連日の真夏日にもいい加減慣らされてきて、なるべく朝の涼しい時間帯にいろいろと外出の用事を済ませるという習慣も身についてきました。あとはとにかく我が家に籠って、ひたすらいい音楽に身を委ねるに限ります(要はただのグウタラだろうが…)。
ところで今日8月22日は、フランスの作曲家ドビュッシーの誕生日です。
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クロード・ドビュッシー(1862〜1918)の音楽は、代表作である交響詩《海》や《ノクチュルヌ(夜想曲)》などにみられる特徴的な作曲技法から『印象主義(印象派)音楽』と称されることもあります。ただ、当の本人は印象主義音楽という概念に対しては割りと否定的だったようで、テクスト(詞)やテーマの選択はどちらかと言うと『象徴派(象徴主義)』からの影響が色濃いと言われているようです。
交響詩やオペラ《ペレアスとメリザンド》といった大規模な作品でも知られるドビュッシーですが、《前奏曲集》や《2つのアラベスク》をはじめとしたピアノ曲や、弦楽四重奏曲といった室内楽の分野にも多くの名作を遺しました。
その中でも、ドビュッシーは晩年に『様々な楽器のための6つのソナタ 』という室内楽集を作曲する計画を立てました。その計画の内容は
《チェロとピアノのためのソナタ 》(1915年)
《フルート、ヴィオラとハープのためのソナタ》 (1915年)
《ヴァイオリンとピアノのためのソナタ》 (1917年)
《オーボエ、ホルンとクラヴサンのためのソナタ》
《トランペット、クラリネット、バスーンとピアノのためのソナタ》
《コントラバスと各種楽器のためのコンセール形式のソナタ》
という6曲でした。
6曲にしようとしたのは、古典派以前によく作られていた6曲1組の形式を意識したものと考えられています。ただ、その計画を立てていた頃のドビュッシーは癌に侵されていて3曲目のヴァイオリンとピアノのためのソナタを書き上げた翌年に没してしまったので、残念ながら残りの3曲は幻となってしまいました。
《フルート、ヴィオラとハープのためのソナタ》は1915年の9月から10月という短い時期に作曲され、一緒に残されたチェロソナタ、ヴァイオリンソナタと並んでドビュッシーが作曲した室内楽曲の傑作と評価されています。またヴァイオリンやチェロと比べて圧倒的にオリジナル作品の少ないヴィオラにとって、ソロ作品ではないものの貴重なビッグネームの室内楽作品となっています。
幻想的なハーモニーのハープと夢見るようなフルートのメロディにヴィオラの地味な音色が絡む感じは、なかなか独特のものがあります。この3つの楽器編成はその後の作曲家たちにも大いにインスピレーションを与えたようで、武満徹(1930〜1996)の《そして、それが風であることを知った》(1992年)をはじめとした様々なフルート、ヴィオラ、ハープの作品が発表されました。
そんなわけで、ドビュッシーの誕生日である今日はその《フルート、ヴィオラとハープのためのソナタ》の動画を転載してみました。ベルリン・フィル首席フルート奏者エマニュエル・パユをはじめとしたメンバーでの演奏でお楽しみください。