ドイツは地球環境を敵に
2015年10月1日
欧州最大手の自動車メーカーVWのトップの言葉ですかねえ。あまりの白々しさに絶句しました。「会社のために身を引くことにした」、「こんなショックなことはない」、「これほどの規模の不正が行われていたとは、信じられない」、「不正ソフトで検査を逃れていた事実を自分は把握していない」などなど。
全部、間違いかウソですよ。どうせ辞任の挨拶をするなら、せめて「自動車ユーザーに申し訳ないことした。社会のために身を引く」であり、「ドイツの信頼を失墜させた責任を負って身を引く」です。地球を敵に回した重大な不正を犯しながら、「会社のために身を引く」という認識の浅さに驚きます。
トップの認識の浅さにショック
報道によると、トップたちは10年かあるいは4,5年前には不正を知っていたらしく、「事実を把握していない」はウソでしょう。「こんなショックなことはない」は、よくまあそんなことを口にできたものです。世界を代表する超一級の企業トップの言葉に、ショックを受けるのはわれわれのほうです。
そもそも部品メーカーが開発用に限るとして、納入した今回のエンジン制御ソフトがなぜ、大量の車に搭載されたのかも謎です。黙認していたのでしょうか。
なぜVWがこのような不祥事、というか犯罪的行為を犯したのか、どうしても分りませんでした。「環境規制が厳しい米国市場におけるシェア争い」、「利益をあげなければならない圧力」、「多種類の車種の部品の共有化が裏目に」、「環境基準より耐久性、燃費を優先」。それぞれもっともな指摘です。そうした解説、分析を読んでいても、「それにしてもなぜ、そんな大それたことを」の謎は解けませんでした。そのはずです。この程度の認識を持ち、軽薄な言葉を吐く経営者が企業のトップにいたことに最大の理由があるように思います。
社内の権力争いから焦り
創業家出身のトップと権力争いをして、追い出し2007年、CEOの座に座りました。企業トップの権力闘争、その道具としての業績至上主義に徹しているうちに、不正が不正に見えなくなったのでしょう。3代にわたって社長が不正決算を社内に指示し、それがばれて、一斉に退陣した東芝の事件と共通する背景があります。
この会社の自己資本は13兆円だそうです。米政府の制裁金2兆1600億円のほか、42万台分のリコール費用、販売低迷などのコストはカバーできるという解説があります。どうでしょうか。そんな次元の話で済みそうにありません。
ブラックスワンとの見方も
「VWの将来は予測不可能」というのが正しいところではないでしょうか。金融市場では「ブラックスワン」(予測不可能)に相当するとの見方が浮上しています。株主代表訴訟、値下がりした車の賠償、長期にわたるであろう販売不振をどう計算するのでしょうか。さらに販売台数の4割を占めるという中国の出方は不気味です。売った車の補償ばかりでなく、大気に対する環境汚染の賠償を中国が求めてきたどう対応するのでしょうか。経営危機は底知れない危機の道をたどるかもしれません。
悲観的な見方をする人は、「ドイツ政府による救済、資本注入」がいずれ避けられなくなるといいます。企業レベルの問題にとどまらなくなるでしょう。CO2の排出規制に厳しい欧州の中心がドイツであります。ドイツは脱原子力発電の急先鋒の国です。「ドイツといえば環境重視」「環境重視といえばドイツ」です。そのドイツの基幹企業が窒素酸化物を基準の40倍も放出する車を生産、販売していたとは、恐ろしい裏切りです。国家の責任問題にも波及するでしょうね。EU(欧州連合)も2年前に不正を把握しながら、放置していたとの報道もあります。不思議ですね。
「VWのブランド失墜」、「エコカーの信頼動揺」、「顧客を欺く悪質な行為」ではすみません。世界共通の優先的な課題である地球環境の保護、大気汚染の抑止を敵に回しました。
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