民生より軍拡優先を批判すべきだ
2023年7月20日
中国の4-6月のGDP(国内総生産)が前年同期比6・3%にとどまり、中国経済の回復が鈍い。日本の新聞も大きく報道し、「世界経済の成長にも波及」と懸念しています。懸念すべきことなのでしょうか。
軍拡路線と対外的な膨張政策を続け、米国との覇権争いに勝とうとしている中国の経済が減速し、経済力の面から軍拡にブレーキがかかるようになれば歓迎すべきことなのです。日本を含む西側諸国、軍事的支配が及んでいる途上国にとっても、憂慮するすべきことではないと思います。
米国に次ぐ世界2位の規模の中国経済の動向に注視することは必要です。2013年ー21年の世界全体の経済成長に対する寄与度は39%で、日米を含むG7(主要7か国)の合計を上回る(読売新聞)そうです。事実は事実として、報道するのは構わない。問題はその評価なのです。
特に日経新聞の中国経済報道は、いったいどこの国の新聞なのだろうかと疑問に思ってしまう。日本人の手による記事なのに、まるで中国人の目線で書いている。1回ならともかく、再三再四なのです。
中国経済の動向を経済的な視点からだけ書くことは誤りです。中国の覇権主義、軍拡路線と絡み合っている中国経済に対しては、複眼的な思考、分析が欠かせないと思います。
日経社説は7月18日、「中国は必要な景気刺激策をためらうな」という見出しで「先行きを楽観できる状況にない。景気の失速を防ぐために、習近平政権は時期を逸せず、必要な対策を打つべきだ」と、指摘しています。逆です。中国の景気失速はわれわれからすると、歓迎に値する。
「必要なのは財政を使った需要の底上げだ。舵取りを誤れば、中国経済だけではなく、世界経済に大きな影響を及ぼす」と、日経は主張しています。「世界経済の中国依存を修正する姿勢を加速しよう」が正解です。中国の軍事的、外交的な目に余る膨張政策が眼中にない社説は困る。
少しさかのぼって、6月18日にも社説「中国経済の回復力の弱さが心配だ」の見出しで、「ゼロコロナ禍から抜け出した中国経済が息を吹き返し、世界経済をけん引するー年初に膨らんだそんな期待は今や風前のともしびだ」と、日経は心配している。風前の「ともしび」になっていいのです。
クライナ侵略を続けるロシアを黙認し、プーチン大統領を諫めることを習近平政権はしない。ウクライナ支援で西側が支援疲れに陥るのを期待し、侵略の重荷でロシアの中国依存が高まることを歓迎する。そんな中国に世界経済を今後もけん引してもらいたいと、日経の記者は思っているようだ。
4月19日にも、社説「習近平政権は政策不況を繰り返すな」の見出しで「1-3月の成長率は4・5%。中国政府が23年通年の目標に掲げる『5%前後』に届かず先行きを楽観できる状況にはない。世界経済の安定を守るためにも、中国は政策の失敗を繰り返さないでほしい」と主張しました。
中国の経済成長率が減速していったほうがいいのです。世界の軍事費のランキング(2021年)は1位米国=8006億㌦、2位中国=2930億㌦、3位インド=760億㌦、ずっと下がって日本は9位=540億㌦です。
円建てにすると、「中国の国防費30兆円、前年比7・2%、経済成長率目標は5%」(23年3月)ですから、国防費は日本の6倍です。経済成長率を上回る軍拡路線を走っているのです。中国の国防費は、発表される統計以外にも、あちこちに分散されていますから、実際はこれより大きい。
中国の膨張路線に悩まされている日本の新聞なら、「軍拡路線を改め、民生分野にもっと予算を配分すべきだ」と批判すべきでしょう。日経社説は昨年7月18日にも「中国は経済浮揚へ政策の抜本的見直しを」と書きました。よほど中国経済の減速が心配でならないらしい。
社説ばかりではありません。今日20日は、「中国『産業鎖』の夢とワナ」と、分かりにくい見出しを付けた大型解説で、本社コメンテーターの肩書の記者が「2桁成長の時代は終わり、経済は減速が目立つ。国民の不満が高まれば、矛先を外に向けるのは統治者の常だ」と書いています。
「矛先を外に向ける」は依然から既に中国がやってきたことです。これから「矛先を外に向ける」ことになるという認識は錯誤している。
日本のメディアが主張すべきは、「人口減、経済減速の時代に入った中国は、国防予算を削り、民生重視の予算編成をすべきだ」、「世界における覇権を狙う中国への経済依存を下げることがわれわれの国益にかなう」ということなのです。
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