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警告文

 何気なくタバコの自動販売機を見ていたら、パッケージ一つ一つにタバコの害についての警告文が印刷してあるのに気づいた。それも同じ文ではなく、いくつかの種類があったのには驚いた。調べてみたら、今は下記8種類の警告文が、順次ローテーションでパッケージの表裏両面に書き込まれているようだ。
  1.喫煙はあなたにとって肺がんの原因の一つになります。
  2.喫煙はあなたにとって心筋梗塞の危険性を高めます。
  3.喫煙はあなたにとって脳卒中の危険性を高めます。
  4.肺気腫を悪化させる危険性を高めます。
  5.妊娠中の喫煙は胎児の発育障害や早産の原因の一つになります。
  6.たばこの煙はあなたの周りの人、特に乳幼児、子ども、お年寄りなどの健康に悪影響を及ぼします。
  7.ニコチンにより喫煙への依存性が生じます。
  8.未成年者の喫煙は健康に対する悪影響やたばこへの依存度を高めます。

これだけの危険性の高いものを自動販売機で堂々と売っているのもおかしなものだが、こうした警告を受けながらもあえてタバコを吸い続ける人がいるのもすごいと思う。折りしもニュースキャスターの筑紫哲也が「自分はがんにならないと根拠のない自信を持っていましたが、先週、初期の肺がんだと分かりました。症状は克服できるということで、しばらく治療に専念します。がんにうち勝って、また戻ってまいります」と番組内で表明した。筑紫は一日3箱も吸うヘビースモーカーらしいので、警告通りになったということかもしれないが、何とか打ち勝って元気な姿をまた見せて欲しいものだ。(と言っても、「NEWS23」はほとんど見たことがないのだが)
 
 こうした警告文が添付されていれば、タバコを吸うも吸わぬもまさしく自己責任ということになるだろうが(受動喫煙の害を周りに撒き散らしてもいるのは忘れてはならない)、ろくに警告もせずに独断でさっさと決められてしまうことが世の中には実に多い。国民投票法案の可決などその一例のように思えて仕方がない。安倍首相は「議論を尽くした」と胸を張るが、とてもそうは思えない。憲法という国の最高法規の改正を図るための法案である以上、どんなに時間をかけてもかけすぎることはないはずだ。首相も自分の信念が正しいと思うのならば、議論を真正面から受けて相手を論破するだけの気概を持たねばならないが、とにかく数に任せて押し切ってしまおうという姿勢ばかりが目立っている。新聞には可決された法案の要旨が一面を使って書かれていたが、そんなものを一体何人の国民が読み通すだろう(私は無味乾燥な法律の条文を読むのは苦手だ)。そうした国民の立場に立って、法案の趣旨説明、この法案によって何を目指すのかをもっとはっきりと国民に示す義務と責任が安倍首相にはあると思う。そうした自らのビジョン(「美しい国」などという抽象的なまやかしではない、もっと具体的なものがあるならば)を明確に示した上で国民に信を問うという姿勢がまったく見えてこないところに、私は安倍首相の危うさを感じる。次の参議院選挙では改憲を争点にして戦う意気込みらしいが、なぜ憲法を改正しようとするのか彼の真意が分からなくてはどうしようもない。まるで、何年か前までの何の警告文も添付されていなかったタバコのようなものだ。知らないうちに体内が蝕まれていく・・。

 なんだか、最近憲法を巡る議論がムードに乗っかった、上っ面だけの平板なものになりつつあるように思う。どんな立場に立つにせよ、相手の考えを尊重した上で議論を重ねていくという民主主義の基本的なルールを忘れないようにしなければならない。何も焦る必要はないはずだ。
 


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