この件、買収の発表から1年が過ぎ、あまりちゃんと追えてはいないのですが、結局「国家安全保障上の懸念を理由」としてアメリカ政府から買収禁止という政治的判断が出たということに保護主義的で非常にモヤモヤしています。
そもそも、買収に反対し、USスチール単体でやっていけると判断していた労働組合側が長らくつづく世界の鉄鋼市場の中国優位の状況をどう捉えているのか?USスチールの経営状態をどう受け止めているのか?が日本にいるとその報道からあまりちゃんと見えてきません。
本当に報道によくあるアメリカの「政局」に影響を受けた一時的な判断であれば、労働組合側にとって良い判断とされていますが、本当に雇用が今後も守られるのか?懸念は残ります。
これに対して、法令違反として法的措置も許さない構えの日本製鉄(USスチール)ですが、政治的判断ですから、本当に覆すことができるのか?これも懸念は残ります。
ただ、やはり買収に向けて法律に基づいた手続きはしてきているわけであって、ここで最終的にアメリカ政府からの横やりが入ったのは実に日本製鉄(USスチール)側にとっても買収発表当初は想定外だったのではないか?と思います。
その横やりに日本製鉄(USスチール)だけで対抗するのは、なかなか難しい中でやはり方法があるとすれば、日本政府が動くことだろうと思います。
政治的判断には政治的判断で対抗するしかないのではないか?と思います。
しかし、日本政府が取った行動は今のところ冒頭にリンクした経産相のコメントだけ。もちろん今後何か動きは取るのでしょうが、効果的な動きになるのかどうが不明です。
ここにも、先日来から書いている「政治の貧困」を感じます。
自国企業が他国政府に困らせられているわけですし、単に日本製鉄だけの問題ではなく、今後他の日本企業のアメリカへの投資にも懸念が残る問題ですから、今こそ日本政府として政治的に効果的な動きをするべきでしょうし、やるべきことはできうる限りやっておいたほうが良いでしょう。
この買収禁止によって、日本製鉄側はUSスチールに違約金5億6500万ドル(日本円で890億円)を支払わなくてはならないそうです。他にも何か悪い影響はないのか?心配になります。このあおりを喰らって日本製鉄の労働者に減給や雇用が守れない事態になると、本当に日本政府は何をしているのか?となります。
そして、そもそもこの決定、「アメリカの国家安全保障を損なう恐れがあると信じるのに十分な証拠がある」とバイデン大統領は発言しているようですが、その証拠もおそらく「国家安全保障を損なう恐れがある」として開示しないでしょう。
だからこそ、日本製鉄やUSスチール側は、「政治的思惑」、「恥ずべきもので腐敗している」や、「同盟国である日本をこのように扱うことは衝撃的」とまで発言しています。
少し飛躍的ですが関連することを書くと、日米それぞれの「国家安全保障戦略」を見ると、例えば、中国が沖縄に攻めてきた場合に、沖縄のアメリカ軍はグアムに退き、実際に沖縄を守るのは自衛隊だけであり、アメリカは守らないことになっている、と話には聞きますから、本当にそもそも日本はアメリカの「同盟国」なのか?と疑ってしまうのは、そんなに大きく議論の的を外していないように思えてきます。
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