電話のベルがまたなりました。
「バッグ受け取ったよ。でも送信カードが見つからないんだよ。
実は、これがないと契約先に送金ができなくて、今困っているんだ。
約束時間が迫っているんだ。
信用問題だからね。
傍にいる~君が、とても親切な人で、一部何とかしてくれるというんだけれど、それでは足りないんだ」
上述のオレオレ詐欺の言葉は、正確では全くありません。
実際はもっともっと、もっともらしく説明したのですが、覚えていません。
私は彼の頼み事が、その時点で、すぐ察しが付きました、
「お金を貸してということ?私すぐ引き出せる大金なんて持っていないわよ」
オレオレ詐欺は言いました。
「手元に10万くらいならある?」
「待ってね。調べるから」
「10万だったらあるわ。ATMは確か50万しか下ろせないでしょ。
でも、窓口に印鑑をもっていけばもっと引き出せるでしょうけれど」
私は、心の内では、数百万は立て替えてあげないといけないのかもしれない、と思ってしまいました。
「あとで電話する」と言って、その電話はまた切れました。
この記事にふさわしくない画像ですが。
心が魔法にかけられてしまったようだったので。
ハロウィーンの時のものです。
この時点でも、私の頭は、魔物のせいで完全に狂ってしまったまま。
長女のお婿さんは、資産家です。
お財布も手元に戻ってきているわけだから、自分の預金から、いくらでも工面できるはずなのに。
送信カードなどなくても、いくらでも対処法はあるはずです。
私はその異常性に、どうして気が付かなかったのでしょう。
昨日の記事でご紹介した、「心の正常性のバイアス」が影響したのでしょうか。
これは災害が発生した際などに観察される心理的現象のようです。
実際に異常な事態が起きているにもかかわらず、目の前の状況が普段と変わらないと認識してしまう、人の心の性質を言うそうです。
まさに、私の心はオレオレ詐欺の罠にはまり切り、そのような精神状態になってしまったようでした。
私はそんな計略に乗せられて愚かな対応をするわけがない、とそれまでは確信していたのに。
ところが私の心に、小さな変化が起きました。
神様の声、と言えばいいのかもしれません。
長女婿のHさんの携帯スマホに電話をかけてみようと思い立ちました。
盗まれた携帯に電話をかけても、おそらく繋がらないだろうな、と。
気持ち悪いなあ~、と思いながら。
この時点でさえ、相手がHさんであると、私は信じて疑いませんでした。
ところがすぐつながり、返事がありました。
その声は、いつもの男っぽいHさんの声。
私はその時初めて、これまでの電話は、オレオレ詐欺によるものだ、と気が付いたのです。
思わず、叫びそうな声を抑えるようにして、Hさんに簡単に事の経緯を説明しました。
「すぐ警察に知らせて」と忠告され、私は電話を切って慌てて警察署に報告。
私は、その巧妙な手口に呆れかえり、治まらない気持ちをその警察官に吐露しました。
前の記事でもお知らせしましたが、
警察官に言われました。
「相手はプロですからね。実に騙すのは上手ですよ。私たち警察官ですら騙されかねません」
私はその後、また相手からの電話を受けましたが、
「あなたは婿ではありませんね。本人と今話しました」
と言いました・
でもオレオレ詐欺は、悪びれた様子もなく、声のトーンも変えず、
「なに言っているだよ。お母さん」
と言い、電話が切れました。
その後は二度とかかってきませんでした。
オレオレ詐欺に自分は絶対騙されたりはしない、との確信と自負あったにもかかわらず・・・・・・・
いとも簡単に騙されそうになってしまった自分の心。
そのショックは計り知れないものがあり、その日は一日家事が手に付かず、茫然とした心境で日を送ってしまいました。
何故、疑おうとしなかったのか?
自分の心の認識の異常性が、本当にこわくなり、これも年のせいと思うと、自信をすっかり失ってしまいそうでした。
妹に、電話機をオレオレ詐欺の防御ができるものに変えるように、と強く勧められたので、そのうち変えるつもりでいます。
妹も、三回ほどオレオレ詐欺の電話を受けたことがあるようです。
電話を変えてからは、かかってこなくなったとか。
皆様も、オレオレ詐欺に限らず、心の正常性のバイアスには、ご注意ください。
年を重ねれば重ねるほど、このバイアスがきいて、私たちは自らを不利な状況に追い込んでいくやもしれず・・・・・・。
お互いに気を付けて暮らしてまいりましょう。
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ありがとうございました。
花のように泉のように