共 結 来 縁 ~ あるヴァイオリン&ヴィオラ講師の戯言 ~

山川異域、風月同天、寄諸仏子、共結来縁…山川の域異れど、風月は同天にあり、諸仏の縁に寄りたる者、来たれる縁を共に結ばむ

大事なことを忘れていた!〜ホルスト《吹奏楽のための第二組曲 ヘ長調 作品28-2》とジェイコブ編《ハンプシャー組曲》

2024年09月22日 18時35分20秒 | 音楽
今日は秋分の日、お彼岸のお中日です。『暑さ寒さも彼岸まで』とはよく言ったもので、今朝は湿度が高かったものの、昨日と比べたら格段に涼しくなりました。

本当なら相模國一之宮寒川神社に詣でて、御来光守をいただいてくる…はずだったのですが、目覚めて時計を見たら何とお昼!これでは数量限定の御守はGETできないと、早々に諦めたのでした…。

ところで、昨日



グスターヴ・ホルストのことについて書きましたが、その時に大切なことを忘れていました。ホルストが誕生したのが1874年、そして今年は2024年、つまり

2024ー1874=150

となるため、今年はホルストの生誕150年のアニバーサリー・イヤーだったのです。

こんなこともなかなかレアなので、今日もホルストについて書いてみようと思います。今日取り上げるのは、昨日の作品に引き続いての《吹奏楽のための第二組曲 ヘ長調 作品28-2》です。

第一組曲から3年後の1911年に現在の第3楽章を欠いた3楽章の形で作曲されていた第二組曲は、1921年に軍楽隊の編成が変更されたことを反映して1922年に改訂が行われました。現行の形での初演は1922年6月30日にロイヤル・アルバート・ホールで、王立軍楽学校の吹奏楽団によって行われました。

各楽章はそれぞれイングランドの民謡や舞曲に基づいていて、その分野へのホルストの関心の高さが窺えるものとなっています。民謡素材は主にハンプシャー地方近辺で採譜したものからとられていて、用いられた民謡のいくつかは後に《6つの合唱曲 作品36b》(1916年)でも扱われています。

第1曲:マーチ (March)
Allegro ヘ長調 - 変ロ短調 - ヘ長調 2/2拍子 三部形式

伝説中の人物に扮して鈴をつけた男性が踊る『グローリシャーズ』と呼ばれるモリス・ダンスの旋律でスタートし、続く『スワンシー・タウン』と呼ばれる水夫の歌では



ユーフォニアムが大活躍します。更に8分の6拍子の『クローディ・バンクス』のメロディが用いられ、冒頭に戻ります。

第2曲:無言歌 (Song without Words "I'll love my love")
Andante ヘ短調 4/4拍子

『私の恋人を愛す("I'll love my love")』というイギリス民謡が用いられています。船乗りに恋した少女がその恋路を引き裂かれて気がふれてしまい、送られた収容所の窓辺で歌う悲しい歌を、木管楽器群とトランペットソロが切々と歌い上げます。

第3曲: 鍛冶屋の歌 (Song of the Blacksmith)
Moderato e maestoso ヘ長調 4/4拍子

ハンプシャー民謡による4拍子+3拍子のリズムのコミカルな音楽です。鍛冶屋の歌だけあって、打楽器として



金床(アンヴィル)が使われます(私は吹奏楽部時代にこのパートを担当しました)。

第4曲 ダーガソンによる幻想曲 (Fantasia on the "Dargason")
Allegro moderato ヘ長調 6/8拍子

ダーガソンはルネサンス期にイギリスで流行した8分の6拍子の舞曲で、8小節の循環旋律が冒頭から終結まで奏され、曲の中程には対旋律として『グリーンスリーブス』が現れます。そして吹奏楽ならではの高まりをみせた後に、最後にはピッコロとテューバという対極にある楽器が可愛らしくやりとりをして楽しく終わります(ホルストは後にこの楽章を、弦楽合奏のための《セントポール組曲》の終曲にも転用しています)。

そんなわけで、今日はホルストの《吹奏楽のための第二組曲 ヘ長調 作品28-2》をお聴きいただきたいと思います。昨日の第一組曲に続き、こちらも吹奏楽関係者なら知らぬものはないという名曲をお楽しみください。



因みにこの曲は、後にイギリスの作曲家ゴードン・ジェイコブ(1895〜1984)によって《ハンプシャー組曲》("A Hampshire Suite")として管弦楽に編曲されています。今回はそのバージョンも載せてみましたので、吹奏楽と管弦楽との響きの違いをお楽しみいただきたいと思います。


私事で恐縮ですが、ちょっと自慢したいことがあります。実は私、どちらも演奏したことがあるのです。

ホルストの第二組曲は、10代の時に吹奏楽部や市民吹奏楽団で演奏しました。そして《ハンプシャー組曲》は、私が20代の時にヴィオラトップで所属していた室内管弦楽団で演奏しました。

他の弦楽器奏者たちが《ハンプシャー組曲》で苦労している中、私は先に吹奏楽でホルストを経験していたことでものすごくやりやすかったことを覚えています。しかも第1曲のユーフォニアムのカッコいいメロディがヴィオラとチェロに回ってきていたので、内心ウッキウキで演奏していたのは内緒です(汗)。

ものすごい偶然ですが、同じ曲を吹奏楽でも管弦楽でも経験できたことは、私にとって大きな財産です。考えてみれば、幸せな音楽生活を送らせてもらったものだと思います。

さて、明日は秋分の日の振替休日です。どう過ごすか全く決めていないのですが、とりあえずゆっくりしようとは思っています。


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