たしか寺島靖国さん(ジャズ喫茶店主にしてオーディオ評論家)の著書だったと思うが、「オーディオは常に機器を入れ替えて変化をつけていないと元気が出てこない」という趣旨の表現があって、自分にも思い当たる節があり思わず「同感!」と苦笑したものだった。
それに倣って言わせてもらうと「このところ(自宅に)お客さんがお見えにならないのでどうもオーディオに元気が出てこない」(笑)。
筋金入りのオーディオ仲間たち(福岡から3名)のご来訪が4月13日(日)だったので、あれからおよそ3週間あまり。
ブログの中身の方も仕方なく、音楽記事などを織り交ぜながらどうにかお茶を濁していたところ(笑)、同じ「AXIOM80」を愛好するKさん(福岡)からご連絡があって「5月2日(金)はご都合いかがでしょうか?」。
“いやあ、いいも悪いもありません、どんな用事があってもオーディオが最優先ですよ~”と、内心つぶやきながら、ただ一言「どうぞ、どうぞ~」。
2日間ほど余裕があったので、どうせ隙間だらけなのは分かっているもののシステムの点検に怠りなし。
幸い、当日は天が味方して朝からまさに「五月晴れ」。しかし、もちろん「好事魔多し」という側面もある。
行楽日和の高速道路には落とし穴があって、覆面パトカーがウヨウヨしているのだ!
懸念していたところ、案の定、我が家にご到着後(13時過ぎ)の話では「先行する白の旧型〇〇〇〇に不穏な気配を感じて、ずっとおとなしく追尾していたところ、プリウスが勢いよく追い越して行って、即座に拘束されアウトでした。」
いやあ、スピードを出さなくて良かったですねえ!
ついでにKさんから「坊主憎けりゃ袈裟まで憎し」みたいに〇〇〇〇の悪口が飛び出した。
「いつぞやのブログにも書いてありましたが現行のクラウン(アスリート)のフロントグリルはまったく趣味が悪いですね。どうも中国での売れ行きを考慮したデザインみたいですよ。」
目からウロコだった。「そういえば、中国の金満家たちが好みそうなデザインですね~。」
まあ、全面的ではないにしろ、何かしら経済大国・中国での売れ行きを考慮したデザインであることは疑いの入れようがないように思える。これまでのトヨタのデザイン路線とは明らかに一線を画している。
今さらながら国内の遊休地の取得をはじめ、そこかしこに有形無形となって中国マネーの影が日本人の生活の中に忍び寄ってきていることに思わず慄然としてしまう。これからはもっとグローバルな視点を持たねば。
それにしても、いかに営利主義とはいえメーカーのポリシーはいったいどこにいったのか、ただ儲けりゃそれでいいのか!ただし、もし自分が経営者だったらたぶん同じことをするだろうが(笑)。
ところでオーディオだって、中国マネーが席巻してオーディオ界の至宝とされる「ウェスタン製品」が核となって投資の対象となり激しい高騰を招いているのは周知の事実。たとえば名管WE300Bの刻印もの(1930年代)は程度のいいものなら軽く7桁に達するのだから驚く。
音楽どころかオーディオさえもよく分からない連中がむやみやたらに参入してきたら、この小さな市場は混乱の極みでひとたまりもない!「ささやかな楽しみを奪わないでくれ」と叫びたくなるが、そもそも、「音を出して何ぼ」の名品が死蔵されるのは可哀想だし、もったいない。
実は今回の試聴会の主役となったのはそのウェスタンの真空管である。
今回の試聴でKさんが満を持して持参されたのが「VT25A」シングルアンプ。
現在、自作のエンクロージャーに容れた「AXIOM80」を駆動している真空管アンプは大のお気に入りの「刻印付き2A3」(1940年代)。今のところまったく不満なしの状況だが、このウェスタン製「VT25A」アンプ(出力1.5ワット)に入れ替えたところまるで別次元の音がした。
いつも中低音域の量感にやや物足りなさを覚える「AXIOM80」だが、それだってこのユニットの持ち味の一つだと思っていたところ、それが一気に解消して分厚い響きになったのだからもうたまらない。原因はスピーカーではなくてアンプだったのか!
このVT25A(直熱三極管)はずっと以前は軍事通信用として使用されていたもので、細かい仕様は軍事機密として同盟国のイギリスにさえも秘匿していたという。そのため、アンプ用として使用する際にも回路上の適正なプレート電圧などは秘中の秘で、この設定を間違うとキンキン、キャンキャンした音が出たり、球の寿命が短くなったりで碌なことはない。
この辺りが「VT25A」が定評のあるWE300Bに比べて使いづらく、今一つ評判とならない所以だが、このアンプはその辺を熟知した熟練者の手になるそうで、回路をはじめ電源トランス、出力トランスなどがうまくマッチしてツボに嵌ると「さすがにウェスタン!」。
「ウェスタンの音には生命力がありますね!」とKさんが述べられたが、「生命力」という表現に非常に新鮮なイメージを受けた。たしかにウェスタンならではのこういう音をきくと、低音や高音がどうしたとか、音に1枚ベールがかかっているとかの形容が陳腐に聴こえてしまう。
音を形容する言葉はいろいろだが、「生命力」という一言でそれらすべてを包含し超越できることにようやく気がついた。オーディオを40年以上やってきてこれなんだからもう~(笑)。
もっとも、勝手に「生命力」なんて言ったところで、こればかりは実際に体験していただかないとイメージが湧いてこないと思うので何ともはや残念。「百見は一聴に如かず」。
ずっと以前に読んだオーディオ誌で「人間にたとえるとスピーカーは顔や外形に該当し、それに精神を吹き込むのがアンプだ」とあったが、どうやら精神よりは「生命力」という言葉の方がもっとふさわしい気がする。
音は生き物だ!
今回の試聴で改めてアンプの重要性に認識を新たにしつつ「ウェスタン製真空管」に脱帽したが、「刻印付き2A3」もきっといいところがあるはずなので絶対にあきらめないぞ~(笑)。
最後に、KさんはCDトランスポート「ラ・スカラ」(dCS)を購入してから初めてのご来訪だったので、いい機会だとばかりワディアのCDトランスポートと比較試聴をしてもらったがはたして軍配はいかに?
以下、続く。