★ 昨年の共通テスト、国語の第二問(小説)は加納作次郎の「羽織と時計」からの出題だった。加納作次郎という作家を私は今まで知らなかった。ウィキペディアによると明治18年(1885年)に生まれ、昭和16年(1941年)に56歳で亡くなったという。
★ 出題されたのは「羽織と時計」の第2章の一部。主人公と同じ出版社に勤めるW君が病のため休職し、主人公はその間いくらかの見舞金を集めたり、仕事を肩代わりした。そのことをW君は非常に感謝し、お礼として紋付の羽織を贈ってくれた。数年して、主人公が社を離れるときには、同僚たちからカネを集めて送別の時計を渡してくれた。これが作品のタイトルとなっている「羽織と時計」である。
★ 社を離れたことで主人公はW君と疎遠になっていった。相変わらず生活に困窮し、更には夫婦共々病の床にあると噂には聞いたが、W君から貰った「羽織と時計」が心の澱となり、敷居を高くしていた。
★ 出題分はここで終わっているが、どうもその前後が気にかかる。とはいえ大正7年の作品で、容易にも手に入りそうにない。あれこれ調べていると、国立国会図書館のデジタルコレクションにあることを知り、早速読んでみた。「羽織と時計」は加納の作品集「世の中へ」に収められている。
★ 仕事と子育てに追われる主人公が訃報の葉書を受け取る所から物語は始まる。葉書によると既に葬儀の日程が過ぎている。ともかく主人公はW君のお宅を訪れることにした。これに続く第2章が出題部分で、先に書いたような主人公とW君との関係が描かれている。
★ 第3章、長らくの無沙汰に躊躇しつつも遂に意を決して、主人公はW君宅を訪れる。そこで目にしたものは荒廃した生活と寝たきりの細君の姿。主人公はその状況にいたたまれなくなり早々に立ち去る。
★ 主人公の内面が伝わってくる。想像以上に面白い作品だった。志賀直哉の「小僧の神様」でも感じたが、施す側、施される側、その心の機微が興味深い。作品の中には劣悪な雇用環境に置かれている労働者を愚痴り、資本主義社会を批判的に捉えているところもある。大正時代にはまだこうした記述が許されたのだと思った。
★ センター試験(共通テスト)には、私小説や内向の世代の作品が多いように感じた。内面描写が多いからだろうか。
★ さて、今日も朝から授業を1コマ。昼からは中3の日曜特訓。合間を見つけて読書。昨日つくった鍋がうまかった。今夜も鍋にしようかな。
★ 出題されたのは「羽織と時計」の第2章の一部。主人公と同じ出版社に勤めるW君が病のため休職し、主人公はその間いくらかの見舞金を集めたり、仕事を肩代わりした。そのことをW君は非常に感謝し、お礼として紋付の羽織を贈ってくれた。数年して、主人公が社を離れるときには、同僚たちからカネを集めて送別の時計を渡してくれた。これが作品のタイトルとなっている「羽織と時計」である。
★ 社を離れたことで主人公はW君と疎遠になっていった。相変わらず生活に困窮し、更には夫婦共々病の床にあると噂には聞いたが、W君から貰った「羽織と時計」が心の澱となり、敷居を高くしていた。
★ 出題分はここで終わっているが、どうもその前後が気にかかる。とはいえ大正7年の作品で、容易にも手に入りそうにない。あれこれ調べていると、国立国会図書館のデジタルコレクションにあることを知り、早速読んでみた。「羽織と時計」は加納の作品集「世の中へ」に収められている。
★ 仕事と子育てに追われる主人公が訃報の葉書を受け取る所から物語は始まる。葉書によると既に葬儀の日程が過ぎている。ともかく主人公はW君のお宅を訪れることにした。これに続く第2章が出題部分で、先に書いたような主人公とW君との関係が描かれている。
★ 第3章、長らくの無沙汰に躊躇しつつも遂に意を決して、主人公はW君宅を訪れる。そこで目にしたものは荒廃した生活と寝たきりの細君の姿。主人公はその状況にいたたまれなくなり早々に立ち去る。
★ 主人公の内面が伝わってくる。想像以上に面白い作品だった。志賀直哉の「小僧の神様」でも感じたが、施す側、施される側、その心の機微が興味深い。作品の中には劣悪な雇用環境に置かれている労働者を愚痴り、資本主義社会を批判的に捉えているところもある。大正時代にはまだこうした記述が許されたのだと思った。
★ センター試験(共通テスト)には、私小説や内向の世代の作品が多いように感じた。内面描写が多いからだろうか。
★ さて、今日も朝から授業を1コマ。昼からは中3の日曜特訓。合間を見つけて読書。昨日つくった鍋がうまかった。今夜も鍋にしようかな。