8日(土)の10時ごろに日課のウォーキングをして帰宅したところ、即座にカミさんから一声、「代引きで小荷物が届いていましたので立て替え払いをしておきましたよ~」。
「失敗った」、こんなに早い時刻に到着するとは思わなかった。どなたでも同じだろうがオーディオ製品を購入するのは家人には知られたくないものである。まあ、今回は大した金額ではなかったので事なきを得た。
その昔、薄給のサラリーマン時代にタンノイ・ウェストミンスターを購入することを自宅に配送される前日まで言い出せず、とうとう1週間ほど口をきいてもらえなかった悲しい思い出が今でもときどき蘇る(笑)。
さて、今回購入したのはムンドルフ社(ドイツ)のコイルである。一番、直流抵抗が少ない逸品。
左側のコイルの左下の端が一部欠けているが、これは発送前に業者から「性能に関係ありませんが、1000円値引きしますので我慢してください」といった趣旨の一方的なメールが事前に届いていた。たしかに性能に関係がないとはいえ、神経質な人ならおそらくキャンセルすることだろう。
自分の場合、性能本位で音さえ良ければ見かけにはこだわらないので、もちろん「それで良し」とした。後で瞬間接着剤で”かけら”を張り付けることにした。
さてこのコイル、折角購入したものの、ちょっとした発注時期のタイミングの差でもはや無用の長物と化しつつある。
以下、ちょっと専門的な話になるが経緯を説明しよう。
☆ 第一段階(発端)
我が家のSPユニット「AXIOM80」(以下、「80」)は周波数200ヘルツ以上(6db/oct)を受け持たせているが、どうも(200ヘルツ以下の)低音域との繋がりが今一つよろしくない。つまりこの辺の周波数の豊かさが足りない。「繊細で、ふっくらした艶やかな響き」を出すにあたって、「ふっくら」感が足りない原因となっている。まあ、欲を言えばキリのない世界だがこの辺が解決すれば「鬼に金棒の音になるのに」という思いはどうしても断ち切れない。
☆ 第二段階
そこで、「80」専用のプリアンプのボリュームを上げてやれば即座に解決する話だがことはそう簡単にはいかない。我が家の「80」は残念なことに「オリジナル仕様」と違って「復刻版」なのでそのせいか、ソースによっては最高音域がちょっとうるさく感じることがある。したがって、プリアンプのボリュームを上げると、最高音域までうるさくなって始末に負えない。
☆ 第三段階
この傾向は手持ちのパワーアンプ(真空管)「WE300B」、「PX25」のいずれのアンプを使っても同じ状況を示す。もちろんこれは球のせいばかりではない。真空管アンプの特性は出力トランスや回路によっても大きく左右されるので、我が家のアンプでは、たまたまそういう傾向にあるという条件下での話。
☆ 第四段階
そこで、一計を案じて「80」のSPコードにコイルを挿入して最高音域を抑えればプリアンプのボリュームを上げてもうるさくならず、その一方、200ヘルツ付近が適当に膨らんでくれるだろうと思って(このコイルを)購入した次第。
このコイルは数値が0.15mh(ミリヘンリー)なのでこれをSPコードのプラス線に挿入すれば「80」のインピーダンスが公称15Ωなので周波数早見表から計算するとおよそ16000ヘルツのハイカットの値となる。
これはもちろん理論上の話でこれで最高音域がうるさくなくなればベストだが、オーディオは実際にやってみなければ分からないことの方が圧倒的に多い。これで満足のいかない結果が出れば0.2mh前後のコイルを別途購入して再び実験せざるを得ないのがつらいところ。
コイル購入の経緯は以上のとおりだが、前回のブログに登載したように今回修繕してもらった「KRー52BX」アンプがそういう懸案事項を吹き飛ばしてしまった。とにかく「80」に用いたところ、まったくコイルの必要を感じないほど念願だった「ふっくら」感が良くなった。その一方で「繊細、艶やかさ」が犠牲になっていることもさらさらなし。
1週間ほど前に「KR-52BX」アンプが我が家に届いておればコイルを発注しなくて済んだのに~。ほんのわずかの差だった。
とにかくこのアンプは我が家の真空管アンプの勢力地図を一気に塗り替えてしまったのはたしか。
あまりに好結果が出たものだから今度は欲を出してJBL3ウェイシステムの中域を担っている「375」ドライバーに接続したところこれまた、あっと驚くような音が出てきた。
こうなると、「KR-52BX」アンプからの「80」と「375」への「スピーカー切替機」が欲しくなる。
奈良のMさんに相談してみると、「手動が一番だと思います。バナナプラグをお使いでしたら手動でも苦にならないと思います。検索してみましたところスピーカー切替機を使うと音が変わってしまうと嘆いていた方がいらっしゃいました。(某メーカーのものでした)。やはり接点が増えるのですから使わないのが無難なようです。細かく言えば、バナナプラグも使わずにターミナルに直付が理想でしょうね!」
そこで当方から二の矢を放った。
「直接、線材を繋ぐのがいいのでしょうが、バナナプラグの場合SPターミナルとの接着面積が大きくなりますね。その点で、メリットもあるのかなと思ってますがどうですかねえ。非常に細かい話で恐縮ですが。」
すると次のような回答が返ってきた。
「私見ですが、たしかに面接触は接着面積は大きくなりますが、面と云えども点接触の集まりになります。接触には、接触圧も重要になります。バナナプラグですとスピーカーの線が圧着(異種の金属の接触はあまり良いとはいえない)して接続されてバナナプラグの本体金属を通過してアンプのSPターミナルに軽く面圧接続されます。
経路をたどりますと、線材→バナナプラグ本体→軽圧接触 となります。バナナプラグを使用しなければ 線材→やや点接触でありますが、今度は締め付けますので高圧接触になり、ここにもシンプル・イズ・ベストが成り立つように思います。」
何かを得れば何かを失うのがこの世のならい。音質は多少損なわれるものの便利さを優先して、当面バナナプラグを使って「80」「375」の両方のユニットのつなぎ替えを行うことにした。
ムンドルフのコイルの話から取りとめのない話になってしまったが、このコイルはまだまだ使い道がありそうで、「375」ドライバー(16Ω)のハイッカット用に使えば12000ヘルツ(6db/oct)の値になるので、ツイーター「075」のローカットをいじって楽しむ手段も残されている。
転んでもただでは起きないぞ!(笑)