本書は被差別民でも「乞胸(ゴウムネ)」という職業に特化した書籍です。
「乞胸」というのは前に示したように、武士が武士階級から落剥して芸人に
成ったときの職業分です。と言うことは、「芸人」という身分はずいぶんに
下級であったことが解ります。
志ん生や志ん朝がマクラで「士農工商という身分がありまして、落語家なんていう
身分はなかったので、士農工商が通りを通っていた自分には芸人の行く道は
無かったので溝を這うほかしかなかった。」なんて言っていましたが、
それは「当たらずも遠からじ」というやつで、大道芸といって大通りで芸を披露して
いました。ですが、どこにでもある「縄張り」というやつで、それなりの届け出が必要
だったのです。「乞胸」身分であると、配下になって日々のたつきを稼がねば
ならず、時代が行くと配下から脱して、「歌舞伎役者」やさまざまな芸に
突出していくわけです。歌舞伎役者もそうですが、能・作庭など今で言えば
「人間国宝」に祀られる芸能の数々が配下から脱していったのです。
ここで私が言いたいのは、所詮人間の決めた「区別」という価値観は
陳腐なものに過ぎず、時代が行き過ぎれば、また重用されて浮き世といいましょうか
時代が決めた価値観によって浮きもすれば沈みもするという
至って軽薄なものなのです。いわんやあなた方が「自分は普通」という
一見現代社会では揺るがせない身分であっても時代が過ぎれば・・・
ということです。
今現在は、まさに身分という人間が決めた訳のわからないキメで
上下が決まっていますが数秒先、数分先には、「被差別身分」に陥っている
可能性は十二分にあります。くれぐれも背後、時代の隆盛にはお気をつけあれ。
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