
 心筋梗塞の基礎的な病態と治療についての解説。
 心筋硬塞の二次予防における運動療法の有用性は確立されている。
 心筋硬塞発症後の運動療法は、とりもなおさず心臓リハビリテーションである。
 一方、心臓リハビリテーションは、運動療法のみならずライフスタイル是正、
 冠危険因子の是正など、いわゆる一般療法も含めるようになってきている。

2)当院における心臓リハビリテーション、患者家族教育への取り組み
 日本海総合病院では、看護師による生活指導、薬剤師による服薬指導、管理栄
 養士による栄養指導、理学療法士による運動・活動面での指導など、それぞれ
 の専門職が役割を分担し、パス化して実施している。

3)病診連携との両立を目指した回復期通院心臓リハビリテーション
 ・回復期心臓リハビリテーションパス
  かかりつけ医に逆紹介し、投薬、検査などをお願いする
  通院による外来心臓リハビリテーション(運動+患者教育)を3か月間実施
  3か月後にCPXや心エコー、面談などで再評価し、今後のリハ計画を作成、
  かかりつけ医にも情報提供している
  患者には、心不全手帳を配布し、自己管理を促す
  かかりつけ医との情報共有にちょうかいネットを利用している
 ・維持期のリハビリテーション、うつなど精神面のサポートは今後の課題

■グループワーク
 ワールドカフェ形式で、心筋梗塞後再発予防における課題について
 以下の視点でグループ毎に意見交換を行ったす
 ・かかりつけ医の視点
 ・リハの視点
 ・患者・家族の視点
 ・・・

【紹介】
 鶴岡地区「心筋硬塞地域連携パス」
   鶴岡地区医師会 副会長 土田兼史先生
 10月1日から運用を開始する当地区の連携パスについての説明

【講演1】
 心筋梗塞後のうつ病 -その理解と援助ー
  北里大学医学部 精神科 教授 宮岡 等 先生

心筋梗塞後にうつ病を合併することは少なくない
うつ病の合併は心筋梗塞の予後に影響する
うつ病に気付きやすい工夫と専門医に相談しやすい体制が求められる

一方で、

心筋硬塞後のうつ病に対して、抗うつ療法行うことの安全性と効果については、
明確なエビデンスはなく、慎重な判断が求められる。

つまり、心筋硬塞後のうつ病治療に際しては、社会的状況を評価することが重要
であり、抗うつ療法を急ぐ前に、基本的な療養指導、悩みや苦痛に共感する援助
的姿勢を心がける必要がある。

このことは、通常のうつ病治療においても言えることである。今日のうつ病治療
における課題として、基本的な療養指導の省略、拙速な抗うつ療法の開始が挙げ
られる。心筋梗塞後のうつ病といえども、同じことが言える。

なお、宮岡教授はプライマリ医や精神科医による、精神疾患患者への不適切な治
療が横行している現状を憂いており、地域連携による医療の透明化で、是正して
いきたいと考えているとのことでした。

【講演2】
リハビリテーションの可能性
 - 在宅リハビリの現状と課題 -
 ハローナース 佐藤健一

ハローナースの紹介、在宅心臓リハビリテーション、在宅医療と多職種連携、
Net4Uとちょうかいネット、心身障害児センターでの経験、心疾患の維持期在宅
リハビリテーションなど広範にわたる講演をして頂きました。

以下、セミナー、懇親会、二次会でのスナップ

https://plus.google.com/photos/101791822828330277284/albums/5924506085521360017


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