今日はかなり大気の状態が不安定だったようで、ちょうど子どもたちが小学校から下校する頃に凄まじい豪雨に見舞われました。朝の天気予報から注意喚起されていたこともあって大半の子どもたちが傘を持ってきていましたが、それでも何人かは備えをせずに登校して来てしまっていたので、置き傘を貸したり自宅に電話して親に迎えに来てもらったりと、大人たちはてんてこ舞いでした。
ところで、今日6月3日はビゼーの祥月命日です。
ジョルジュ・ビゼー(1838〜1875)は、19世紀フランスの作曲家で、《真珠採り》や《カルメン》といった歌劇がよく知られています。
ビゼーはオペラなどの劇音楽を作曲の中心とし、25歳のときのオペラ《真珠採り》でオペラ作曲家の地位を確立しました。その後、フランス人の作家アルフォンス・ドーデの劇《アルルの女》の付随音楽やオペラ《カルメン》といった、現在ではよく知られている作品を作曲しました。
ただ、1875年3月にパリのオペラ=コミック座で行われた《カルメン》の初演は失敗に終わりました。どうやらヒロインが女性労働者だったことや、ヒロインの声域をそれまでに一般的だったソプラノではなくメゾソプラノに設定したことの新しさが裏目に出てしまったようです。
ビゼーは《カルメン》初演の約3ヵ月後である1875年6月3日、敗血症のため36歳で死去しました。ビゼーの音楽は世界的に認められるようになったのは、死後数年経ってからのことでした。
さて、拙ブログで《アルルの女》や《カルメン》といったメジャーどころを紹介してもどうかと思います(オイ…)ので、今日は皆さんご存知の歌劇《美しきパースの娘》の中の『セレナーデ』をご紹介しようと思います。
『…は?』
と思われるかも知れませんが、この『セレナーデ』は小学生以上の日本人なら殆どの方がご存知だと思います。もし《美しきパースの娘》と言われて?が飛び交う方も『小さな木の実』と言われればピン!とくる方も多いのではないでしょうか。
『小さな木の実』は1971年にNHKの『みんなのうた』で放送されました。といってもビゼーのの『セレナーデ』のメロディそのままではなく、『セレナーデ』を元にして編曲されたものに日本語の歌詞をつけたものです。
小さな手のひらに ひとつ
古ぼけた木の実 にぎりしめ
小さなあしあとが ひとつ
草原の中を 駆けてゆく
パパとふたりで拾った
大切な木の実 にぎりしめ
ことしまた 秋の丘を
少年はひとり 駆けてゆく
小さな心に いつでも
しあわせな秋は あふれてる
風と良く晴れた空と
あたたかいパパの思い出と
坊や 強く生きるんだ
広いこの世界 お前のもの
ことしまた 秋がくると
木の実はささやく パパの言葉
原曲の歌詞は愛する女性の家の前で夜に求愛する男性の切ない心情を歌うセレナーデなので、パパとの思い出を歌う『小さな木の実』の歌詞とは内容的に一切関係はありません。それでも『小さな木の実』はビゼーの切ないメロディと物哀しい日本語の歌詞とが相俟って人気となり、現在では音楽の教科書にも掲載されるまでになっています。
そんなわけで、ビゼーの祥月命日の今日は『小さな木の実』の原曲である《美しきパースの娘》の『セレナーデ』をお聴きいただきたいと思います。ファン・ディエゴ・フローレスのテノールによる、ビゼーの切ないメロディをお楽しみください。