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博多陥没事故~福岡市、情報公開拒否

2016-12-17 11:44:49 | 博多駅前陥没

今月14日からはじまった福岡市議会12月議会で、社会的に問題となった博多駅前陥没事故について、6人の市議が市に説明を求めた。そこで情報公開を拒否する福岡市の姿勢が明らかになった。平畑議員(みらい)は、事故当時トンネル内にいた作業員の聞き取り内容や写真を提示するよう求めたが、市は第三者委員会の審議資料であり現時点では公開できないと答弁。中山議員(共産党)は、NATM工法を採用する基となった大成建設の技術提案資料の提示を求めていたが、市が提出した資料は肝心な部分が黒塗り。(下写真)さらに、中山議員の質問から「福岡市地下鉄七隈線建設技術専門委員会」の議事録の提出はあったものの、委員名が黒塗りになっていたこともわかった。行政が議会のチェックを拒否する異常な事態で、福岡市の隠蔽姿勢はこれまでになく酷いものとなっている。尚、この日、事故当時トンネル内にいた作業員9名(大成建設社員1名、成豊建設社員8名)が先月21日付けで解雇されていたことが明らかになった。

一方、市民への情報開示はもっと酷い。昨日、「市民に開かれた議会を実現する会」事務局長が、設計変更の議論があった8月30日の「福岡市地下鉄七隈線建設技術専門委員会」の議事録を市に開示請求したところ、開示には少なくとも3ヶ月かかると返答。理由は、国の第三者委員会(検討委員会)の調査に影響するからだという。これは事実上の開示拒否。議会には議事録を出しておきながら、市民にはすぐに出せないというのはおかしいだろう。そもそも、地下鉄七隈線延伸工事は市民の税金を使った事業であり、市民生活にも大きく関与している。だから委員会の資料はホームページで公開されなければならない。それを公開を引き延ばした上、お金を支払わないと見れないというのはあまりに酷い。市民を愚弄するにも程がある。

ところで、陥没事故当日、高島市長は記者会見で「はらわたが煮えくりかえっている」と発言していたが、この真意を問う質問があった。これに対し、高島市長は「交通局、施工業者、自分自身に対し、もっとできることがあったはずという悔しさや腹立たしさがあったから」と弁明しているが、自分自身への腹立たしさを表現するのに「はらわたが煮えくりかえる」とは言わないだろう。こんな無責任なトップのもとで、果たしてきちんと検証がなされるのか。ふたたび見切り発車されるのではないか。それを暗示するかのように、事故当時の証言者は早々に解雇されている。

 


議場で黒塗りの資料(パネル)を示す中山議員(共産党福岡市議団HPより)

 

 


  

NHK福岡が入手した「福岡市地下鉄七隈線建設技術専門委員会」議事録。(12月8日放送より)

市が議会へ提出した同上の議事録は委員名を黒塗り、こちらは委員名と思われるところに付箋。入手先が違う?

 

《関連記事》

博多陥没、市議会厳しく追及 過去検証せず工事 なぜ情報公開拒む 地下鉄料金値上げは(西日本新聞 2016.12.16)

共産党福岡市議団HP。博多駅前の道路陥没事故の問題で市長を追及(2016.12.15)

 

《関連資料》

【動画】平成28年第5回福岡市議会定例会(12月15日本会議その2)

福岡市HP。情報公開の請求

 


博多陥没事故~福岡市地下鉄七隈線建設技術専門委員会

2016-12-09 16:15:16 | 博多駅前陥没

連日のNHK福岡のスクープ報道で、陥没事故に至るまでの経緯が少しずつ見えてきた。NHK福岡は、今年8月30日に開かれた「福岡市地下鉄七隈線建設技術専門委員会」の議事録を入手し、その内容を明らかにした。それによると、この日の会議で、地下水を多く含む軟らかい地層を避けるため、トンネル上部の深さを当初よりおよそ90センチ下げる設計変更について議論されたという。その際、専門家の1人が「掘削に伴って地盤沈下が起きればかなり危ない。設計を変更し、トンネルの位置を下げたとしても心配だ」と懸念を示し、別の専門家は「地盤に脆い部分があり、工事でどのような亀裂が入るか予測するのは難しい。亀裂によって地下水が流れ込めば地面の沈下につながる」と指摘している。他にも、現場の地層は平らではなく複雑な形をしていると注意を促す意見もあったが、慎重に工事を進めるということで設計変更は承認されたという。地盤沈下の恐れがあることを繰り返し指摘されながら、福岡市と事業者は耳を貸さなかったのだ。

さらにNHK福岡は、陥没事故後、大成建設が実施していたボーリング調査の結果報告書を入手したと報道していた。それによると、岩盤の一部に風化が進んで、硬さを示す数値が付近の岩盤の半分程度にとどまり、指で押すと簡単に崩れるほど脆くなっている部分があることがわかったという。(下写真)まさに2か月前に専門家が指摘していたことが実証された形だ。そこを山岳部などの硬い岩盤にトンネルを掘る工法として開発されたNATMで掘削した。土木の専門家でなくとも危険であることは想像がつく。それでもNATMで掘った理由は何か。それは今後、明らかにされる(?)だろうが、九大元助教下山正一氏(地質学者)は、「現場の岩盤に十分な硬さや厚みがあったかどうかを中心に原因調査を進めてほしい」とコメントされている。また、下山元助教によると、陥没場所の軟らかい地層と接する地層は、およそ40万年前の地殻変動で隆起したあと、一定の期間、空気に晒されたため風化したものと説明されている。

それにしても、これらの情報が報道からしか得られないというのは如何なものか。福岡市は、「福岡市地下鉄七隈線建設技術専門委員会」の議事録はもとより関連資料を一切ホームページに掲載していない。事故後に削除したのか、あるいはもともと掲載していなかったのか定かではないが、当然、市民に公開されるべきものだろう。今回の陥没事故で、またしても福岡市の隠蔽体質が露呈した。先月30日には、福岡市議会交通対策特別委員会が開催され、市は議会に陥没事故の報告をしている。そこで提出された資料の中身を見てみると、殆どが周知されている内容で、目新しいものはなかった。まるで議員を見下しているかのようにも思えるのだが、これで議員が怒らないようなら、そちらのほうが問題だろう。そもそも福岡市の場合、議会がチェック機能を果たしていないところが、最大の問題なのだが。

 

 

NHK報道で使用された、事故前日の現場写真

事故前日、現場を視察した調市議が偶々撮影したもので、この時点で異常はなかったという。この撮影から約14時間後、重機がある付近で先進導坑を拡幅している際に崩落した。尚、崩落直前の写真はこちら(NHK福岡が今月20日に放送したもの)

  

以下、NHK福岡放送より(2016.12.9)

事故直後、大成建設が行った地質調査の報告書 

 

 

陥没場所の地質は風化が進み、指で押すと簡単に崩れるところだった 

 

 

黄色部分が濃いほど軟弱

 

 

 

《関連記事》

博多の大規模陥没 2か月前に地盤沈下の懸念指摘(NHK全国ニュース 2016.12.8)

地盤沈下の可能性 専門家指摘(NHK福岡ニュース 2016.12.8)

岩盤風化 指で崩れる部分も(NHK福岡ニュース 2016.12.9) 

博多陥没:事故前日、市幹部や市議ら視察(毎日新聞 2016.11.12) 

 

《関連資料》

・福岡市議会HP。特別委員会資料。 

 


博多陥没事故~緊迫の映像

2016-12-07 17:47:49 | 博多駅前陥没

昨夜、NHK福岡放送局が陥没時の新たな映像を公開した。映像は陥没事故現場にある立体駐車場(紙与パーキング)の防犯カメラによるもので、大規模陥没までの緊迫した様子が映し出されていた。これを見ると、まさに間一髪だったことがわかる。時間帯が違えばどうなっていたか、想像しただけでもぞっとする。福岡市は、原因が解明されるまで工事を再開しない方針を示しているという。当たり前だろう。

ちなみに本日、福岡市議会の議会改革調査特別委員会を傍聴後、陥没事故の百条委員会設置を議長に申し入れた共産党に現状を尋ねたところ、現在、代表者会議で議論している最中で、まだ結論は出ていないとのことだった。おそらくは自民党などの与党会派が設置に反対しているのではないだろうか。できるだけ早く工事を再開させたい福岡市の意向を汲んで。

大規模陥没事故 当時の新映像(NHK 福岡 NEWS WEB 2016.12.6) 

 

以下、 NHK福岡 NEWS WEBより。

午前5時15分ごろ。路面に亀裂が入り始め、工事関係者の姿が見える。

  


  

午前5時25分ごろ。1台の車が外に出ようとしたため、工事関係者などが駆け寄り停止させる。

  

 

午前6時22分ごろ。歩道の植え込みの陥没がはじまる。              

  ➡ 

 

 

午前6時34分ごろ。路面の陥没がはじまる。

     

 


午前7時20分ごろ。大規模陥没発生。

  ➡  

 

 

《関連記事》

博多陥没:共産福岡市議団「百条委設置を」 /福岡 (毎日新聞 2016.11.16) 

 


博多陥没事故~設計変更について

2016-12-03 21:42:23 | 博多駅前陥没

陥没事故現場付近の岩盤の補強方法について。当初はトンネル上部の地盤を固める薬剤を地表から注入する予定になっていた。ところが、トンネルを掘り進めていくうちにトンネル上部の岩盤が当初の見込みより薄いことが分かった。そこで、今年8月の福岡市地下鉄七隈線建設技術専門委員会(委員長:樗木武九大名誉教授)で、トンネルの高さを約1メートル低くすることが決まった。その際、補強方法を薬剤注入から鋼管打設へ変更することも決まった。福岡市は変更理由について、大成建設JVから「地表近くの(インフラなどの)埋設物の配置が複雑なため、地上から薬剤を注入するのが難しい」と説明があったためとしている。

以上は昨日報道された内容だが、設計変更については、日経コンストラクション(土木専門雑誌)が事故後、詳しく伝えていた。そこに、設計変更のポイントは3つあると書かれている。1つ目は、トンネルの天端の位置を1m下げて掘削断面を縮小したこと。2つ目は、先受け鋼管の長さを当初の設計よりも短くしたこと。現場では、先受け鋼管からウレタンなどを含む薬液を注入する「AGF工法」と呼ぶ工法が採用され、周辺の地山を補強していた。先受け鋼管を短くすれば、トンネル天端近くの地山を支える力が弱まる。そこで設計変更では、トンネルの側面から横断方向に打つロックボルトとサイドパイルの長さを延長し、トンネルの変形を抑えていた。 おそらくは今回の報道に関係するところだと思われるが、ここでは薬剤注入から鋼管打設への変更については書かれていない。いずれにしても、この2つ目の設計変更が崩落の引き金になった可能性は高い。3つ目は、当初の設計では全断面を一度に掘削する方針だったところを、小径の先進導坑を掘ってから拡幅する工法に変更したこと。 最後に、それでも事故は防げなかったと締めくくっている。(下図参照)

今後、事故直前の設計変更は重点的に調査されるものと思われるが、昨日の国土交通委員会で、福岡市がこれらの設計変更届けを国交省に提出していなかったことが明らかになった。しかも、国交省は事後報告を容認していた。一番難所と言われるところの設計変更が検証されることもなく工事は進められ、大陥没事故は起きた。死傷者こそ出なかったものの、出ていてもおかしくない状態だった。福岡市や事業者のみならず、国の責任は重大だ。この問題について、今月14日からはじまる福岡市議会12月定例会で、中山議員が質問する予定になっている。果たして、市はどのような言い訳をするのか。

 

以下、日経コンストラクションより。

 

 

 

 

 

 

 

《関連記事》

落盤防止対策を事故前に変更 原因究明の焦点に(毎日新聞 2016.12.2)

博多駅前陥没 工法変更の経緯も調査へ 福岡市(NHKニュース 2016.12.3)

博多陥没、直前に設計変更するも防げず(日経コンストラクション 2016.11.17)

 

 


博多陥没事故~路面沈下情報

2016-12-02 21:30:26 | 博多駅前陥没

先月29日、陥没事故原因を究明するための第三者委員会(検討委員会)が、初めて福岡市内で開かれた。西村和夫委員長(首都大学東京副学長)は「事故は複合的な要因で起きた」と見解を示し、年度内を目標に事故原因や再発防止策をまとめた中間報告を公表するという。また、市とJVに対し、第2回会合(1月中旬頃)までに地下トンネル上部にある岩盤層のボーリング調査を行うよう求めている。なお、検討委員会の議事録や資料は翌日30日、国立研究開発法人土木研究所のホームページにすぐさま掲載された。福岡市とは比べ物にならないほど対応が早い。しかも全て公にされている。黒塗りが常態化している福岡市とは違う。どうやら情報公開については心配なさそうだ。

現場では11月18日から(30日まで)行われていたボーリング調査が終わり、昨夜、大成建設が調査結果を公表した。それによると、埋め戻した部分(流動化処理土による改良地盤)の下が緩んでいることがわかった。そこで、近く、薬液注入による地盤改良工事を実施するという。現在、路面のモニタリングは24時間体制で行われており、昨夜から路面沈下状況(計測結果)が見れるようになった。それによると、昨日(1日)20時現在の沈下値は、平均-39ミリ(最大-70ミリ)で26日とほぼ同じ。今のところ大きな変化はないが、この先どうなるかはわからない。それにしても、市民が沈下情報をチェックすること自体、異常な状態だと思うのだが。

《追記》

大成建設によると、5ヵ所のボーリング調査の結果、最終的な沈下量の予測値は-86ミリになったという。つまり今より16ミリ下がる可能性がある。この結果を受けて、明日から地盤改良工事のための準備がはじまる。工期は約4週間。あわせて岩盤層のボーリング調査も行われる。こうなると新たな事故が発生しないとも限らない。今は何より、警固断層地震が起きないことを願うのみ。

沈下情報(随時更新)はこちら

 

以下、第1回検討委員会資料より。 

陥没箇所平面図

 

 

 

 

陥没箇所縦断図

 

 

 

 

陥没場所横断図

 

 

 

 《関連記事》

博多陥没、年度内に原因特定 第三者委初会合「要因は複合的」(西日本新聞 2016.11.30)

博多陥没、地下の砂れき層へ薬液注入へ(日経コンストラクション 2016.12.1)

 

《関連資料》

福岡市交通局。路面沈下に関する情報

国立研究開発法人土木研究所HP