土曜日、大津行われた地域ICT利活用シンポジウムに参加、講演してきました。
今回は、元京都大学病理の教授で現在、滋賀県立成人病センターの所長をされている真鍋先生から声をかけて頂きました。
私は、1980年前後に2年間、ニューヨーク大学のアッカーマン教授のもとで皮膚病理学を学びましたが、ニューヨーク大学へ留学しているときに知り合ったのが真鍋先生です。真鍋先生は、アメリカで医師会免許をとり、その後、川崎医大の病理学教授、京都大学病理学教授を経て、現在、滋賀県立成人病センターの所長をされていますが、極めて優秀というだけではなく、温厚、実直という性格もあり、誰からも尊敬されてほんとに素敵な先生です。
私にとっても、もっとも尊敬する先輩の一人です。
真鍋先生のご略歴については以下を参照下さい。
http://www.shigamed.jp/divisions/pathology.html
尚、恩師アッカーマン教授は、すでに他界していますが、皮膚病理学の分野でとても有名な人で、革命的な発想で皮膚病理学を根底から変えた人でもあります。
さて、今回のシンポジウムは、2部構成で、前半が「IT利活用による地域医療の連携」
後半が「遠隔病理診断ネットワークの現状」でした。私は、前半のシンポジウムでNet4Uの話をしてきましたが、滋賀県では全県的な医療情報ネットワーク構築が始まっているようでした。病院から在宅までの広域ネットワークということで、大変だな~というのが率直な感想です。
午後からが、メインとなる「遠隔病理診断ネットワークの現状」というシンポジウムでした。
病理の世界では、病理医不足が深刻化していて、必要な病理医を確保できない、あるいは
一人病理医の病院が多く、病理医の過重労働のみならず、病理診断の制度管理という意味でも、危険な状態にあるとのことでした。
一方、バーチャルスライド(Whole slide image 、バーチャルマイクロスコピーとも呼ぶ)、というガラス標本を一枚のデジタル画像とする技術が普及しつつあり、今では十分診断に耐え得るレベルになってきているそうです。バーチャルスライドを普及させることにより、診断までのスピードアップ、複数の病理医によるより信頼性の高い診断、病理医の負担軽減、などが可能となり得るとのことで、滋賀県、長野県では、すでに検査所、病理医、病院間でのネットワーク構築が始めているとの報告でした。
一方で、課題はバーチャルスライドによる診断が、診療報酬上認められていないこと。
真鍋先生たちは、バーチャルスライドで、ガラス標本と同等の診断が可能と考えていますが、国は100%の信頼性がないと認めない方針とのことで、そのあたりを打開するには、誰かがやらないと、変わらない。その先陣になるというのが真鍋先生の意気込みでした。今後どうなっていくのが注目されます。
バーチャルスライドでの診断が認められるようになると、将来、ガラススライドや顕微鏡がなくなる時代がくるかもしれません。病理の世界も、レントゲンがそうであったように、顕微鏡ではなく、ディスプレイをみて診断する時代になるのでしょう。興味深いシンポジウムでした。
http://www.claro-inc.jp/product/virtual-slide
シンポジウムの後は、病理の先生たちと、歴史ある居酒屋で懇親会でした。皆さん、いい人ばかりでとても楽しい時間を過ごしました。翌日は、生まれた初めての琵琶湖を遊覧船に乗ったりして楽しみました。
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地域ICT利活用連携 シンポジウム
-情報通信技術の地域医療への活用-
滋賀県では、先進医療機器と情報通信技術(ICT)の活用による広域連携事業を進めており、その一環として全県型遠隔病理診断ネットワーク事業を展開し、この度、システムの稼働を迎えたところです。
どこに住んでいても、誰もが至適な医療を受けられる社会にしていくためには、限りある医療資源を最大限に活用し、医療機関同士が連携または分担することで、無駄のない医療体制を構築する必要があります。 ICT技術はこれを円滑に促進し得る手段となります。
この度、事業の普及と稼働を記念して、地域ICT利活用連携の現状と他府県の取り組みをともに学ぶシンポジウムを開催することとなりました。
地域医療の現場、遠隔病理診断の第一線でご活躍されています先生方の貴重な講演を聞く絶好の機会ですので、医療関係者、健康に興味のある方はふるってご参加ください
日 時 : 平成25年10月26日(土) 10時~16時30分
場 所 : コラボしが21(大会議室)
(滋賀県大津市打出浜2-1) 入 場 無 料
基調講演 『ICT利活用による地域活性化への取り組み』
総務省近畿総合通信局 情報通信振興課長 松山 和馬 様
第一部:シンポジウム『ICT利活用による地域医療の連携』 10:30~
(1) かがわ遠隔医療ネットワーク(K-MIX)の紹介
香川大学瀬戸内圏研究センター 特任教授 原 量宏 先生
(2) 医療と介護を繋ぐヘルスケア・ソーシャル・ネットワーク「Net4U」
山形県鶴岡地区医師会 会 長 三原 一郎 先生
(3) 滋賀県ICT医療ネットワーク構築の進捗状況と今後の課題
NTTデータ経営研究所 マネージャー 中林 裕詞 様
第二部:シンポジウム『遠隔病理診断ネットワークの現状』 13:30~
(1) 滋賀県の現状
滋賀県立成人病センター研究所 所 長 真鍋 俊明 先生
(2) 長野県での遠隔病理診断の現状
信州大学医学部 講 師 吉澤 明彦 先生
(3) 遠隔病理診断医療機関間連携の活用と今後のがん診療国策最前線
東京大学医学部 准教授 佐々木 毅 先生
(4) 大阪地区における病理診断の現状と遠隔診断ネットワークの必要性
大阪大学医学部 教 授 森井 英一 先生
(5) 米国のデジタルパソロジーの現状と遠隔病理診断
マサチューセッツ総合病院PICTセンターを訪問して
自治医科大学 教 授 福嶋 敬宜 先生