2007年7月10日付けの地元紙朝刊に、あるオーディオ愛好家が写真つきの4段でかなり大きく紹介されていた。
記事の趣旨は「オーディオ・ルームの開放」で内容は次のとおり。
O市在住のOさん(70歳)は東京で約50年サラリーマン生活を送り、この間数々のコンサートに足を運び耳を鍛えて18年前に郷里のO市に家を建て、音楽ホール専門の設計士にオーディオ・ルームを作ってもらったとのこと。
オーディオ歴は50年、30畳の居間には約4500枚のCD,DVD,LPレコードがあり、一番のご自慢は「2年かけて微調整した4ウェイ・マルチ・チャンネル・システムで「下は20ヘルツ、上は10万ヘルツという人には聞こえない音も再生するのでホールの雰囲気まで伝わってくるでしょう」。
「管楽器の息遣い、ヴァイオリンの弓が現に触れる瞬間まで再生され、オーケストラビットが立体画像で頭に浮かぶ。音楽が波となって”肌に当たる”感じ」だそうで、自宅のオーディオルームを音楽愛好家に開放して一緒に楽しみませんかという記事で、末尾にわざわざ連絡先として電話番号を記載してある。
この記事を見る限り随分ご熱心な方で、とても自分などの及ぶところではないが、この記事を手がかりに失礼とは存じながら勝手にいろいろと類推してみた。
①音楽愛好家とオーディオ愛好家は必ずしも一致しないが、どの程度重なり合っているのだろうか。音楽的なニュアンスに富んだ音なのか、単なる電気回路から出ているだけの機械的な音にすぎないのか大いに興味がある。
②マルチ・チャンネル・システムの調整は、拙宅の3セットによる真空管アンプ3ウェイ方式で経験済みでいまだにクロス・オーバーの調整に苦労している。それが、Oさんは3ウェイどころか4ウェイに挑戦されて調整に自信がおありのようである。自分の経験では、完璧に調整された4ウェイシステムはまだ聞いたことがない。果たしてそんなにうまくいくものだろうか。
③CD等の所有枚数4500枚は半端ではない。オーディオ機器よりもむしろそちらの方に感心する。それもクラシックが主体のようでかなり音楽に造詣が深い方なのだろうが、どのような聴き方をされているのだろうか。バイブル本として著名な「西方の音」などの取り扱いは?
④「下は20ヘルツ、上は10万ヘルツ」の表現からすると、真空管ではなくてトランジスターアンプをご使用されているようだ。トランジスターは物理特性はいいし、良い面は沢山あるのだが欠点としてやや音に潤いが欠けるところがある。スピーカーの活用を含めてその点をどのように克服されているのだろうか。
⑤ご自身の装置と音質に十分満足され、かなりの自信家とお見受けした。自分の場合、オーディオ歴40年を通じての感想だが、オーディオ装置の能力にはやや懐疑的な立場で電気回路に”生の音”を期待するのは到底無理だと思っている。
最近ではやや距離を置いて見つめており、出てくる音が”生らしい音質”で鳴ってくれれば十分で、言い方は悪いが”うまく騙してくれさえすればそれでいい”と考えているのだが、その点、オーディオに対する考え方の相違がありそうな気がする。
とにかく、いろいろ言っても一度聴かせてもらうに如くはない。今は、記事になったばかりで愛好家が殺到しているだろうから、ほとぼりがさめた時点でお伺いしようかと思っているところ。