たどり着いたのは出口の入り口
2024年3月20日
日銀は、2013年から始めた大規模金融緩和政策の骨格を修正しました。植田総裁は「大規模な金融緩和は役割を果たした」としつつ、「緩和的な環境は維持する」と、矛盾するような発言をしました。
アベノミクス、黒田・前総裁の金融政策の遺産があまりにも大きく、一気に正常化できない。そう言いたかったのです。「自分がやる金融政策は、黒田氏の継続ではない。区切りをつける」という意味です。とにかく異次元金融緩和(大規模金融緩和)を転換し、出口には向う。
私は「異常な金融財政状態を正常化する出口には差し掛かったものの、その出口は途方もなく長い。出終えるのに20年ー30年はかかる。数十年かかるという意見もある」と思います。
何をもって正常化というのでしょうか。「人為的な異常な低金利はやめ、金利機能を復活させる」、「日銀による大量の国債購入(財政ファイナンス)はやめる」、「物価上昇の原因になっている円安誘導はやめる」、「日銀が株式市場の最大の株主(7%)であることをやめる」、「膨張的な金融・財政政策に甘えてきた企業を市場の競争にさらす」、「企業の生産性を引き上げる」など、いろいろある。
つまり「出口の入り口」に差し掛かったのにすぎない。「本当に出口を出られるのに、何十年もかかる」ことを識者、メディアはもっと指摘すべきです。政治権力、政府がやったことを厳しく論評すると、その識者、メディは干される。そのことが怖いようです。
今後も日銀は国債を月額約6、70兆円を購入する考えです。1000兆円を超す長期国債残高のうち半分を日銀が保有しており、その方針を続けます。日銀はETF(上場投信)を時価で70兆円(簿価37兆円)も保有し、日本で最大の株主を続けるようです。これを徐々に減らしていくことができるか。
思い起こすべきなのは、2013年1月の「デフレ脱却と持続的な経済成長の実現のための政府・日銀の政策連携について」とする共同声明です。4本柱のうち①日銀は消費者物価上昇率を2%とする②政府は成長力強化と持続的な財政構造の確立に取り組むの2つが需要です。
このうち正反対の方向に走ったのが政府の役割です。共同声明の作成に当たって日銀が強く求めた「持続可能な財政構造」の確立に政府、政権はやる気をみせていないとしか思えません。恐らく、デフレ脱却を日銀に押し付けておこうという考えだったのでしょう。連携などしていない。
日銀が大規模金融緩和の転換を図ろうとする時に、政府はこの共同声明に言及し、どこの主要国にもある「財政政策を監視・助言する独立機関」の設置を表明すべきでした。
今後、政策金利が0-0・1%に上がり、長期金利の水準(これまでは1%が上限)を市場機能に任せると、国債金利も上がる。国債利払い費は23年度の7・6兆円が33年度には22・6兆円に増えるとの試算があります。
その一方で、社会保障費(年金・医療・介護)、防衛費、子育て費用が増える。それに利払い費の増加が加われば、財政はパンクする。今までのように日銀の財政ファイナンスに頼るわけにはいかない。どうするか。岸田首相は今回の日銀決定に対し、「適切だ」と語りました。そんなに簡単なことではないのです。
「30年以内に70%の確率」とされる東南海地震、首都直下型地震、富士山大噴火であったら、どうするのか。
日銀も「2%物価目標」にこだわるべきではない。「1-2%程度」という幅のある目標でいい。「2%割れ」があったとしても、政治もメディアもさわぐべきではない。言っていることとやっていることにずれがあっていい。
インフレ抑制のために2%を目標にした欧米、デフレ脱却のために2%とした日本が2%という目標を共有したのもおかしな話です。潜在成長率、人口構成(少子高齢化)、資源などの輸入依存度、貿易収支・経常収支の違いなどを無視した数値なのです。
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