だから西側はなめられる
2015年3月28日
中国主導のアジア・インフラ投資銀行の設立は、構想力でも、日米欧に対し圧倒的な力の差を見せつけています。アジアの途上国ばかりでなく、ヨーロッパ諸国も一斉に加盟を表明し、日米が取残されてしまい、あせっています。これまでの議論を拝見していますと、もっとも重要な部分が忘れられています。これでは中国になめられるのは当然でしょう。
この銀行は資本金(1千億ドル、12兆円)で、建設、通信、交通などのインフラ整備のおカネを貸すことにしています。アジアのインフラ整備には毎年7300億ドルもの投資需要があるそうで、世界銀行やアジア開発銀行など既存の国際機関の融資では対応仕切れません。
つまりアジアにはあふれるほどの投資対象があるのに、おカネがまったくたりない。そこに目をつけ、新しい国際金融秩序を中国主導で作っていこうというのです。たまりすぎた外貨準備(ドル中心)を使うのにもちょうどいいと考えているのです。
カネ過剰の先進国、カネ不足の途上国
「そういうことなんだな」と思ってはいけません。「ちょっと待てよ」ですね。日本の異次元金融緩和をはじめ、日米欧はデフレ阻止、景気浮揚のために、これまでにない規模の超金融緩和をしています。それなのに、特に日本などでは、実物投資におカネがまわっていかず、株や土地などばかりにおカネが向う。途上国のインフラ整備にはまずおカネはいかない。
米国も株高で潤い、景気もよくなってきたので、そろそろ超金融緩和から転換(つまり出口戦略)しなければならないのに、株や債券など、マネー市場に与える影響を恐れ、及び腰なっています。中央銀行がデフレ脱却、景気刺激のために、資金をマネー市場に過剰に供給し続けているのです。欧州はマイナス金利、日本はゼロ金利、米国も超低金利ということは、おカネがあり余っている証拠を意味します。
現代資本主義の大問題
日米欧では、経済が成熟し、あり余るおカネが、それこそインフラ整備、工場建設などになかなか向わないのです。西側先進国は極度のカネあまり、アジアなどの発展途上国は相当な資金不足という対照的な現象が起きているのです。これこそ現代資本主義の大問題です。そこを中国に突かれたのですね。中国は自分の国際的な影響力も高めることができます。
アジアインフラ銀行への参加表明は、多くはアジア諸国で、インド、インドネシア、タイなど2,30か国にのぼります。英独仏伊などの欧州諸国は加盟すれば、入札などでインフラ整備の事業を受注したいという思惑です。 米国に近い韓国も加盟に手を上げたのも、仕事欲しさです。
アジアにはそれほどの資金需要、投資対象があるのに、なぜ超金融緩和の日米欧からおカネがまわっていかないのしょうか。ここが極めて重要な部分です。先進国のお金は主に目先の利ざや稼ぎを狙った短期資金でしょう。途上国は投資にリスクもある長期資金を求めています。欧米型のマネー市場に資金をゆだねていると、本当に必要なところにおカネが行かないのです。
もっと本質的な議論を
アジアインフラ銀をめぐる議論をみていますと、「中国が支配力を握り、融資や審査基準が不透明になる」、「理事会もなく、組織運営や意思決定にプロセスがあいまいである」、「環境、人権など社会的配慮がきちんとなされるか疑問」などが主なテーマですね。特に日米は中国の影響力の増大を嫌っています。アジア開発銀行の二大出資国(総裁は日本人)でもあり、影が薄くなるのがいやなのです。
日本は、麻生副総理が「検討する」といってみたり、「中国の返事がないので慎重に考える」といってみたり、優柔不断で、だらしないですね。最近では、政府は「アジア開銀との協調融資もありうる」とかいっています。
中国の外貨準備高は3兆8千億ドルで世界一位、大半を低利の米国債で運用しています。それを新銀行の資本金や融資に回そうという考えでしょう。日本は中国に次ぐ世界2位で、1兆2千億ドルの準備高です。主体性を持つべき地位にいるのに、安倍政権は米国に頭があがりません。
この段階になって焦るくらいなら、早くからアジア開銀の資金規模を増やすことを考えておくべきだったでしょう。もっと本質的な課題は、中央銀行がいくら金融緩和しても、企業買収や資産投資にばかりおカネが回りやすいという欧米型マネー市場のあり方をどう考えるかです。安倍政権は「戦後最大級の改革に取り組む」といったのですから、これを機会に世界の発展につながる緩和マネーの使い方について、きちんとした構想を持つべきですね。
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