じゅくせんのつぶやき

日々の生活の中で感じた事をつぶやきます。

井伏鱒二「たま虫を見る」

2021-12-24 19:41:13 | Weblog
★ 冬期講座第1日目。クリスマスイブも関係なく生徒たちは頑張っている。朝8時半から11時半まで午前の4コマ。午後1時から4時まで午後の4コマ。そのあとレギュラークラス(日常の授業)がある。遅い人は夜の10時まで。

★ 合間を見て、2012年の大学入試センター試験に出題された井伏鱒二の「たま虫を見る」を読む。人生の折々で遭遇した「たま虫」。物語はこの「たま虫」を軸に「私」が今までの人生を振り返る。

★ 作者が実際に「たま虫」に遭遇したのか、それとも「たま虫」というのは何らかの比喩、あるいは作者が考えたフィクションなのかはわからない。小説なのだからなんでもありだ。

★ 作品の終盤で、「私」は未来、また「たま虫」を見ることを想像しながら「私の不幸の濃度を一ぴきずつの昆虫が計ってみせてくれる」と述べている。「不幸の濃度」か。

★ 「私」が大学生になって恋人ができたとき、その恋人が「私」のレインコートに付いていた「たま虫」をはじき落とし、更には草履で踏みにじるシーンが面白かった。「私」にとって思い入れのあるモノも彼女にとっては単なる虫なのだ。

★ 「私」が当局から危険分子として呼び出されるところも面白かった。ポケットに入れた「たま虫」の死骸がいつしかバラバラになっているシーンでは、ヘッセの「少年の日の思い出」を思い起こした。
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