実は、4月29日が、去年から「昭和の日」になっていることを知らなかった。もちろん、5月4日は「国民の休日」だと思っていた。
さて、なにげにテレビを観ていたら、NHKで「
昭和が終わった日」という番組が始まり、最後まで観てしまった。
今年、1月にハイビジョン放送で放映されたものの再放送を地上デジタルでやっていた。
内容は、大阪の女性写真家・仲田千穂がジャーナリスト・
大谷昭宏とともに、「昭和が終わった日」から20年経ったのを機に「昭和」と言う激動の時代に生きた人々の、まさしく「昭和が終わった日」の想いをインタビューしていくドキュメンタリーだ。
仲田千穂という写真家は、先に「特攻花」という写真集を出して注目を浴びている。
これは、戦時中の特攻隊員が出撃時、贈られた花を同じように散らせては忍びない、ということで滑走路に残していき、やがて、それが長い年月が経った今でも滑走路周辺に花を咲かしている、と言う話を題材にした写真集である。
そんな彼女は、「昭和が終わった日」には、6歳だったという。人生の大半を「平成」で過ごしながら、「昭和」という時代≒「戦争」をどんどん理解しようとする。
インタビューしていくのは、そのほとんどが、戦争を体験している世代。戦争と軍と天皇に対する、さまざまな想いがさまざまな人々によって語られていく。そして、最後に仲田千穂が彼らを撮影する。
その写真は、彼女が大阪有数の広告写真スタジオに所属するせいもあってか、技術的に何ら問題ないにも関わらず、どことなく、もの足りなさを感じるのは、テレビ番組の中での撮影で自分自身が同時に被写体にもされているという、カメラマンとしての深い自覚からくる、とまどいがあったからであろうか?
一方、「昭和が終わった日」に、日本全国の写真家130名が、その昭和が終わった、昭和64年1月7日を各地各々で撮影したプロジェクトがあった。
参加した写真家には、浅井慎平、桑原史成、浅野喜市、江成常夫、内藤正敏などの有名な写真家も名を連ねる。番組はそんな彼らにもインタビューしていた。
その中で紹介されいた写真で、目にガツーンときたのは、手島直利さんが秋田県で撮影した1枚だった。
遠くまで見える通りの真ん中で、三輪車に乗った男の子がニッコリと微笑み、カメラ目線。背景には、家々の軒下から掲げられた国旗が通りの両側からズラリとならんで、「昭和が終わった日」をいかにも物語っている。そんな中で、将来を担う三輪車に乗った男の子との対比が何とも言えなくなり、感涙してしまった。(ここにお見せできないのが非常に残念だ。)
番組は、さまざまな人々のさまざまな想いの多様さ、重さに、一定の結論を出さずに終えるが、それだけに、「昭和(戦争)」というものが、まだ、終わっていないものであることを感じさせた。それは、おそらく終わらせるものではなくて、世代から世代へ伝えていかなければならないものと、思う。そのための言葉であり、写真であるだろうから。
それにしても、写真を観て、こんなに感動したのは、久しぶりだ。
写真って、運やね。今頃、わかったわ。(その運さえも引き寄せる力を持たなあかん、って、写真学校のゼミの先生はよく言ってた。)