ようやく過ごしやすい気候になりつつあり、音楽とオーディオに親しむ機会が多くなった今日この頃。
6日(火)の夕食前のひととき。
その日のいろんな用事〔主夫業!)が済んでホッと一息というわけで、この時間帯はいつも芋焼酎(カボス果汁で氷割り)をチビリチビリやりながら音楽を聴く至福の時間。
アルコールで自制心を少しばかり麻痺させて音楽を聴くとひときわ”熱くなる”のでこの習慣はちょっと止められそうにない。
音質についてもまあ満足できる範囲で細かい欠点を言うといろいろあるが、取り立ててシステムをどうこうしようという気はさらさらなかった、そのときまでは。
ふと、何のはずみか中高域専用のスピーカーユニットの「アキシオム80」を1本(片チャンネル)から2本にするとどういう音がするんだろうと思いが湧き起こった。
現在のシステムは真空管式のチャンデバ(fo=200ヘルツ、スロープ12db)を活用してウーファー4発に対してアキシオム80を1発。
それをウーファー3発にしてアキシオム80を2発にするというわけで、こちらのほうが数的にはずっとバランスが取れていそうな気がする。
「今よりもっといい音で聴けるかもしれない」、一旦こういう考えに取りつかれるともうダメ。
音楽鑑賞に身が入らなくなってすぐに行動に移したくなる。これはオーディオマニアの方ならお分かりのとおり。
作業としては比較的簡単に済むのも大いに乗り気にさせられる要素のひとつ。ウーファー用の4本のSPユニットのうちの一番上のユニットを入れ替えるだけでいい。
(作業前の写真)
「アキシオム80」はたいへんデリケートなつくりで、入力オーバーになるとすぐに壊れるのでスペアは欠かせない。
なにぶん古いユニットなので手に入れるのに苦労したが2年ほど前に「無線と実験」誌の「売ります」欄で知り合った千葉のSさんから譲ってもらったペア〔2本)を後生大事に保存してあるので心強い。
今回はこれをスペアの身分から解放し、いよいよ晴れの舞台に登場させてやろうという親心(?)。
5時半ごろにカミさんが帰ってきたので「おい、一番上のスピーカーを降ろすのでちょっと加勢してくれ~」。
帰ってきた早々でややご機嫌斜めだったが、とてもひとりでは無理なのでひたすら低姿勢。
ボックスを無事降ろし終えると、すぐに入れ替え作業に取り掛かった。
SPボックスを倒して裏蓋を開け、羽毛の吸音材を取り出し、最上段のユニットの4箇所のネジを外し、SPコードとの接点部分に十分に熱した半田ごてを当てて外す。
次に新たにアキシオム80を容れてネジ締め、半田でコードを接点に固定し、再び木綿袋に小分けした吸音材をぎゅうぎゅう詰に押し込んで裏蓋を閉じるといった”夕飯前”の流れ作業で40分ほどで終了。
夕食をはさんで一休みしたあと、カミさんに「今度はボックスをSP台の上に載せるので、もう一度加勢してくれるかなあ」と猫なで声。
ところが、二人でいざ取り掛かってみると肩辺りまでは持ち上がるもののそれから上にどうしてもボックスが上がらない。
北海道産の5cm厚の楢の木で作ったボックスはとても重たくて、明らかに腕力不足。
自分が体重54kg〔身長170cm)、カミさんが体重41kg(身長159cm)と、二人ともヤセギスの部類で非力なのでどだい無理な相談だった。
「とてもダメだわ」とカミさんが早々にギブアップ。
隣家の仲良しのTさんに応援をしてもらおうかと考えたが、70歳過ぎのおじいちゃんなので腰でも痛められたら取り返しのつかないことになる。
早く新システムで聴きたいのはヤマヤマだが、夜も更ける一方で泣く泣く諦めざるを得なかった。
翌朝、8時過ぎになってSPボックスを作ってくれた会社に勤め屈強な体格の持ち主で、気心の知れたSさんに「10分ほどで済む作業ですが~」とお願いすると、「いいですよ、今から行きます」とひとつ返事で来てくれた。
二人でヨイショと抱え上げてやっと聴ける状態になった。Sさんには「たったこれくらいのことで」と固辞されたが、心ばかりのお礼をさせてもらった。
(作業後の写真)
さあ、やっと試聴できる状態になった。果たしてどんな音がするんだろうか。こういうときはいつも緊張とスリルで心臓の鼓動が早くなる。
まず「春の祭典」(ゲルギエフ指揮)を聴いてみたところ、明らかにアキシオムの受け持つ境界の200ヘルツ付近の中音域の音量が豊かになって低域とのつながりが良くなっている。
この辺はこれまで一番不満に思っていたところで、〔1本のときに)ボリュームを上げて中域の量を増やそうとすると同時に高域がうるさくなるのでジレンマに陥っていたところだがこれで見事に解決。
「良し、良し!」
ただし、アキシオム80(口径20cm)が2本になると単純に2倍の音量になればありがたいのだが、そうは問屋が卸さない。
音の強さは物理学的に√2倍(=1.4142・・・)となるのでおよそ4割り増しの結果になるがそれでも効果は大きい。
「やはり入れ替えて正解だった」と納得だが、クラシックはいいものの、ジャズに限っては以前よりもちょっと落ちる気がした。
高域の出るポイントが2箇所になったため音像が分散してちょっとあいまいになる印象で、やはり高域はただ一点の音源がいいようだ。
上段のアキシオムだけサランネットを被せて高域部分だけ抑えてみる方法があるので試してみよう。
結局、今回の変更は欲目に見て「三歩前進、一歩後退」といったところかな~。