呑む気オヤジ/蔵王山麓蓬莱庵便り

訳アリで山暮らしから都会に戻ったオヤジの日記。合唱も映画もドライブも温泉も、たまには俳句も・・・😄

呑む気父さんの読書感想文・その1 「プラナリア」

2005-09-25 | 本の話
☆9月某日 「プラナリア」 (山本文緒著 文春文庫)
 山本文緒は会社の同僚に勧められて、しばらく前に「パイナップルの彼方」を読んだ。同僚の「女性の深層心理をとてもよく表現していて、すごくいいですよ」の言葉通り、大変面白かった。それで山本文緒が直木賞作家とわかって、受賞作を読みたかったのだが、今回漸く文庫化された。

 本書は表題作を含む短編集。最初の「プラナリア」と次の「ネイキッド」あたりまでは、どうも呑む気父さんには重いというか、つらいというか、読み進めるのがきつかった。20代から30代の女性の赤裸々な情念みたいなものが迫ってきて、おじさんには受け止めきれないような感じがした。それほど深刻などろどろした内容ではないので少々大げさかもしれないが、私は気楽には読めなかった。
 しかしその後のいくつかの話はそれほでもなく(というか父さんが慣れたのか)、すんなりと受け入れることができた。いずれにしても男も女も、女は特に複雑な自分でも御しきれない心情を抱えて生きている、ということかな。

 最後の「あいあるあした」は、珍しく30歳代半ばの中年にさしかかる居酒屋のオヤジが主人公で、安心する。勿論話の中には二人の女性が登場し、その二人とオヤジの絡みがとても良い。「やっぱり事情を抱えて脱サラし、こじんまりした居酒屋を営むオヤジの日常は、それなりに波乱万丈であるのだなぁ~」などと妙に感心したりするのだが、こんな居酒屋をやるのも呑む気父さんの夢だな。
 でも毎晩常連=呑み仲間が集まり、一緒になって呑んだくれていたのでは商売にならない。いくら商売でも、仲間が呑んでいるのに自分だけ素面で肴を作ったりすることは私には無理だ。夢は夢のままだからいいのかもしれない。

 さて今度は山本一力の「蒼龍」を読み始めた。この作品も短編集だが、その第一篇「のぼりうなぎ」の書き出しはこうだ。

 『柝(き)が打たれたあとから、夜回りの長い韻が流れてきた。』

く~っ、たまらんねぇ~。目の前に、江戸の冬の宵闇が浮かび広がる。

 
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黒革の手帳~銀座の手羽先

2005-09-25 | 食べ物・お酒の話
☆9月某日 「比内や」(銀座7丁目)
 久しぶりに夜の銀座を歩いた。と言ってもたまには銀座で飲んだりしているのだが、表通りのそれも居酒屋ばかりなので、中心を歩いたのは本当に久しぶりだ。
 並木通りには高級車がずらりと並び、そこから着飾ったお姉さん方が颯爽と降り立ったりする。レストランのウインドウ越しには、まさにこれから同伴出勤の中年紳士とお姉さんが食事をしていたり、所用で立ち寄ったモンブランショップでは、きりっと髪を結い上げ渋い柄の着物姿のママさんが、黒服風の若者を従えて贈り物の買い物をしていたり・・・。
 昔から自分には縁のない世界である。もちろんそんなお店は分不相応であり私の稼ぎでは到底行けるものではない。それに基本的に女性が隣に侍るような店はあまり好きではない。初対面の女性といろいろ話をするのは面倒だ。
 もっとも、気の置けない40~50才台の美しいママがいる、カウンターだけのこじんまりした居酒屋なんかは理想だな。ママ手作りのお通しなんか出してもらって、ぬる燗を啜りながら、カウンター越しにママと気の利いた会話を楽しむ・・・。いいねぇ~。なんだ、女性のいる店も好きじゃないか?まあ、女性と呑むのは嫌いじゃない・・・。
 はてさて銀座の夜は未だ健在なり。黒革の手帳の本日の欄にはいったいどんなことが書き込まれることやら・・・。

 本日の行き先は「比内や」。チェーン店だが、秋田比内鶏ときりたんぽ鍋を中心としたお店だ。さすが比内鶏は歯ごたえがあって味もしっかりとしており、普通のブロイラーとは全然違う。つくね焼きも、一本ごとに卵の黄身が添えられ美味しかった。
 刺身三点盛りを頼んだら、それぞれがさっと湯通ししてあって完全な生ではなかった。それがちょっと残念。生の鶏は肉にしても肝系にしても、相当新鮮なものでないと危ないと言われるが、やっぱり生が食べたい。却ってもっと大衆的な、小汚い焼き鳥屋あたりのほうが生刺しに出会えるか。
 手羽先を食べたが、これは美味いが手も口の周りベタベタになる。それこそ初めてのデートや気を遣う相手との食事では食べにくい。学生時代に、カップルでラーメンを食べに行くのは、相手を全く気にしていないか、それなりに関係の進んだ相手の場合だ・・・という話を友人がしていた記憶がある。本日の同伴者はそのどちらでもない。でも気を遣わず手羽先にかぶりつける友人は、いいものだ。
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