先日、今戸人形最後の作者であった尾張屋・金澤春吉翁(明治元年~昭和19年)の御親族をお訪ねして、いろいろなお話を伺ったのですが、その中で聞き慣れない「海水人形」という言葉が出てきました。
春吉翁の娘さんのはなさんがご生前に昔のことを壊述されている録音が残されており、その中に出てくるのです。春吉翁は箱庭細工の名人としても知られているところで、浅草橋のお人形の「吉徳」さんへ納品されていたことがあったそうですが、その後、浅草橋の雑貨屋さん納めていたらしいのです。
春吉翁作の箱庭細工は、精巧な作りで、横浜から海外にも輸出されていたそうですが、箱庭細工とともに「海水人形」も輸出され、雑貨屋さんには大きな利益をもたらし、感謝されていたという話でした。
さて「海水人形」というのはいったいどのようなものか? これという実物を観たこともなく、いろいろ考えてみたのですが、「海水」とつくからには、水に濡れても大丈夫なもの、、?金魚鉢や水槽の中に置く竜宮城や太鼓橋、乙姫様に浦島太郎の類ではないかと想像しているところです。
水槽の中に置くのであれば、泥絵具に膠の彩色では色が取れてしまいます。おそらくペンキ塗りか釉薬をかけたものなのではないかと思うのです。
画像はペンキ塗りの金魚や鯉ですが、これが春吉翁の作であるという断定はできませんが、配色から、今戸人形に似ているところも見られます。今の段階では決定的な品物を確認していませんから、あくまでイメージとして採り上げてみました。