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クリムト

 2週間前、愛知県美術館の「若冲と江戸絵画展」に行ったとき、美術館の所蔵コレクションを集めた一室にも入場ができた。若冲の「鳥獣花木図屏風」に見ほれたばかりの私には西洋画を中心にした展示は、油絵の濃密さばかりが目について少々荷が重かった。だが、その中にあったクリムトの「人生は戦いなり(黄金の騎士)」という作品にはその題名の奇抜さとともに心を奪われた。


この題名は後から他人によって付けられたものらしい。じっと見ていると、描かれた騎士は馬に乗っているにしては脚を伸ばして立っているようで不自然だ。愛知県美術館のHPの作品解説を読んでも抽象的で何のことやらよく分からない。まあ、解説なんてあてにしないで自分の目で見て心で感じればいいのだろうが、それにしても変だ。
 家に戻って、書棚から「岩波世界の巨匠 クリムト」という画集を取り出して開いてみた。しかし、48枚ある図版の中に「黄金の騎士」は載っていなかった。ちょっと残念だったが、この機会にと思ってクリムトの絵画世界をじっくり味わってみた。
 
 「クリムトの絵は、聖画像(イコン)全盛の時代のように、金色を輝かせる。彼の絵は、洗練された形態と、敏感で音楽的なリズムを備えた、物質とは思えないような物質である。しかし、この物質ならざる物質である彼の絵が、ほっそりした女性らしい姿でやつれた顔という女性像の原型と、その性的本能(セクシュアリティ)にまつわる、ありとあらゆる表現を生み出したのだった。この独創、この「性的(エロティック)ということは、1900年前後のヨーロッパ芸術がもっとも公然と、そして大胆に打ち出した特色でもある。

 画集に記されたこの言葉を念頭において1枚1枚丹念に見ていくうちに、そこに描かれた女性の表情が実に甘美であることに気づいた。官能的ではあるが、どことなくはかなげで何かを訴えかけるような表情をした女性が多い。

  
「アデーレ・ブロッホ=バウアーの肖像Ⅰ」 「ユディトⅠ」           「ダナエ」

中でも「接吻」と名づけられた絵が私は一番好きだ。(大きな絵はこちら)



男女が渾然一体となって愛し合う姿、女性のえもいわれぬ恍惚とした喜びの表情は私の心まで暖かくしてくれる。宇宙の時の流れに身を任せ、永遠の時空をさまよう二人の男女の黄金の思い、そんなものを感じとることができる。素晴らしい。
 


蛇足ながら、愛知県美術館のHPに「黄金の騎士」のぬり絵をダウンロードできるページがあったので試してみた。


すみません、クリムトさん・・・。
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