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Denim

 竹内まりやのニューアルバム「Denim」が23日に発売された。まりやファンを公言している私ではあるが、不覚にも予約することを忘れていた。はっと気づいたのが発売当日の23日夜、慌ててアマゾンをのぞいたところ、発送まで3~4週間かかると表示されていた。いくらなんでもそんなには待てない、翌日CDショップまで走っていった。ひょっとしたら売り切れかなと心配したが、さすが地方都市、陳列棚に何枚も並べられていた。この町には、発売当日に売り切れになるくらいソフィスティケートされた人間がいないのか、と寂しくなったが、それよりも無事手に入れることができた喜びの方がはるかに大きかった。
 この「Denim」は2001年の「BON APPETIT!」以来6年ぶりのオリジナルアルバムである。その間2003年に「LONGTIME FAVORITES」を発表していたが、カヴァー曲を集めたものであったため、オリジナルアルバムはまさしくファン垂涎の、待望久しいものであった。
 アルバムタイトルについて、竹内まりやは次のように記している。

「人生はまるでデニムのようだと、私は思う。  
 青春をおろしたての真新しいインディゴ・ブルーにたとえるとすると、年を重ね人生が進むにつれて、そのデニムの青は少しずつ風合いを増しながら、さまざまに変化していく。あるときには糸がほつれ、穴が空いたりもする。けれど、歴史とともに素敵に色褪せたその青には、若き日のあのインディゴにはなかった深い味わいが生まれているはずだ。
 私のデニムも、愛したり、笑ったり、悩んだり、泣いたりしながら、いつか私だけの特別な色合いになっていくのだろうか」 

彼女の思いはアルバムを一度聴けばよく分かる。12曲通して聴いて最初に浮かんだ感想は、「ああ、竹内まりやだ」。新しくもないが古くもない。全曲竹内まりやだ。ただ、全ての曲がかなり熟成されていて深みがある。ストレートに感情を表現せずとも、心を伝えることはできるといった奥行きが感じられる。例えば、悲しみを歌った曲でも悲しみだけを歌っているのではなく、悲しみの底から澎湃と湧き出づる希望を歌い綴っているような・・。竹内まりやは1955年生まれであるから今年52歳(私の母が亡くなった歳だ、信じられない・・)、人生の機微を知った者にのみ許される表現力を身につけたように思える。
 中でも私が一番心を打たれた曲は、アルバム最後の「人生の扉」。「春が来るたび ひとつ年を重ね、目に映る景色も 少しずつ変わるよ」と始まるこの曲は自分の年齢を意識した詞になっている。しかし、それはデニムのように年月を重ねることでしか生まれない独自の色合いを楽しんでいる彼女の心境を表しているようで、何度も何度も繰り返し聴いてしまった。
 
I say it's fun to be 20
You say it's great to be 30
And they say it's lovely to be 40
But I feel it's nice to be 50

こうした気持ちがあるからこそ、次のように歌い上げることもできるのだろう。
 
I say it's sad to get weak
You say it's hard to get older
And they say that life has no meaning
But I still believe it's worth living
But I still believe it's worth living

これは竹内まりやがアーティストとしてだけでなく、一個の人間として熟成したことの表れだろう。きっと素敵な年齢の重ね方をしてきたんだな、とまだまだこんな言葉を発することができるような境地に達していない私には羨ましくて仕方がない。
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