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午後から雨…と天気予報をしゃべっているテレビを見ている横で、9時頃から既に雨が降り出している…(-_-;)というお天気の下、せめてオペラはカラッとしたものが観たくなりました。そこで選んだのは、名作《セビリャの理髪師》です。
この《セビリャの理髪師》のDVDは2枚組になっています。しかも本のかたちになっていて、CDショップではなく本屋さんに売っていたものです。《セビリャの理髪師》と言えばロッシーニのものが一番有名ですが、この2枚組にはロッシーニのものと、その先達であるパイジェッロのものとが入っています。
で、先ずは定番のロッシーニから鑑賞しました。1992年、ネーデルランド歌劇場での公演です。例によってストーリー的なものは割愛します。
フィガロ…デイヴィッド・マリス
アルマヴィーヴァ伯爵…リチャード・クロフト
ロジーナ…ジェニファー・ラーモア
バルトロ…レナート・カペッキ
バジリオ…シモーネ・アライモ
ベルタ…レオニー・ショーン
フィオレッロ/士官…ロジャー・スミーツ
ネーデルランド室内管弦楽団
ネーデルランド歌劇場合唱団
指揮…アルベルト・ゼッダ
演出…ダリオ・フォー
この公演は一度BSで放送されたのですが、それを観て「これは名演出だ!」と唸ったものです。その後、DVD化されないかと探していましたが、思わぬかたちで再開したのでした。
とにかく観客を徹底的に楽しませてくれます。普通、オペラの序曲というのは幕が下りていて、オーケストラが演奏するのを聴いているものなのですが、この公演では序曲に合わせて道化師達が舞台に出てきて賑やかに踊り回ります。この道化師達は、本編では伯爵の乗った台を動かしたり、踊りながらさりげなく舞台のセット転換に関わったりと、なかなかの活躍振りを見せてくれて観客を飽きさせません。
タイトルロールのフィガロが《俺は町の何でも屋》を歌いながら颯爽と登場すると、「待ってました!(^O^)」という気分になって何だか嬉しくなります。映像のフィガロ役と言えば、往年の名バリトン、ヘルマン・プライのものが有名なだけに、他の歌手はどうしてもそれと比べられることを余儀なくされますが、このDVDのフィガロ役のデイヴィッド・マリスは、声の良さとスタイルの良さで、そんな心配を一掃してくれます。
アルマヴィーヴァ伯爵役のリチャード・クロフトは、溌剌とした若き伯爵を見せてくれます。第1幕のカヴァティーナ《空が微笑むように》やカンツォーネ《私の名を知りたいと望まれるなら》では、ロッシーニ歌唱に不可欠なアジリタ(コロコロと声を軽やかに転がすように歌う装飾歌唱法)を効かせた、レッジェーロ・テノールの美声を響かせます。
ロジーナ役のジェニファー・ラーモアは、可愛らしくも強かなロジーナを聴かせてくれます。このテの役を歌うメゾソプラノ歌手はともすると巨漢の歌手になりがちで『見た目をとるか声をとるか』という究極の選択を迫られがちですが、彼女はその両方を満たしてくれるので安心して観ていられます。有名な第1幕のカヴァティーナ《今の歌声は》や、第2幕のアリア《真実の愛と不屈の愛が》では、これまたアジリタの効いた伸びやかな歌唱を聴かせてくれます。
バルトロ役のレナート・カペッキはオペラ・ブッファ(喜劇的オペラ)界の名バリトンとして活躍した名手です。何と言っても圧巻は第1幕の大アリア《私のような経験豊かな先生には》で、特にアリア後半部では目にも(耳にも?)留まらぬ早さのイタリア語早口言葉を聴かせてくれます。当然、歌い終えた後は拍手喝采です\(^∇^)/。
アルベルト・ゼッダの指揮は、ロッシーニ音楽特有の軽やかさと華やかさを存分に聴かせてくれます。何回も登場するロッシーニ・クレッシェンド(ロッシーニの使う、同じフレーズを何度か繰り返しながら時間をかけて音量をあげていくクレッシェンドの呼び方)も効果的な奏法でのオーケストラドライブを聴かせてくれます。
そしてなんと言っても秀逸なのが、ダリオ・フォーの演出です。先程も書きましたがとにかく序曲から楽しく、至る所に道化師達が出てきてあれこれと立ち回ります。また歌手達も、例えば伯爵が第1幕でカヴァティーナを歌う時には台車の上に立って舟を漕ぐようなかたちで歌いますし、ロジーナの第1幕のカヴァティーナはブランコに乗りながら歌います。
こういう不安定なところで歌っているのを見ると一見恐そうですが、実はこうすることによって歌手を踏ん張らせないようにしているのです。そうすることによって結果として伸びやかな歌唱にもつながり、また見た目にも楽しいという一石二鳥の効果を遺憾無く発揮した演出です。
個人的には、特に初めてオペラを観ようという方に絶対にオススメしたいDVDです。ただ、これを最初に観てしまうと、それ以降ある程度オペラを目が肥えてしまうかも知れませんが…。
この《セビリャの理髪師》のDVDは2枚組になっています。しかも本のかたちになっていて、CDショップではなく本屋さんに売っていたものです。《セビリャの理髪師》と言えばロッシーニのものが一番有名ですが、この2枚組にはロッシーニのものと、その先達であるパイジェッロのものとが入っています。
で、先ずは定番のロッシーニから鑑賞しました。1992年、ネーデルランド歌劇場での公演です。例によってストーリー的なものは割愛します。
フィガロ…デイヴィッド・マリス
アルマヴィーヴァ伯爵…リチャード・クロフト
ロジーナ…ジェニファー・ラーモア
バルトロ…レナート・カペッキ
バジリオ…シモーネ・アライモ
ベルタ…レオニー・ショーン
フィオレッロ/士官…ロジャー・スミーツ
ネーデルランド室内管弦楽団
ネーデルランド歌劇場合唱団
指揮…アルベルト・ゼッダ
演出…ダリオ・フォー
この公演は一度BSで放送されたのですが、それを観て「これは名演出だ!」と唸ったものです。その後、DVD化されないかと探していましたが、思わぬかたちで再開したのでした。
とにかく観客を徹底的に楽しませてくれます。普通、オペラの序曲というのは幕が下りていて、オーケストラが演奏するのを聴いているものなのですが、この公演では序曲に合わせて道化師達が舞台に出てきて賑やかに踊り回ります。この道化師達は、本編では伯爵の乗った台を動かしたり、踊りながらさりげなく舞台のセット転換に関わったりと、なかなかの活躍振りを見せてくれて観客を飽きさせません。
タイトルロールのフィガロが《俺は町の何でも屋》を歌いながら颯爽と登場すると、「待ってました!(^O^)」という気分になって何だか嬉しくなります。映像のフィガロ役と言えば、往年の名バリトン、ヘルマン・プライのものが有名なだけに、他の歌手はどうしてもそれと比べられることを余儀なくされますが、このDVDのフィガロ役のデイヴィッド・マリスは、声の良さとスタイルの良さで、そんな心配を一掃してくれます。
アルマヴィーヴァ伯爵役のリチャード・クロフトは、溌剌とした若き伯爵を見せてくれます。第1幕のカヴァティーナ《空が微笑むように》やカンツォーネ《私の名を知りたいと望まれるなら》では、ロッシーニ歌唱に不可欠なアジリタ(コロコロと声を軽やかに転がすように歌う装飾歌唱法)を効かせた、レッジェーロ・テノールの美声を響かせます。
ロジーナ役のジェニファー・ラーモアは、可愛らしくも強かなロジーナを聴かせてくれます。このテの役を歌うメゾソプラノ歌手はともすると巨漢の歌手になりがちで『見た目をとるか声をとるか』という究極の選択を迫られがちですが、彼女はその両方を満たしてくれるので安心して観ていられます。有名な第1幕のカヴァティーナ《今の歌声は》や、第2幕のアリア《真実の愛と不屈の愛が》では、これまたアジリタの効いた伸びやかな歌唱を聴かせてくれます。
バルトロ役のレナート・カペッキはオペラ・ブッファ(喜劇的オペラ)界の名バリトンとして活躍した名手です。何と言っても圧巻は第1幕の大アリア《私のような経験豊かな先生には》で、特にアリア後半部では目にも(耳にも?)留まらぬ早さのイタリア語早口言葉を聴かせてくれます。当然、歌い終えた後は拍手喝采です\(^∇^)/。
アルベルト・ゼッダの指揮は、ロッシーニ音楽特有の軽やかさと華やかさを存分に聴かせてくれます。何回も登場するロッシーニ・クレッシェンド(ロッシーニの使う、同じフレーズを何度か繰り返しながら時間をかけて音量をあげていくクレッシェンドの呼び方)も効果的な奏法でのオーケストラドライブを聴かせてくれます。
そしてなんと言っても秀逸なのが、ダリオ・フォーの演出です。先程も書きましたがとにかく序曲から楽しく、至る所に道化師達が出てきてあれこれと立ち回ります。また歌手達も、例えば伯爵が第1幕でカヴァティーナを歌う時には台車の上に立って舟を漕ぐようなかたちで歌いますし、ロジーナの第1幕のカヴァティーナはブランコに乗りながら歌います。
こういう不安定なところで歌っているのを見ると一見恐そうですが、実はこうすることによって歌手を踏ん張らせないようにしているのです。そうすることによって結果として伸びやかな歌唱にもつながり、また見た目にも楽しいという一石二鳥の効果を遺憾無く発揮した演出です。
個人的には、特に初めてオペラを観ようという方に絶対にオススメしたいDVDです。ただ、これを最初に観てしまうと、それ以降ある程度オペラを目が肥えてしまうかも知れませんが…。