温泉の大きな窓から見える空に、ぽっかりと白く見えた下弦の月。
写したいけど、温泉だからね(笑)。
青い空に真綿のような雲が薄く薄く広がっていて、その中で存在を雲と一緒にしておきたいかのように遠慮がちに、大きな窓の一角に見えた。
わたしは温泉の庭にあるベンチに行こうと思った。暑い空気から逃れて、ベンチに腰掛け、空を見上げる。そこに在るのは白い薄く伸びた雲と同化するようにして佇む下弦の月。
月の弧はハッキリとしているが、弦はおぼろげにあいまいな線を見せている。雲に溶けかけているとでも言おうか。そんな下弦の月がなんだかいとおしく見えた。肌が冷たく感じられるまで見入ってしまった。
日中にこんなにも月を見たことがあっただろうか。下弦の月よ。
今はどんよりした雲に覆われた空だ。
何も見えない。
それでも明るい時間の空にいた下弦の月の姿を思い起こすことはできる。
生来の姿は丸であっても、見る方向や季節によって姿形が変わって見えるという月の不思議さは、科学的な根拠云々よりも先に魔力というか、おかしがたい自然のすごさを感じる。
この月と共に地球が存在することへの畏怖。
わたしがここで月を見ることができることへの奇跡。
月の満ち欠けにわたしは期待する。
明日の自分はどうであるのかと。
月がもたらすものではないと分かっていても、見上げた空で何十億の昔からそこに燦然と佇んでいる姿があるということに何か意味があると、つい思ってしまうのだ。
下弦の月が雲に見え隠れする。
明日はわたしの前に出てくるだろうか。
暗い夜、孤独と共にあるのは月との語らい。
ひっそりと安らかに、ただ見つめるだけでわたしと月がいる、それだけで時間は色濃いものとなっていくように思える。
写したいけど、温泉だからね(笑)。
青い空に真綿のような雲が薄く薄く広がっていて、その中で存在を雲と一緒にしておきたいかのように遠慮がちに、大きな窓の一角に見えた。
わたしは温泉の庭にあるベンチに行こうと思った。暑い空気から逃れて、ベンチに腰掛け、空を見上げる。そこに在るのは白い薄く伸びた雲と同化するようにして佇む下弦の月。
月の弧はハッキリとしているが、弦はおぼろげにあいまいな線を見せている。雲に溶けかけているとでも言おうか。そんな下弦の月がなんだかいとおしく見えた。肌が冷たく感じられるまで見入ってしまった。
日中にこんなにも月を見たことがあっただろうか。下弦の月よ。
今はどんよりした雲に覆われた空だ。
何も見えない。
それでも明るい時間の空にいた下弦の月の姿を思い起こすことはできる。
生来の姿は丸であっても、見る方向や季節によって姿形が変わって見えるという月の不思議さは、科学的な根拠云々よりも先に魔力というか、おかしがたい自然のすごさを感じる。
この月と共に地球が存在することへの畏怖。
わたしがここで月を見ることができることへの奇跡。
月の満ち欠けにわたしは期待する。
明日の自分はどうであるのかと。
月がもたらすものではないと分かっていても、見上げた空で何十億の昔からそこに燦然と佇んでいる姿があるということに何か意味があると、つい思ってしまうのだ。
下弦の月が雲に見え隠れする。
明日はわたしの前に出てくるだろうか。
暗い夜、孤独と共にあるのは月との語らい。
ひっそりと安らかに、ただ見つめるだけでわたしと月がいる、それだけで時間は色濃いものとなっていくように思える。