レコードは遠い昔の話と思っていたら、最近つとにいろんな情報が入ってくる。いずれも新しいテクノロジーによって失われつつある音に光を当てる前向き情報なので結構なこと。
レコードをレーザーで照射して読み取り、音を出す仕組みの「レーザーターテーブル」(以下LT:エルプ社)に続いて、今度はAVの雄ソニーからUSB端子付きレコードプレーヤーが4月15日に発売されることになった。
「PS-LX300USB」という型番で、LXなんて聞くと思わずトヨタのレクサスを連想してしまったが、このプレーヤー(以下PL)はアンプ内臓のフルオートで、アルミ合金製ターンテーブル、ダイヤモンド針のカートリッジという本格仕様。
33回転、45回転にも対応できるもので、一番の特徴はレコードの音源をUSB端子からデジタルデータで出力でき、付属のソフトでCD-RやCD-RWに録音できること。
それに何といっても値段が安い。28,350円なり。しかし何で350円という端数がついているのだろう?
それはともかく、開発の経緯は同社内のオーディオファンから「死蔵しているレコードを活用したい」と要望があり、開発を企画したというが「まさにおじさんに喜ばれるPL。量販店などの反響も予想以上」とのこと。
たしかに自分=おじさんには朗報である。なにせレコードにはことのほか愛着を持って育った世代。とにかく当時の音楽ソースといえば、NHKのFM放送とレコードぐらいのもの。そして、そのレコードがまた高かった。若い時分に乏しい給料の中から少しずつお金を貯めて購入したレコード盤と歳をとって少しばかりお金に余裕が出来て楽に集めたCD盤とではまるで値打ちが違う。
当時のレコード盤は実に貴重品でたしか1枚が2000円前後と記憶しているが、今のCD盤の値段とそれほど違わないようだが、当時と今では貨幣価値がまるで違っていた。なにせ1ドル=360円の時代だからとにかく外国モノは何でも高かった。
したがって、それこそ熟慮に熟慮を重ねて購入した盤ばかりだからすべてが自分にとっての名盤、それも自らの嗜好がハッキリと反映された「三つ子の魂百までも」で今でも大好きな曲目ばかり。結局、自分の音楽史を紐解くようなものである。
さっそく倉庫に入って奥深く眠っているレコード盤を引っ張り出して調べてみた。懐かしさの極みだが、クラシックを中心としたLP盤に加えて、中学~高校時代に熱中していたR&B(リズム&ブルース)がらみのドーナツ盤もどっさりある。たとえばボビー・ルイスの1961年のビルボード誌年間NO.1ヒット曲「トッシン&ターニング」など。
板付基地(当時福岡在住)があったお陰で、毎週土曜日の20時からFEN(Far・East・Network:極東放送)でビルボード誌によるアメリカの最新ヒット曲トップ20のラジオ放送を熱心に聞いていたっけ。
手持ちのクラシックレコードの中には現在でもCD盤に焼き直されていない希少価値のある盤もある。
たとえば、コレルリの合奏協奏曲(OP.6)集(3枚組:イ・ムジチ合奏団)は随分CD盤を探したが今もって販売されていない。
しかし、レコード盤で保有していたものはほとんどといっていいほどCD盤として発売されており購入していたのが分かった。
したがって、このPLでパソコンを通じて録音したCD-R盤と既に発売されたCD盤との音質比較も面白そう。
ベートーヴェンの「大公トリオ」(オイストラフほか)、バックハウスのピアノソナタ32番、フルトヴェングラーの第九などで、もし比較試聴してCD-R盤の方が音質がよければ、俄然面白くなる、まあ、針が音溝をこするサーフェス・ノイズは免れないだろうが、プレゼンス(実在感)は豊かかもしれない。
とにかく約28000円という値段が値段だから仮に200枚のレコードをCD-Rに録音したとしてもコストは1枚当たり140円程度と軽く元が取れそう。しかも自分しか持っていない名盤などは、CD-Rに録音してコピーし興味のある人に分けてあげるなど発展的な可能性を秘めている。オークションを活用すればいい商売になるだろうが、著作権の関係で無理かなあ~。
さて、このソニー発表の「PL」とエルプ社の「LT」いろんな面で対照的なのが面白い。
ソニー社のPL エルプ社のLT
「大メーカー ⇔ 中小メーカー」
「価格28,350円 ⇔ 100万以上」
「デジタル変換 ⇔ アナログオンリー」
「33回転、45回転のみ対応 ⇔ 33、45、78回転(SP)まで対応」
「一般向け ⇔ マニア向け」など。
音質の方は断然LTの方が良さそうだが、価格の方はソニーのPLの方が圧倒的に有利。同じ土俵での勝負にはならないだろうが「一般向け⇔マニア向け」として両者はスマイル・カーブの両極端に位置するのだが、さてどちらがこの時代にアピールするのだろう?