じゅくせんのつぶやき

日々の生活の中で感じた事をつぶやきます。

牧野信一「地球儀」

2021-12-17 10:26:31 | Weblog
★ 牧野信一の「地球儀」は2013年の大学入試センター試験に出題された。牧野信一というのは明治から昭和初期に生きた人で、39歳の若さで亡くなっている。この作品は1923年に書かれたもので、発表の直後に関東大震災が起こっている。

★ 「地球儀」は祖父の17回忌の法要のため小田原の実家に戻った主人公(純一)の物語。この作品には祖父、父、純一そして生まれたばかりの栄一が登場する。祖父との不仲で純一が生まれてすぐに渡米した父親。10年後に帰宅するも家にはいつかず母親に言わせると「放蕩」に走っているという。物書きをやっている純一もどうやら父と同じ道を歩みそうだ。

★ ウィキペディアによると、父親が帰国後も英語でしか会話しなかったというから、複雑な愛憎の感情がうかがえる。

★ 法要を前にして片づけをしていると押入れから現れた「地球儀」。純一は今書きかけの作品を思い起こす。作中作という構造が難しいが、地球儀を回しながら唱えられる「スピンスピンスピン」の呪文に魅かれる。アメリカにいる父親に会いたいのかそれとも会いたくないのか。

★ そして自分も父親となった。地球がスピンし、世代も移り変わる。そのあたりに私小説でありながら普遍性を感じた。

★ 決してメジャーと言えない作家のメジャーと言えない作品。それでいて、読んでみるとなかなか意味深い。受験者は大変だが、よく選んでくるなぁと感心する。
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