圧力団体といわれかねない
2015年9月21日
安全保障法案の国会審議が熱気を帯び、まもなく採決へという記事で連日、紙面が埋まっていましたね。18日の朝刊をめくっていて、「むっむっむっ」、「????」と思いました。こんなことってあるのだろうかと。
読売新聞は2面左肩に8段組みで「新聞協会が声明、財務省案に反対、軽減税率適用求める」の記事と、新聞協会の声明全文が載っておりました。日経新聞は42面左肩に「新聞協会声明、新聞に軽減税率を」の見出しで、10段組みです。やはり声明全文も掲載です。朝日は何度、めくっても記事を見つけられませんでした。
恐らく17日あたりに、新聞協会理事会(社長クラスが出席)なんかが開かれ、声明を採択したのでしょう。編集局の現場は安保法案がいつ採択されるのか、取材は深夜、徹夜に及び、ほかの記事をすっ飛ばしても、安保問題に焦点をあて、紙面のやりくりに苦心していたころです。
協会声明の掲載に緊急性は?
新聞協会の声明はそんなに緊急性、重要性があったのでしょうか。少なくとも読者側からみると、なかったでしょう。載せるなら時期をずらせばいいのです。
さらに声明文を読んでみると、消費税10%時(17年4月の予定)にマイナンバーカードを使った税金還付の財務省原案(飲食料品に対象を絞る)への批判に、行数の5分の4があてられています。5分の1が「民主主義と文化の基盤になっている新聞、出版物に軽減税率の適用を」です。
財務省原案は公表後、実務的、事務的に相当な欠陥、無理があることが明らかになりました。新聞社が個別に問題点を指摘し、反対するのなら分ります。問題は新聞協会として、財務省案に反対するような声明を出すことの是非です。消費税そのもの、あるいは財政再建策、法人税引き下げなど特定の問題の是非で、新聞協会が声明をだしたことはありませんし、だしてはなりません。
なぜそうしたかというと、財務省原案が成立すると(すでにその可能性は消えています)、軽減税率制が採用されず、新聞への適用も実現しなくなるからです。新聞・出版物のうち社会的に有益なものに限り、軽減税率を適用することはあっていいでしょう。安保法案騒動の時をはずし、時期をみてそう主張すればいいのです。わたしもそれならば賛成です。
あまり例がない声明文の構成
新聞協会として、還付金給付の財務省案を延々と、批判するのは、新聞の公器としての役割の放棄です。そんなことはやめて、「新聞に軽減税率を」と、従来からの要求だけを書けばいいのです。財務省案をつぶせば、軽減税率が再浮上し、新聞が対象なる可能性が復活するというのが新聞界の期待でしょう。これではまるで圧力団体の行動様式との批判を受けかねません。残念な協会声明でした。
安倍首相は安保法案ついて「丁寧に説明する」を口ぐせにし、新聞はなんどもそうした発言を掲載しました。昨年4月の消費税引き上げ(8%)で、新聞の販売部数がどの程度減ったのか、あるいは各紙が力を入れているネット新聞、ネット情報が紙の新聞をどの程度、減らしているのか。新聞社は丁寧に説明する責任があります。
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