普通な生活 普通な人々

日々の何気ない出来事や、何気ない出会いなどを書いていきます。時には昔の原稿を掲載するなど、自分の宣伝もさせてもらいます。

名曲喫茶!

2011-11-08 22:46:47 | 東京「昔むかしの」百物語
 日本中どんな町にも、クラシック、ジャズのレコードを聴かせる「名曲喫茶」があった。
 渋谷の百軒店にあったジャズ喫茶「ありんこ」などにも思いは深い。1960年代の後半よく通った。アビー・リンカーンの「ウィ・インシスト」を馬鹿の一つ覚えのようにいつもリクエストしていた。
 「音楽喫茶」は、明らかに文化だった。音楽を聴くという文化の発露としての場「喫茶店」。そこで自分の居場所すら決めることができた。「その席はボクの席です」と、臆面もなく言えた。
 そこで音楽だけ聴いているようで、実は周囲の自分と同じような客と、微妙なコンタクトを取っていた。そして、別の場所で会って話をしたりもした。立派な社交場だった。そこで結ばれるカップルもいたりした。
 いま喫茶店は、ほとんどない。どこにもない。コーヒーを飲ませるのは大規模チェーン店だけ。だから店を切り盛りする人の姿形もまったく見えない。人がいない。だから、そこに文化などが生まれようはずもない。
 「音楽喫茶」という文化を失って久しい。とても安上がりでありながら緊密な人間関係を生み出した「音楽喫茶」。なによりも、良い音楽を聞かせてくれた。
 もう一度あのリアルな空間を取り戻したいと思ってしまう。