今日も日中はカラリとした暑さの晴天となりました。真夏のようにベタつかないだけまだいいのですが、明日から10月だというのに今のところまだまだTシャツ一枚で快適に過ごせてしまっています。
ところで、今日9月30日は
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モーツァルトの歌劇《魔笛》が初演された日です。
《魔笛》はモーツァルトが1791年に作曲した歌劇ですが、正確にはジングシュピール=今日でいうミュージカルのような歌芝居のかたちで書かれています(ただ、現在では一般にオペラの一種として分類されています)。モーツァルトがその生涯の最後に完成させたオペラで、現在もモーツァルトのオペラの中でも筆頭の人気を持つ作品となっています。
《魔笛》は、現在のオーストリアやドイツで活躍した俳優で台本作家であり、劇場支配人でもあったエマヌエル・シカネーダー(1751〜1812)が台本を手がけ、自らもパパゲーノ役で出演しました。シカネーダーは初演が行われたアン・デア・ウィーン劇場を設立した人物としても知られています。
当時、興行主でもあったシカネーダーは仕事がなく困っていました。そこで自身が台本を書き、秘密結社フリーメイソンの会員同士で友人でもあるモーツァルトに作曲を依頼して出来たオペラが《魔笛》です。
初演は1791年9月30日に、アン・デア・ウィーン劇場で行われました。すると《魔笛》はすぐに人気を博し、モーツァルトの生前の間で100回以上の公演がうたれたと言われています。
モーツァルトの他のオペラが上流階級の劇場で公演されていたのに対して《魔笛》が公演されたのは一般市民を対象とした一座でしたので、物語はわかりやすいお伽噺になっています。しかし、一方で物語は秘密結社フリーメイソンの思想との深い繋がりも感じさせるものとなっています。
『おいらは鳥刺し』『復讐の炎は地獄のように胸に燃え』『恋人か女房がいれば』といった名曲揃いの《魔笛》ですが、今日はオペラの幕開けを告げる序曲をご紹介しようと思います。
序曲では、はじめに象徴的な和音が鳴り響いた後に夜の雰囲気を思わせる厳かなアダージョを抜けると、その後のアレグロでは一転して軽快なテーマが現れます。これは、パパゲーノの立ち回りや、その恋人パパゲーナとの愛の二重唱を思わせる、どこかコミカルなものです。
その後、劇中で王子タミーノに試練を告げる管楽器のファンファーレが鳴り響く中間部を経て再びアレグロのテーマが、はじめは変ロ短調という物哀しい調で演奏されます。しかし、程なく明るい変ホ長調の主題が戻ってきて、聴衆を賑々しくオペラの幕開けに誘います。
そんなわけで、今日は《魔笛》の幕開けを告げる序曲をお聴きいただきたいと思います。カウンターテノールのルネ・ヤーコプスの指揮、古楽オーケストラのアカデミー・フュア・アルテ・ムジーク・ベルリンの演奏でお楽しみください。