最後の今戸人形師であった尾張屋・金澤春吉翁(明治元年~昭和19年)。これまで春吉翁に関しての記事を採り上げてきましたが、今日春吉翁のご親族である金澤家をお訪ねしてお話を伺うことができました。
今から20年前、春吉翁のお孫さんでいらっしゃる武佑さんにお目にかかる機会を得ましたが、20年ぶりに再会でき、その間読みかじり、聞きかじりしたことを更に深めることができました。
春吉翁がまだご健在で今戸人形を製作されていた頃、その片腕として仕事を手伝っておられた娘のはなさんは平成16年にお亡くなりになられたそうですが、その生前武佑さんの奥様が、はなさんの当時について語られていたことをカセットテープに録音されていたものをお聞かせくださり、また春吉さんと一緒ににお住まいになられていた武佑さんのお話を限られた時間ではありましたが、メモすることができました。
また、私にとって気がかりであったこと。春吉翁の作られたお人形を手本として再現していることについてもご承諾くださり、ほーっと安心しました。はなさんは、春吉翁が亡くなられた後、同業者に真似されることが嫌で悩んでおられたそうですが、現在、春吉翁の存在やお作りになられた人形について知っていらっしゃる方も少なくなってきているので、春吉翁の作には及ばずとも尾張屋さんの今戸人形の雰囲気や尾張屋さんの歴史を世に伝えるためには、はなさんも喜んでおられるだろうというお言葉をいただき、感謝感激です。
また、手元に残された人形は江戸東京博物館へ寄贈されたとのことですが、半製品の一部を見せてくださり、春吉翁の仕事の手順を垣間見る思いでした。
お聞きしたお話の中には、これまで美術書などに記録として残されていない内容も含まれていてびっくりしました。何れまとめて、内容の聞き間違いがないか確認していただこうと思っています。金澤家の皆さま、本日はありがとうございました。