冷め切った年越しソバ
2014年11月26日
安倍首相の解散表明をうけてメディアが一斉に世論調査をしました。世論、つまり社会の風は暴走し、政治をあおることもあるし、意外に冷めってしまっているときもあり、今回は後者のほうだと思います。さらにいえば、冷め切った年越しソバというのが正解かもしれません。
今朝の新聞をみていましたら、著名な政治学者で東大名誉教授の人の「解散は首相の専管事項であり、勝機を狙う以外に理屈も理由もいらない」というコメントが目に入り、はっとしました。「おいおい、そんなことをいってしまっていいのかい」という印象です。首相の動機、真意はそうでしょう。第三者の政治学者はそれをどう評価するかが使命のはずです。東大の有名な先生まで、冷めてしまったのかと、がっかりしました。
短命政権のトラウマ
世論調査のデータを見ますと、今回の解散には反対が多いものの、野党が批判票の受け皿にならず、長く続いた短命政権による政治の混乱というトラウマが尾を引いているようで、有権者は「とにかく政治の安定を」という選択を考えているようですね。
「選挙に非常に関心がある」、つま「必ず投票に行く」は、NHK調査では23%に過ぎず、2年前の衆院選に比べ17ポイント(%)も下がりました。その通りになれば、投票率はかなり低くなります。安倍首相が「この道しかない。アベノミクス(安倍政権の経済政策)に対する信を問う」といっているアベノミクスの評価は、朝日新聞は「評価しない43%、評価する38%」、日経は「評価しない51%、評価する33%」です。政権よりのデータがよくでる読売新聞でも「評価しない46%、評価する45%」ですから、日銀の異次元金融緩和政策を含め、有権者は冷めているのです。安倍政権に対する評価は、「支持、不支持」がほぼ半々です。
有権者は困り果てている
解散そのものに対しては、日経が「反対51%、賛成23%」、読売は「評価しない65%、評価する27%」と、さんたんたるテータです。「なんのための解散か」、「大義なき解散」と酷評される受け止め方がそのまま反映されています。アベノミクスはまだ2年、前半戦が終わりかけた段階に過ぎません。経済が好循環の局面に入っていけるのかは、後半戦を待たずに判定は下せません。前半戦の成果も評価が割れています。消費増税の先送りにしても、なにも解散で信を問う必要がないし、その先には「先送りした分だけ歳出削減は厳しくなる」という現実が待っているのに、その姿を明らかにしていません。
そんなに安倍政権への批判が強いなら、選挙では相当な苦戦が予告されるのかなと想像すると、違うのですね。自民党への支持は、朝日が「自民32%」、日経「35%」、NHK「40%」、読売「41%」と、民主、維新、公明などをはるかに引き放し、自民は1強なのですね。
世論は冷めている時は、意外なバランス感覚を見せます。今回はそうでしょう。アベノミクスへの評価、解散への評価では、突き放した見方を示しても、実際の政治選択では、「政治の安定」(朝日調査で50%)を優先しつつ、「野党が議席を増やす」(同36%)が「与党が議席を増やす」(18%)を圧倒し、野党はもっと頑張ってもらいたいという気持ちなのです。
有権者は困りはてているのです。そんな中で「アベノミクスへの信認を」、「公明党が実現させる軽減税率」という掛け声ばかりが聞こえてきます。小泉政権に対して聞かれた「政治を単純化しすぎるワンフレーズ・ポリティックス」という批判が今また必要なのかもしれません。
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