政権の広告塔に仕立てる
2015年4月28日
株価が何かの節目にタイミングよくポンと跳ね上がり、大台に乗る傾向があることが気になってしょうがありませんでした。今回の地方統一選挙がまさにその好例でした。安倍政権は発足以来、株価重視内閣でしたから、広告塔に使っているに違いないと確信しました。
4月の地方統一選は12日(知事選)と26日(市長選)の二度でした。12日の直前の金曜日に日経平均は一時2万円台をつけ、経済紙の日経は「2年半で2・3倍、世界で突出」と大喜びでした。翌週からだらだら小幅の下げ局面に転じました。次が26日の直前の水曜日に2万円台を回復し、日経は「15年ぶりに2万円台(終値も)」と、ばかでかいグラフを1面トップに掲げ、満面の笑みを浮かべているようでした。与党側が勝ったにもかかわらす、月曜日に大台を割り、また少し回復するという小動きとなっています。
誤解のないように申し上げておきますと、株価は政権の思い通りに操作できるものではありません。トレンドは景気政策、金融政策、為替動向、企業収益の動きなどを基本にした相場の心理学で決まります。だたし、節目では市場にちょっとした刺激を与えると、「うん、うまくいった」ということがありうるのです。
意図的な株価操縦か
「政府はかなり意図的にやっているなあ」と思ったのは、現役を退いて間もない日銀の幹部の話を聞いたときです。安倍政権の発足以来、日本の株価の上昇は官製相場によるところが大きいといわれてきました。そのことが話題になると、「証拠めいた動きが観察される。株価がかなり下落しそうになると、年金資金の動きが入る。それも市場の引け(終値)でやるから、効果は大きい」というのです。
年金資金とは、年金積立管理運用独立行政法人(GPIF)のことで国民の年金掛け金130兆円を運用しています。厚労省管轄で理事長は政府の任命です。国債の運用主にして安全運転に徹してきたのを、官邸主導で規制を緩め、株式運用の制限比率を大幅に緩和(25%に倍増)しました。これで株を思い切って買えるようになりました。そのほか簡保資金、異次元金融緩和の本尊の日銀も株を買い、官製相場を押し上げています。
実力を伴った株価上昇(景気や企業収益の好転)なら歓迎できます。それが超金融緩和をバックにした官製相場が正体だとすると、喜んでばかりいられません。一番いけないのが、選挙直前に株価の大台を塗り替えることです。有権者に株高すなわち好景気という印象を与える行為は、ある種の株価の偽装です。
もっとも本当に偽装工作されたのかは断定できません。たとえば、「選挙前に官製相場が出動しそうだ」と投資家が思えば、官製相場側が何もしなくても、そうなるでしょう。与党が大勝しそうだという予測がなされれば、株高の材料になります。
それどころか「崖っぷち」
今後、株価の上昇基調は続いていくのでしょうか。これが問題です。経済同友会の代表幹事に就任したばかりの小林喜光氏は「日本経済は崖っぷちに立っている」と、大胆な発言しました。財政危機、エネルギー、人口問題などが深刻で「われわれは不都合な事実から目をそらすことができない」と、いうのです。
大手格付け会社(証券の信用度調査)フィッチ・レーティングは日本国債の格付け(ランク)をひとつ下げ、中国以下とすることを27日に発表しました。目先の株高を喜んでいられないのです。安倍政権は「日本国債の信用度が低ければすでに異変がおきているのに、そうなっていない」が口ぐせです。政治家はそういう言い方をするのが商売ですから、信じてはいけません。
すでに警戒すべき予兆
警戒すべき予兆が現われています。主要国からなるバーゼル銀行監督委員会は、国債保有に対する規制を強化する方針です。日米欧ともに中央銀行、民間銀行が空前の規模の大量の国債を保有しています。国債の信用度が落ち、購入する人が減り、価格が下落(金利上昇)すると、保有資産に巨額の損失が発生しかねません。そうした事態に備えていこうという警告です。
屋根に積もった豪雪(超金融緩和による過剰な国債)がかろうじて均衡を保っているのが現状です。ちょっとした揺れで雪が崩れ、家屋は次々に倒壊する恐れはあるのです。国債市場の波乱は株式市場に直ちに波及します。政治的な動機から株価を押し上げれば上げるほと、屋根から落下する雪の量が増え、被害は大きくなることこそ心配しなければならないのです。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます