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長く都内の書店に勤め2016年に退職した著者、人見廣史氏の『書店人のはんせい』(新評論 2018年)を読みました。
いったい何を反省しているのかと思いましたら、「本を読むことは裃(かみしも)を身に着けて、知識を高めるものではなく、本はエンターテイメント!」である、と悟られたことを指す。エンターテイメント、つまり娯楽、気晴らし、子どもがお父さんに連れられプロ野球を見るような臨場感で読書も、と。
著者は埼玉県浦和市生まれですが、現在、同県熊谷市在住。そのため「暑いぞ!熊谷」の話や市内の人気居酒屋店「甲子園第二球場」、同店の店長さんが熊谷商の名選手だったことなどが紹介されていて、まことにライブ感にあふれたタッチだ。それでいて、知性的な本の紹介もしている。
もっとも好きな作品は、子どもと一緒に成長できる『赤毛のアン』(金の星社)。その他は満州引き上げの惨状の手記『流れる星は生きている』(藤原てい)、『自動車絶望工場』(鎌田慧)なども紹介する。
「戦争の実態」の項では、17万人以上が帰って来れなかった満蒙開拓団の苦難の歴史を伝える「満蒙開拓平和記念館」(長野県阿智村)に言及されている。
なんだか、つかみどころがないようでいて、どこでもつかむような感じ。
「本を読むのにルールはない」という著者の「はんせい」、大いにうなずけた。
【木工さんの写真】矢嶋秀一作 フォト 田口大輔
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