「ひとはなぜ苦しむのでしょう・・・ほんとうは 野の花のように わたしたちはいきられるのです」
生命科学者・柳澤桂子さんが般若心経を訳された「生きて死ぬ智慧」(小学館)冒頭の言葉である。
モーツァルトのピアノや歌、そして室内楽などを聞くたびに、その野の花ような「無垢」というものを感じるのであるが、モーツァルトより少し先輩、ちょうどヘンデルやバッハと同時代を生きたイタリアのドメニコ・スカルラッティの短くも広大な野原に咲く花のように美しいソナタを聞くたびに、おいらはその苦しみや悲しみから解放されたような汚れのない世界を彷徨っていた。彼のソナタは「無垢」そのものだ。
でもなぜか、しばらく彼の音楽を聴いていなかった。だが最近NHKBSで放送されたドラマ「老害の人」最終回を観ていたら、どこからかスカルラッティのソナタが流れたような気がしたため、その音楽の記憶をもとに昔よく愛聴していた女流ピアニストのクララ・ハスキルがピアノで弾いたものをYoutubeで聴いて探した。(実はハスキルのスカルラッティはCDで所有していたはずで、捜せば見つけられるのだろうが、いまやYoutubeを検索したほうが早く、さまざまな録音盤を容易に聴くことができるのだ。)
全世界のハスキルファンがいくつものソナタ集アップしてくれていたので聴き始めたが、ドラマの録画を削除してしまったため記憶がどんどんうすれてしまっているのだが、あのとき流れていた作品はたぶん「ソナタハ長調k132」だったのではなかろうか、と確信した。
ドラマの音源がハスキルのものではないのだろうが、この作品に再会できてよかった。
この際、あらためてはハスキルのスカルラッティをじっくり聴いて、野の花々と語りあおう。
なお、現代の生物学者等は、植物たちは身を守るため仲間たちとコミニュケーションを取り合っていることが分かってきたと言っており、野の花がまったく憂いがないとは言えないのかも…
Classical Music /Reference Recording様のチャンネルより1950,51録音のレコード
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